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お城はパニック

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 突然目の前に現れた私達に、門番の兵士が腰を抜かして尻餅をついた。
 うん、そりゃね~いきなり7人も現れたら驚くよね。

「すみません。王族の方と魔法省の方にオリビアが番と来たって伝えて下さい」

「ははははいぃぃぃ」

 言葉にならない返事と共に、這うように中に入った兵士が叫びながら走って行く。大騒ぎになってしまって、少し申し訳ない気持ちになりながら待っていると、魔法省の師匠が先に転移してきた。

「オリビア!番が見付かったのか!」

 師匠が自分の事の様に喜びながら、ライオネルに挨拶をしている。数分遅れでリアムもやって来て、私達を見て首を傾げた。

「この4人は何?」

 リアムの質問は、ごもっともです。興奮している師匠は学校長に任せて、私とライオネルの二人で学校での出来事を簡単に説明した。

『異界からの転生者の事は、王にも我が説明しよう』

「ドラゴン様、お気遣いありがとうございます。私、第二王子のリアムが、ご案内致します」

 ライオネルに頭を下げると、先導して城の中に進む。気絶しているマリーナと拘束されている3人は、城の兵士が同行する事で許可が出て一緒に向かっている。
 歓談の間に案内された私達は、勧められた席につき既に集まっていた王族を交えて、学校での出来事を改めて話した。

『この娘、現実と遊戯の区別もつかず無意味に混乱を招いた為、異界の記憶と魅了は消した』

 全ての話を聞いた王様は、深いため息を吐くとライオネルにお礼を言った後、学校長や師匠が魅了について彼に対策が無いか尋ねている。王族の人が魅了に掛かると、国の根幹に関わるから防ぎたいって。それは魔石に精神防御魔法を付加する事で、常時発動して護れると教えて貰った。
 心配事が解決して、後は放置されていた4人。取りあえず家族からの意見も聞きたいから保留になった。

「この4人は、牢屋に入れておいてくれ。男達も騙されたとはいえ、処罰無しとはいかない」

 王様の言葉に同行していた兵士達は、短く返事をすると4人を連れて部屋の外へ出て行った。あー、一つ言い忘れてた事があったわ。

「学校長、さっきの男の人が教師を名乗ってましたけど違いますよね?」

「今、出て行った4人の一人がか?」

 私が頷くと、学校長は首を傾げた。やっぱり教師じゃないのね。

「あれは用務員じゃ。旧校舎の管理や庭の手入れの為に雇ったはずじゃが、違うと?」

 用務員をどうして教師と間違えていたのかしら?疑問をそのまま学校長に伝えると、眉間に皺を寄せた。人事部の書類ミスか本人が嘘をついて生徒を騙したか。どちらかの可能性が高いから、学校に戻り次第、調査する事になった。謎が解けてスッキリしたし、私は帰りたい。

『そろそろ我とオリビアは席を外して構わぬか?』

 ライオネルの一言で、私と彼は退出許可が出た。さぁて、帰りましょう!
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