王子×悪戯戯曲

第26幕 ｉの意味

19

　俺の顔の横に片手を置くとジッと視線を合わせながら、もう片方の手のひらが腹を撫で下着の中に消えていく。
　下着と手の隙間から空気が入り、昂ぶった陰茎はわずかな刺激だけでしっとりと蜜を溢れさせていた。
　クチュッ……と下着の中で濡れた音が響いている。蜜を指先に纏わせながら、ツーッと戸渡を下っていく。

「んッ──」
「お尻のほうまで垂れているよ？」

　襞を探る指先がヌルつく蜜を隔て彷徨っている。悠斗の体温にほんのり温められた蜜が、甘く蕾を綻ばせていく。

「瀬菜のエッチなお汁で柔らかい。ほら、もう簡単に入った」

　スルリと悠斗の長い指が侵入する。一本ぐらいならあまり違和感を感じない。
　けれどすぐに二本目が潜り込み、バラバラと動かされれば俺も黙ってなどいられなくなる。

「──ッ……はっ……」
「ふふっ、今の表情……凄くいいね」
「なんのッ実況してッ」
「瀬菜の一瞬を焼きつけてるの……あっ、ほらここ擦ると表情筋が弛緩して色気が増すんだよ」
「ふぁっンッ、はっあっ、あっ……」

　立てた膝がガクガクと震え、グィッと腰を突き出し弾んでしまう。悠斗は俺の弱い部分に指を這わせ、コリコリと前立腺を押し上げた。

「うん、やっぱりいい顔だね」
「あああっやっそこッ、はぅぅ～ッ！」
「ヤバ……俺まで逝っちゃいそう」
「ばっ、ばかぁッ！　へんったぃっ」
「クスッ、可愛い……モデルさんの表情を作るのも、カメラマンの腕の見せどころでしょ？　まぁ、瀬菜に対しては終始変態だけどね♡」

　なにごっこだよ！　と突っ込みたいが、そんな余裕は俺にはない。
　悠斗の指にたっぷり翻弄され、ぐしょっり濡れた下着を脱がされる頃には、快感で頭の中はふにゃふにゃに蕩けていた。
　悠斗が下着を脱ぐ姿を、物欲しそうに見つめてしまう。陰茎にローションを垂らし、数度擦り上げる姿はエロティックで、無意識に唇を舐め取ってしまう。

　早く欲しい……。
　けど、舐めたら美味しそう……。

　お尻をモゾモゾさせ、パクリと折り曲げた指の節を口に含み熱い眼差しを向けていた。

「その色気、反則だね」
「──ッるさい」
「身体は欲してるのに、瀬菜のお口は素直じゃないんだから」
「なら、素直になるようにしたらいいだろ」
「ふふっ、なんで喧嘩腰なの。可愛くないけど可愛いね。欲しいときはどう言えばいいんだっけ？」

　先端を蕾に押し付けグリグリと腰を揺する悠斗に、腹立たしさを覚えながら身体は欲していた。噤んだ口をへの字にしながら震える俺に、悠斗は言うまでくれない様子だ。

「……別に……いいもん」
「あっ……拗ねた」

　クスクス笑い亀頭をゆっくり挿入する悠斗に、粘り勝ちだと思うと意地悪にちゅぽんっと抜け出てしまう。そういえばコイツはしつこい男だった……。
　存分に焦らされ、白旗を上げたのはもちろん俺だ。そのあたりは相変わらず学習能力が欠けたままである。

「──もうッ！　早くちょうだいよぉ～～！」
「ん？　なにを？」
「うぅ……意地悪だ……」
「そんなことないよ？　このお口はなんのためにあるのかな？」

　ぷにぷにと唇を突く悠斗。最近の俺は一味違う。
　パシッ！　と悠斗の手を払い除けると、驚く悠斗を押し倒してやった。