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1 え、側室ですか?
しおりを挟む「ガーネット・フランクリン子爵令嬢を側室に召し上げた。そなたには知っておいてもらいたい」
そう婚約者であるエーリク王太子殿下に宣言されたとき、リリアの息が止まった。
殿下は何でも無いことを告げるかのように淡々と話している。まるで知らない人のように見えた。
父であるカーテノイド公爵は、あまりの衝撃にあいた口が塞がらない状態だ。
「殿下、それはどういう…」
「今言った通りだ。ガーネットは王城での生活に慣れていないであろう。そなたが気にかける必要も無いが、困っているようなら手を貸してやってほしい」
「は…」
「今後の予定については追って知らせる。今話せるのはこれだけだ」
そう言って立ち去ろうとする殿下に、呆然としていたお父様が立ち上がった。顔が真っ赤でやけどでもしたかのような色だ。
「お待ちください!私や娘は何も聞かされていませんぞ!いきなり側室などと…婚約者のある御身が軽々しくお決めになってよいことではありません!」
殿下はいつも通りの絶対零度の表情で興奮するお父様を射貫いた。
「あなたが決めることでもない、公爵。それにリリアとの婚約は今まで通り維持される。婚約者を変えようというわけではないから安心してほしい」
「しかし…このように勝手に…」
「これ以上話すことはない。婚約破棄はしないからそのつもりで無駄なことはしないように」
そう言うと、殿下は来たときと同じ無表情な碧眼で私を見据え、やはり無表情に立ち去った。次の瞬間、私の視界は暗転した。
「リリー!」
お父様が叫ぶ声が聞こえる。
リリア16歳、王太子殿下19歳のことだった。
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