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婚約破棄編
11 side リュカ
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「これは……酷いな」
調査書類に目を通して思わず言葉が漏れてしまった。その内容は侯爵子息の傲慢で横柄な態度と学園での評価。実技以外の成績は壊滅的で、この座学の成績で魔法が発動したのか不思議な程である。逆にルナ嬢は座学は学園で一・二を争う優秀さにも関わらず、実技だけは最低評価。その為ついたあだ名が“ポンコツ魔法使い”とは失礼極まりない。彼女には悪いが、幸い国をあげての建国記念の大舞踏会だった為、関係者は直ぐに見つかり人海戦術であっという間に証拠は揃った。そして……
「アラン、顔色が悪いぞ」
「陛下の御前に出るんだ当たり前だろう」
腹を擦りながら青ざめた顔をしている友人には悪いが、侯爵が認めなかった時は講師としての客観的な証言は必要だ。
陛下と侯爵夫婦が待つ部屋の前まで来ると見張りの兵士に取り次ぎを頼む。許可が降り入室すれば、無表情の陛下と青ざめた侯爵夫婦がテーブルを挟み向かい合わせに着席されていた。
「一番隊隊長、リュカ・フリューゲル、参考人、アラン・コスナー講師と共に参りました」
「ご苦労。先程の件の調査は?」
陛下に頼まれた調査書を側近に渡す。彼から受け取ると陛下は、直ぐに読み始め静かな室内に紙を捲る音だけが響く。書類読み終わった陛下は深いため息を吐き出すと、やっと侯爵夫婦に視線を向けた。
「フォーラス侯爵、貴殿は息子に教育を施さなかったのか?」
「いえ、家庭教師も付け確りとしております」
「そうか……では、学園の座学の成績や呪具とは知らず約十年間使用していた事は本人の資質の問題か?」
陛下の言葉を受けて侯爵夫婦は何も言えずに震えている。陛下主催の会で起きた婚約破棄騒動は、隣国の大使の目の前で起きた。ニールセン子爵兄妹が謝罪をしていなければ、事は国際問題に発展していた可能性も否定出来ない。二人の謝罪を受けて大使は彼らの労を労い笑って赦してくれたが、侯爵子息は何もしていない。当然ながら侯爵家の印象は悪い。
「大勢の前で婚約者以外の者を連れて大声で婚約破棄を叫ぶは、国を代表する貴族としての振る舞いか?侯爵家は反国の意思ありか?」
「め、滅相も御座いません!息子に!?」
陛下が侯爵の言葉を手で止めると、俺の後ろにいるアランへ視線を向けた。後ろからヒッとなんとも情けない小さな悲鳴が聞こえたが、聞こえないふりをして陛下のお言葉を待つ。
「では、学園の講師に話を聞こう。講師よ貴殿から見た子息の魔法の資質はいかほどか?」
「はい、申し上げます。座学の成績や魔力量を見ると初級程で御座います」
「初級か……だが子息は上級に成功している様だな」
「学園でも不正を疑われております」
アランの言葉を聞いて陛下は顎を触りながら頷いている姿に、侯爵夫婦の顔色は更に悪くなる。陛下がまた深いため息を吐くと、侯爵夫婦に視線を戻した。
「この話を聞いても侯爵は、まだ呪具と知らずに購入し二人に渡したと申すか?」
調査書類に目を通して思わず言葉が漏れてしまった。その内容は侯爵子息の傲慢で横柄な態度と学園での評価。実技以外の成績は壊滅的で、この座学の成績で魔法が発動したのか不思議な程である。逆にルナ嬢は座学は学園で一・二を争う優秀さにも関わらず、実技だけは最低評価。その為ついたあだ名が“ポンコツ魔法使い”とは失礼極まりない。彼女には悪いが、幸い国をあげての建国記念の大舞踏会だった為、関係者は直ぐに見つかり人海戦術であっという間に証拠は揃った。そして……
「アラン、顔色が悪いぞ」
「陛下の御前に出るんだ当たり前だろう」
腹を擦りながら青ざめた顔をしている友人には悪いが、侯爵が認めなかった時は講師としての客観的な証言は必要だ。
陛下と侯爵夫婦が待つ部屋の前まで来ると見張りの兵士に取り次ぎを頼む。許可が降り入室すれば、無表情の陛下と青ざめた侯爵夫婦がテーブルを挟み向かい合わせに着席されていた。
「一番隊隊長、リュカ・フリューゲル、参考人、アラン・コスナー講師と共に参りました」
「ご苦労。先程の件の調査は?」
陛下に頼まれた調査書を側近に渡す。彼から受け取ると陛下は、直ぐに読み始め静かな室内に紙を捲る音だけが響く。書類読み終わった陛下は深いため息を吐き出すと、やっと侯爵夫婦に視線を向けた。
「フォーラス侯爵、貴殿は息子に教育を施さなかったのか?」
「いえ、家庭教師も付け確りとしております」
「そうか……では、学園の座学の成績や呪具とは知らず約十年間使用していた事は本人の資質の問題か?」
陛下の言葉を受けて侯爵夫婦は何も言えずに震えている。陛下主催の会で起きた婚約破棄騒動は、隣国の大使の目の前で起きた。ニールセン子爵兄妹が謝罪をしていなければ、事は国際問題に発展していた可能性も否定出来ない。二人の謝罪を受けて大使は彼らの労を労い笑って赦してくれたが、侯爵子息は何もしていない。当然ながら侯爵家の印象は悪い。
「大勢の前で婚約者以外の者を連れて大声で婚約破棄を叫ぶは、国を代表する貴族としての振る舞いか?侯爵家は反国の意思ありか?」
「め、滅相も御座いません!息子に!?」
陛下が侯爵の言葉を手で止めると、俺の後ろにいるアランへ視線を向けた。後ろからヒッとなんとも情けない小さな悲鳴が聞こえたが、聞こえないふりをして陛下のお言葉を待つ。
「では、学園の講師に話を聞こう。講師よ貴殿から見た子息の魔法の資質はいかほどか?」
「はい、申し上げます。座学の成績や魔力量を見ると初級程で御座います」
「初級か……だが子息は上級に成功している様だな」
「学園でも不正を疑われております」
アランの言葉を聞いて陛下は顎を触りながら頷いている姿に、侯爵夫婦の顔色は更に悪くなる。陛下がまた深いため息を吐くと、侯爵夫婦に視線を戻した。
「この話を聞いても侯爵は、まだ呪具と知らずに購入し二人に渡したと申すか?」
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