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偏頭痛

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狂気のアリアさんを前にして、偏頭痛が俺を襲う。

「うぐぅうううううううううううう!!!」

まただ。
また、あの激痛が俺を襲った。
この痛みはなんだ。
俺は何を忘れてるんだ?

『主、逃げてください! ここは危険です!』
「逃げない! 俺は逃げない!」

俺の脳裏に、ある光景が浮かぶ。
血だらけの俺。
そして、俺を見下ろして目の前で笑っている女性。

「あれは……俺?」
『主! 主の心が壊れます!』
「なんだろう……頭がおかしくなりそうだ……」
『主! これ以上、頭がおかしくなったら大変です! それだけは避けてください!』

---

「あ、あれ……?」
「どうしたんですか? 頭を抑えて苦しんで、そんな状態の人に剣を向けるほど、私は腐っていません!」

さっき目の前にいた女性……見覚えがあるような気がした。
誰だっけ……。

「どうしたのですか? 私の名前はアリア……」

今、目の前にいるのは聖騎士のアリアさんか。

「いえ、なんでもありません」
「変な人ね……」

あなたにだけは言われたくない。
なんだろう、今の夢……。
俺は記憶を失っているのだろうか?

『主、思い出さないでください! 主の記憶は消されてなんかいません! 私は主を守るために存在しています! 主、お願いします! 主!! 主!!!』

うるさい! 少し黙ってくれ! 今は考え事をしているんだ!

『主! 主! 主! 主! 主! 主! 主! 主!主! 主!』
「うるせーよ!!」

俺は頭の中で響く声に耐えられず叫んだ。

「あああああぁっ!! グリムうるせえええぇっ!!」
「本当にどうかしてるわよ!」
「お前にだけは……言われたくねぇ!!」

俺はアリアさんに向かって行った。

「きゃあああっ!!」

アリアさんが俺のパンチでフッ飛んだ!

「目が、目が覚めました……」
「え?」
「あなたの怒り、受け止めました」
「はぁ……」
「魔剣を壊します!」
「【破壊】スキル!!」
「きゃあああああっ!?」

俺は黒い斬撃でアリアさんを真横にフッ飛ばした。
酒場から離れてくれ。
遠くにフッ飛んだアリアさん。
今度こそ、今度こそ……やったぞ!

『主……聖騎士は厄介です。聖騎士から離れましょう』
「ああ……聖騎士と話していると頭が痛くなる」

グリムが再起動してしまった。
もうシャットダウンする気はないのだろう……。
お、俺の魔力が吸い取られる!
焦りながら酒場に入った。
中を進むと、店員が近づいてきた。

「いらっしゃい」
「えっと、いま酒場に魔法使いはいますか?」
「魔法使い? あんた、アリアの仲間じゃないのか?」
「違います違います絶対に違います」
「そうなのか? ……まあいいや。そこのカウンターに座っている女の子さ」
「へぇ……」
「酒は頼んでくださいよ」
「へいへい」

俺はカウンターに座っている金髪の女性を見た。

「あの子が魔法を使えるんですか?」
「そうなんだよ。この前、冒険者のパーティがゴブリンに襲われていてね。その時に聖騎士がゴブリンを倒したんだけど、その聖騎士に挑んで魔法で倒しちまったのが彼女なんだ。なんで聖騎士を倒したのかはよく分からねぇが、あまりにも魔法が派手で、しかも美人だから人気が出ているのさ。今ではこの店のエースだよ」
「そうなんですね……」

酒場のエースってどういうことだよ。
冒険者ギルドならわかるけど。
俺はそんな彼女の隣に座った。

「こんにちは。俺はハヤトっていうんだ。君は?」
「私はミレイ。よろしく」

彼女は20代中盤ぐらいで大人びた美人だった。
綺麗な顔立ちをしている。
スタイルもいいし、腰まである長い黒髪がよく似合っている。
身長も高くモデル体型だ。
黒いロングドレスを着ている。

「ミレイさん……じつは頼みがあります」
「頼み?」
「この魔剣を直して欲しいんです」
「魔剣? あなた、魔剣騎士なの?」
「そうなんですよ!」
「へぇ……さっき入り口で聖騎士を倒していたわね?」
「あ、見てました? そうなんですよ……。ちょっと騙されそうになっちゃって……」
「気が合うわね。私も聖騎士が大嫌いなのよ」
「ああ! そうなんですね! はははっ」
「じゃあ、その魔剣を貸して……」
「あ、了解です」

俺はグリムを渡そうとした。

『ぶるぶる……』
「グ、グリム……!?」

ぶるぶる……だって!?
怯えて震えているのかい、グリムよ!!
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