王子×悪戯戯曲

そら汰★

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第26幕 iの意味

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 みんなの姿を眺めていると、悠斗が隣に佇み穏やかに笑っていた。おじいさんとの会話を思い出す。

 ずっと……ずっと……悠斗は……。
 ひとりで戦っていたのか……。

 今のこの穏やかな笑顔の先に、いったいどんな苦労や葛藤があったのだろうか。胸の辺りに手を置きギュッとシャツを握りしめる。
 指先が触れそっと手を繋がれ横に視線を移すと、悠斗が俺をジッと見つめていた。いつから見ていたのだろうか。目を広げ驚くと視線をみんなのほうへと向け、乾いた笑いでごまかした。

「瀬菜、楽しい?」
「えっ、う、うん、凄く楽しいよ」
「全員集まったら、もっと賑やかになるね」
「そっ……そう……だな……」
「瀬菜?」
「えっ? なに?」
「瀬菜、こっち見て?」
「うっ、──あぁ~ほら、誰か来たみたい! 俺が出るな!」

 インターフォンの音に、握られた手を不自然に自分に引き寄せると、パタパタと駆け出し悠斗の元を離れた。
 太鼓を叩くような心臓の音が耳に振動する。

 ヤバイ!
 俺、かなりヤバイ‼︎
 悠斗の顔、まともに見られない‼︎

 全身真っ赤に染めながら玄関の外へと出ると、深く深呼吸を繰り返し火照る身体を鎮めたのだった。





 全員が集まりホームパーティーが始まった。
 迷惑掛けました会ではあったが、引っ越し祝いを兼ねて、それぞれお酒やお菓子を持参してくれた。おかげで途中で買い出しに行く必要はなさそうだ。料理も好評で、まだまだ食べ盛りなみんなはあっという間にお皿を空けていった。

「はぁ~……美味かった……王子も佐伯さんも、プロ並み~」
「一気に食ったな」
「イケメンで料理もできて? 欠点ないのかよ」
「ユウの欠点なんてヤナ以外にあるかよ」
「確かに~姫乃ちゃんには弱いよね~。ちょっと弄ると余裕なくすよね、昔っから♪」
「でも、それ逆効果ってやつじゃん。悠斗さん怒らせる訳だし」
「そうだね。悠斗君、キレると怖いよね。悠斗君が小さい頃、瀬菜君と話てるだけで目の仇にされたっけ。まぁ、そんなところも可愛かったけど!」
「普段温厚だからね。今回のことでもそりゃもう……」
「ちょっとみんなストップ! 佐伯さんまで止してくださいよ……」

 お腹を満たしたみんなはお酒を飲みながら、酒の肴に悠斗の欠点を探しているらしい。ユウにご飯を用意し、輪の中にそっと紛れると、みんなの視線が俺に集中した。

「えっ? なに? 俺に振るなよ。……色々その……しつこいっていうか、諦めが悪いっていうかさ」
「瀬菜はなにに対して言ってるのかな? 俺にはいい意味にしか聞こえないけど」
「……おめでたいヤツだな」
「まっ、結局、瀬菜の惚気だろ?」
「あー久々♪ この光景はやっぱり最高だぁね~」

 欠点らしい欠点を探せなかった玉夫は悔しそうにし、多澤はいつもの調子で俺をからかう。村上はそんなやり取りを微笑ましく眺めていた。
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