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第四章 誓いをもう一度

最後の魔具研

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「あぁ、見事なほど全部持っていきやがったな、あの教授たち」

 部室を見たアスタが一言もらす。

「アスタ先輩」

 クリスとルナが泣きそうな目でアスタを見上げている。
 教授たちが持って行った資料の中には魔法石が一般の人にも使えることなどが書かれた資料も入っているはずである。
 もしそんなものをあの魔力無しを下に見ているような教授に読まれてたりしたら……

 しかし二人の心配とは裏腹に先輩たちは妙に落ち着いている。

「ルナごめん」

 ルナの頭に手を置きながらユアンが謝った。

「心配しなくて大丈夫なんだ」
「お兄様?」

 ルナがキョトンと兄の顔を見上げる。

「教授が持って行った研究材料は、昨年の論文とこの間の魔法使い同士の魔力についてだけで、一般人が使える魔法石についての研究資料は入ってないんだ」
「えっ」

 クリスもユアンを見上げる。

「たぶんこうなるだろうと、先輩たちが言うから事前に実験レポートはうちに一時避難させてたんだよ」

 黙っていてすまないというように手を合わせる。

「先輩たちは知っていたんですか?」

 メアリーとローズマリーも、ごめんなさいねと言うような表情を二人に向ける。

「ならどうして」

 ルナがプクッとその頬を膨らます。

「本当に動揺しているものがいる方が教授たちをだましやすいだろ」

 アスタはそういうと、ふくれっ面のルナの頭にポンと手を置いた。

「はぁ。そういうことですか」

 クリスは納得いったというようにため息を付く。

「でも、これから研究はどうするのですか?」
「それも大丈夫ですわ」

 ローズマリーが得意げに胸を張る。

「新しい研究ラボを街に一つ作ってますの。そこでこれからは学園に隠れて思う存分研究できますわ」
「渡してしまった資料からもよく考えれば魔法石を使えるのが魔法使いだけでないとはすぐにわかるだろうが、それについて奴らが自ら研究したりはしないだろう、寧ろ気が付かない振りをするに決まっている」
「だから私たちもあえてそこは触れずに、研究の手伝いをする振りをしながら、ユアン様には引き続き魔法石の研究をしてもらうつもりですわ」
「実験は私とユアンがいればできるし、ちょうど今年で卒業だから来年からは私たちは街で隠れて研究をするつもりなの」

 メアリーとユアンが見詰めあうと頷く。

「あなた達二年生には悪いけど、この部活は今年で終わらすつもりよ。ただ来年からは二人が良かったら、一緒に街のラボで研究を手伝って欲しいのだけど」

 メアリーの提案にルナが首を縦に振る。クリスも笑顔で頷く。

「でも、アスタ先輩とマリーお姉さまは?」
「僕たちはいちおう教授たちと合同って形で研究をする予定だ。いきなりみんなが離れたら怪しまれるしな、まぁおりを見て、抜け出すつもりでいるが」

 アスタがニヤリと悪そうに笑う。

「どちらにしろ教授も僕とマリー嬢だけを引き入れたいみたいだし、すまないが今年で魔法道具研究倶楽部は廃部だ」

 名残惜しそうに部室を見る。

「せっかく綺麗にしましたのに」

 ローズマリーも残念そうにぐるりと顔を巡らす。

「本当に色々ありましたね」

 メアリーがユアンにそう微笑みかける。

「本当に」

 様々な思い出が蘇る。

「でも、研究はまだ終わったわけじゃない、これからはより慎重に、教授たちに見つからないよに進めなくちゃ」
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