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 昨日、そのまま寝てしまった兄妹を朝からお風呂に入ると着替えている間に朝食を準備する。パンにサラダにベーコンと目玉焼きをテーブルに並べ終わると、二人の身支度させて椅子に座った。

「さぁ、食べましょう」

「お姉ちゃんは、お風呂に入らないの?」

「ご飯を食べてから入るわ。昨日が遅かったから出勤時間がゆっくりなの」

 良かった~って言った妹がお祈りをすると、私と弟も続けてお祈りをしてから食事を始めた。

「夕べは遅くなってごめんね。テリー、適性検査の結果はどうだったの?」

「うーん、先生が魔力が多いって驚いてたよ。職種は魔法騎士とか言ってた」

「魔法騎士?なにそれ?」

 初めて聞く職業に私と妹が首を傾げると、弟は苦笑いしながら結果表を渡した。

「魔法を使う騎士で凄く人数が少ないって言ってた」

 弟の話を聞きながら結果表を見ると確かに希少職種と書いてある。同じ騎士なら団長さんが何か知ってるかしら?それともギルマスに直接、尋ねようかしら?

「先生達も初めて見たって言うし、学校に教えられる人がいないみたいなんだ」

「あら、それは困ったわね。ギルマスに聞いてみるわ」

 弟から詳しく聞いた私は、早めに出勤してギルマスに直接話を聞く事にした。二人を学校へ送り出し片付けると、自分もシャワーを浴びてサッと身支度する。結果表を手に出勤すると、治療院が騒がしかった。……朝から何事よ。ギルマスがいる。丁度よかっ……あら?団長さんの部下さんも居るわ。

「ルーシー、待ってたぞ」

「おはよう、ギルマス」

「悪いが昨日の奴らの事が聞きたい」

「それは構わないけど……」

 私の視線が部下さんにいくとギルマスが大きなため息を吐いた。ギルマスの顔に不本意って書いてあるわね~

「一昨日、騎士団の団長が入院した。お前が担当だな?」

「えぇ、私よ」

「単刀直入に聞く。団長と昨日の奴らの怪我は同じものか?」

 私が黙って頷くとギルマスの眉間に深い皺が入る。横で話を聞いていた部下さんも腕を組んで考え込んでいた。……うわ……嫌な予感……

「団長と話が出きるか?」

「大丈夫よ。病室に行きましょう」

 ギルマスと部下さんを連れて団長さんの病室に行くと、ベッドから降りて身体を動かす団長さんがいた。

「うん?おはようルーシー」

「怪我人は大人しく寝ていて欲しいわね」

「はい、はい」

 団長さんは軽い返事をしながらベッドに戻ると、入口にいる二人に気付いて私に視線を向けた。

「ギルマスが話を聞きたいそうよ」

「話を?」

 怪訝な表情をする団長さんの前に立ったギルマスは、苦虫を噛んだ様な酷い顔をしていた。さっきからギルマスの態度が変ね。

「久しぶりだな」

「こっちは会いたくなかったがな。一昨日の事が聞きたい」

「話せる範囲でなら」

 団長さんの言葉を聞いて黙って頷いたギルマスは、近くにあった椅子に座ると一枚の紙を取り出した。

「昨日、A級パーティーが全滅した。魔物の森に素材集めと調査に行っただけだった」

 ギルマスの話ではA級を持つ彼らはレア素材を探しに森に向かったらしい。調査もギルドが定期的にしている魔物の生息数調査で、彼らなら半日で終わるはずだった。

「帰りが遅いと受付から連絡が来たと同時に騎士団からパーティーを発見したと連絡が来た」

「あぁ、陛下がサージスを向かわせたんだったな」

 団長さんの言葉に合わせて部下さんが頷くと、ギルマスが私に視線を向けた。

「ルーシー、奴らの怪我と団長の怪我。何が同じだった」

「内臓破裂よ。全員、岩の直撃を受けたと思うわ」

「罠がまだあったのか?」

 団長さんの疑問に答えたのは部下さんだった。パーティーメンバーを治療院に運んだ後、徹底的に調べたけど罠は見付からずに終ったはずだった。

「今朝になって再び、罠が新たに現れました。石を投げて確認すると空間魔法で岩が突然飛び出してきました」

「団長のお前に聞きたいのは、森の近くに誰か居なかったかって事だ」

「……銀色の何かを見たんだが、それが人なのか魔物なのか思い出せない」

 銀色と聞いてゾクッと背中を冷たいものが走る。まさか、また彼が現れたの?

「ルーシー?」

 団長さんに名前を呼ばれてハッとした私は、手をヒラヒラと振って誤魔化した。彼の事を知っているのはごく少数だし言わない方が良いわね。

「ごめんなさい。昨日の疲れが残っているみたい。ボンヤリしていたわ」

「おい、何か落としたぞ」

 そう言ってギルマスが拾ってくれたのは弟の結果表だった。あ!丁度良いわ。今、聞いてみましょう。

「それテリーの適性検査の結果なんだけど魔法騎士って何か知ってる?」

「「はぁ?」」

 私の質問に団長さんとギルマスの声が重なった。二人共、顔を見合せ嫌そうな表情をしていたけど、団長さんが先に口を開いた。

「希少職種で今の騎士団には俺を含めて十人しか居ない」

「え?騎士団の中でもたったそれだけ?」

「テリーも魔力が高いのか?」

 私が黙って頷くとギルマスが大きなため息を吐いて話を切った。ギルマスが部下さんに視線を向けると彼は頷いただけで姿を消した。

「ルーシー達の事を誰にも言うなよ、マーク」

「どう言う事だ、メイソン」

「どうも、こうもルーシー達は貴族の落胤らくいんだ」

 静まり返った室内に時計の針の音だけが響いている。団長さんは何処か納得したような表情で頭を縦に振ると、ギルマスに言葉の続きを促した。

「正確には両親、父親が落胤でコイツらは孫になる。両親は亡くなったし証明する事は難しいだろう」
 
「成る程、陛下が気にしていたご両親の事故は裏があると」

「恐らくな。魔法騎士ともなれば目立つし参ったな」

 団長さんとギルマスの話を何処か他人事の様に聞いていた私は、弟の事が心配になって思わず立ち上がった。普通に立ったつもりだったけど、思ったより大きな音がして椅子が後ろに倒れる。倒れた椅子を眺めながら私の意識は途切れてしまった。


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