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第一章 出会いからもう一度
キールと学術祭2
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「あら、ユアン・ハーリング様に、キール・チェスター様ではありませんか」
奇遇ですわね。と中にいた令嬢ローズマリー・フローレスが微笑む。
「フローレス嬢とメアリーさん、なぜここに」
「ユアン様こそどうして?」
驚きと同時に、メアリーに会えたうれしさで、声が一オクターブ高くなる。しかしそんなユアンの飛び上がりたいうれしさに、水を差すような冷たい声音が響いた。
「『ユアン様』『メアリーさん』ですって」
「えっ?」
わけがわからないが、その場にいたみんなが思わすローズマリーを見る。
「ひどいですわ、ベーカー様、私たちもうお友達だと思っていましたのに、私もベーカー様のこと『メアリーさん』いや『メアリー』とお呼びしたいですわ」
(──そこか?!)
「どうか私のことも気安く『マリー』とお呼びください」
「ありがとうございます。マリー様、あっ、マリー」
「敬語も結構ですわ、メアリー」
「ありがとう、マリー」
なぜか勝ち誇ったようにユアンをちらりと見ると、ローズマリーはフフンと鼻を鳴らした。
(別に羨ましくないぞ、本当に羨ましくなんかないからな)
心の中でそんな言い訳をする。
「ハーリング様とチェスター様もこの際、私たちのことをそう呼んでもかまいませんわよ」
だからなぜいつも彼女はそんなに上から目線なんだ。最近は、気をつけるようになっていると言う話をこの間メアリーから聞いたばかりなのに。
ユアンは困ったように笑ったが、キールは「わかった、マリー、メアリー」とあっさり受け入れると、まだ入り口で立ち止まったままのユアンの脇から部屋の中に入っていった。
(さすがキール、なにげに、メアリーまでいきなり呼び捨てにしている)
最近ようやくメアリーさんになったユアンは今度こそ、本当の敗北感に襲われた。
「じゃあ、僕も──」
「お待ちなさい。やはり今のは無しですわ。やはり”さん”とつけてください」
ユアンも気をとり直し、まあこれで自分も気兼ねなくメアリーと呼べると口を開きかけた瞬間、いきなりローズマリーが待ったをかけた。
「えっ?」
ローズマリーを見る。その顔はなぜだか瞳と同じぐらい真っ赤になっていた。
(あぁ、いざ呼ばれてみたら恥ずかしかったんだな)
なぜだかお父さんの気持ちになって、暖かい目を向ける。
「チェスター様と、えっと……お友達の方、いらっしゃい」
声をかけるタイミングを見失っていたアンリがようやく小屋の奥から挨拶をする。
アンリに名前を呼ばれたキールが、主人に呼ばれた犬のようにパッと顔を輝かす、でも次の瞬間にはプイっと顔をそらしながら早口で
「先輩なんですから、キールでいいですよ」
と、まるで突っぱねるような口調で言った。
(なんなんだ。このむずがゆくなるような空間は)
そんな幼馴染の今まで見たことない反応に、思わずユアンがどぎまぎとしてしまった。
奇遇ですわね。と中にいた令嬢ローズマリー・フローレスが微笑む。
「フローレス嬢とメアリーさん、なぜここに」
「ユアン様こそどうして?」
驚きと同時に、メアリーに会えたうれしさで、声が一オクターブ高くなる。しかしそんなユアンの飛び上がりたいうれしさに、水を差すような冷たい声音が響いた。
「『ユアン様』『メアリーさん』ですって」
「えっ?」
わけがわからないが、その場にいたみんなが思わすローズマリーを見る。
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(──そこか?!)
「どうか私のことも気安く『マリー』とお呼びください」
「ありがとうございます。マリー様、あっ、マリー」
「敬語も結構ですわ、メアリー」
「ありがとう、マリー」
なぜか勝ち誇ったようにユアンをちらりと見ると、ローズマリーはフフンと鼻を鳴らした。
(別に羨ましくないぞ、本当に羨ましくなんかないからな)
心の中でそんな言い訳をする。
「ハーリング様とチェスター様もこの際、私たちのことをそう呼んでもかまいませんわよ」
だからなぜいつも彼女はそんなに上から目線なんだ。最近は、気をつけるようになっていると言う話をこの間メアリーから聞いたばかりなのに。
ユアンは困ったように笑ったが、キールは「わかった、マリー、メアリー」とあっさり受け入れると、まだ入り口で立ち止まったままのユアンの脇から部屋の中に入っていった。
(さすがキール、なにげに、メアリーまでいきなり呼び捨てにしている)
最近ようやくメアリーさんになったユアンは今度こそ、本当の敗北感に襲われた。
「じゃあ、僕も──」
「お待ちなさい。やはり今のは無しですわ。やはり”さん”とつけてください」
ユアンも気をとり直し、まあこれで自分も気兼ねなくメアリーと呼べると口を開きかけた瞬間、いきなりローズマリーが待ったをかけた。
「えっ?」
ローズマリーを見る。その顔はなぜだか瞳と同じぐらい真っ赤になっていた。
(あぁ、いざ呼ばれてみたら恥ずかしかったんだな)
なぜだかお父さんの気持ちになって、暖かい目を向ける。
「チェスター様と、えっと……お友達の方、いらっしゃい」
声をかけるタイミングを見失っていたアンリがようやく小屋の奥から挨拶をする。
アンリに名前を呼ばれたキールが、主人に呼ばれた犬のようにパッと顔を輝かす、でも次の瞬間にはプイっと顔をそらしながら早口で
「先輩なんですから、キールでいいですよ」
と、まるで突っぱねるような口調で言った。
(なんなんだ。このむずがゆくなるような空間は)
そんな幼馴染の今まで見たことない反応に、思わずユアンがどぎまぎとしてしまった。
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