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第二章 青春をもう一度
救出作戦
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「明かりがついてる」
昨日最後に鍵を閉めたのはアンリだった。しっかり者のアンリが電気を消し忘れるなんてミスはしないだろう。そしていま魔具研のメンバーはユアンとメアリー以外はダンスパーティー会場に閉じ込められている状態だ。
隠密から渡されていた認識阻害魔法が込められた魔法石を握りしめながら、そっと窓から中を覗きこむ。
心臓がドクンと大きく波打った。
もう見慣れた部屋の中には見知らぬ男子生徒が三人。そして奥のソファーにメアリーがぐったりと横たわっているのが見えた。
カッと頭に血が上る。このまま怒鳴り込みたい気持ちをぐっと抑えて渡されていた連絡用の魔法石を割る。
これでしばらく待てばレイモンドの隠密部隊が来てくれるはずだ。
「何もしないで待っていてください。だと……」
ぐっと砕けた石の破片が手に食い込むのも気にせず、じわりと血がにじむまで握りしめる。
「今度こそ守ると誓ったのに」
どこか暗い陰りを帯びた若草色の瞳。ぎこちない笑顔。
前回の人生でユアンが最後に見た彼女の姿が、ぐったりと横たわる目の前のメアリーと重なる。
(君を一人残して行くべきじゃなかった)
(君が苦しい時に僕はいつもそばにいてあげられない)
あの時の後悔が胸を締め付ける。
ユアンは念のために渡されていた袋を開いた。
(今自分が助けなくて、いったいいつ自分はメアリーを助けることができるんだ!)
ユアンが琥珀色の魔法石を取り出すと心の中でそれを唱える。
『土魔法”新お兄様”!』
部室の壁の下。ボコりとした握りこぶし大の大きさの土人形の顔だけがのぞく。
『”腕立て伏せ”』
ユアンが命令を下すと、壁の下で寝そべった状態だった土人形たちが背中に小屋を乗せたまま高速で腕立て伏せを始めた。
ガタガタガタガタ。
「地震だ!?」
突然揺れに中にいた男たちが慌てる。揺れはすぐにおさまったがその時小屋の扉が開いた。
「誰だ!」
一人の男が開いている扉から外に飛び出して周りを警戒する。
「誰もいません」
「これだからおんぼろ小屋は困る」
(地震だと思ってみんなが飛び出してくれたらラッキーだったがそうはうまくいかないか)
だが地震の揺れで勝手に開いただけだと思われている扉から、認識阻害魔法で姿を消しているユアンは小屋の中に忍び込むことに成功していた。
(さてどうしたものか?)
入ったはいいがその後のことは特に考えていなかった。少しでもメアリーの近くに行きたかった。手の届くところにいけばいざというとき体を張ってでも守れる気がしたのだ。
認識阻害魔法の魔法石はまだ一つある、連絡に気が付いた隠密が来たらこれを使ってすぐにメアリーを保護しよう。
そんなことを考えていると
「しかし、こんなんで王子たちは俺たちの要求聞くのか?」
「さぁな、まあ聞いたらラッキー、聞かなかったらこの女を会場に連れていって二人に見捨てられたことを話させればいいのさ」
「なんてったって、こっちには闇魔法”悪魔のささやき”の魔法師様が付いているんだ」
(やはり闇魔法の使い手が裏についていたのか)
ユアンが唇を噛みしめる。
「でもまさか聖魔法の使い手が公爵令嬢の部下にいるとは予想外だった。こいつさえいなければあの傲慢な公爵令嬢なんてちょっと生徒たちの反発心をくすぐれば勝手に自滅するはずだったのに」
忌々し気にメアリーを見下す。
昨日最後に鍵を閉めたのはアンリだった。しっかり者のアンリが電気を消し忘れるなんてミスはしないだろう。そしていま魔具研のメンバーはユアンとメアリー以外はダンスパーティー会場に閉じ込められている状態だ。
隠密から渡されていた認識阻害魔法が込められた魔法石を握りしめながら、そっと窓から中を覗きこむ。
心臓がドクンと大きく波打った。
もう見慣れた部屋の中には見知らぬ男子生徒が三人。そして奥のソファーにメアリーがぐったりと横たわっているのが見えた。
カッと頭に血が上る。このまま怒鳴り込みたい気持ちをぐっと抑えて渡されていた連絡用の魔法石を割る。
これでしばらく待てばレイモンドの隠密部隊が来てくれるはずだ。
「何もしないで待っていてください。だと……」
ぐっと砕けた石の破片が手に食い込むのも気にせず、じわりと血がにじむまで握りしめる。
「今度こそ守ると誓ったのに」
どこか暗い陰りを帯びた若草色の瞳。ぎこちない笑顔。
前回の人生でユアンが最後に見た彼女の姿が、ぐったりと横たわる目の前のメアリーと重なる。
(君を一人残して行くべきじゃなかった)
(君が苦しい時に僕はいつもそばにいてあげられない)
あの時の後悔が胸を締め付ける。
ユアンは念のために渡されていた袋を開いた。
(今自分が助けなくて、いったいいつ自分はメアリーを助けることができるんだ!)
ユアンが琥珀色の魔法石を取り出すと心の中でそれを唱える。
『土魔法”新お兄様”!』
部室の壁の下。ボコりとした握りこぶし大の大きさの土人形の顔だけがのぞく。
『”腕立て伏せ”』
ユアンが命令を下すと、壁の下で寝そべった状態だった土人形たちが背中に小屋を乗せたまま高速で腕立て伏せを始めた。
ガタガタガタガタ。
「地震だ!?」
突然揺れに中にいた男たちが慌てる。揺れはすぐにおさまったがその時小屋の扉が開いた。
「誰だ!」
一人の男が開いている扉から外に飛び出して周りを警戒する。
「誰もいません」
「これだからおんぼろ小屋は困る」
(地震だと思ってみんなが飛び出してくれたらラッキーだったがそうはうまくいかないか)
だが地震の揺れで勝手に開いただけだと思われている扉から、認識阻害魔法で姿を消しているユアンは小屋の中に忍び込むことに成功していた。
(さてどうしたものか?)
入ったはいいがその後のことは特に考えていなかった。少しでもメアリーの近くに行きたかった。手の届くところにいけばいざというとき体を張ってでも守れる気がしたのだ。
認識阻害魔法の魔法石はまだ一つある、連絡に気が付いた隠密が来たらこれを使ってすぐにメアリーを保護しよう。
そんなことを考えていると
「しかし、こんなんで王子たちは俺たちの要求聞くのか?」
「さぁな、まあ聞いたらラッキー、聞かなかったらこの女を会場に連れていって二人に見捨てられたことを話させればいいのさ」
「なんてったって、こっちには闇魔法”悪魔のささやき”の魔法師様が付いているんだ」
(やはり闇魔法の使い手が裏についていたのか)
ユアンが唇を噛みしめる。
「でもまさか聖魔法の使い手が公爵令嬢の部下にいるとは予想外だった。こいつさえいなければあの傲慢な公爵令嬢なんてちょっと生徒たちの反発心をくすぐれば勝手に自滅するはずだったのに」
忌々し気にメアリーを見下す。
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