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第26幕 iの意味
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ユウは俺にとって今では大切な家族だ。
最初は生き物を無責任にプレゼントするなんて……とも思っていた。
けれど救われたのは事実で、生きて行く責任を与えてもらえたような気がする。
「ひとつ聞いていいかな? 名前をユウとつけたのは、やはり君も悠斗に似てると思ったから?」
「えっ? ……おじいさんが名付けたんじゃ?」
「私ではないよ?」
「それ、瀬菜のおばさんにも聞いたけど、違うって言っていたよ」
「それじゃ……なんで?」
三人で首を傾げてしまうが、ユウに答えを求めたところで答えてくれるはずはない。マイペースに大きな欠伸をし寝てしまう始末。結局予想ははずれ謎は解けずに終わってしまった。
「……さて、私はそろそろ行くよ」
「では車を用意してきますのでお待ちください」
おじいさんの声に、佐伯さんがそう言い扉を開けようとすると呼び止められる。
「いや、お前たちは残りなさい」
「ですが……」
「佐伯、そこは素直に受け取るものだよ。それに報告もまだだろ? なんのために一緒に来たと思っている。祐一とお前は、今から一週間休暇扱いにしておく。ここのところ働き詰めだ。いいね?」
「……承知しました」
「でも、お爺様? 歩いて帰られるんですか?」
「ふふっ、まさか……そろそろだろ?」
ピンポーン……ピンポーン……と、軽快な音が鳴る。
腕時計を確認するおじいさんに合わせて、インターフォンが鳴ったのだ。悠斗が対応すると『来たよ~♪』と実千流の声が聞こえてきた。
実千流と環樹先輩は、理事長の車で来たのだろう。おじいさんを玄関まで見送ると「また日を改めてゆっくり食事でも」と言ってくれた。
入れ替わりで実千流と環樹先輩が訪れ、リビングは一気に盛り上がりをみせた。
調理の途中だったこともあり、悠斗がキッチンで続きを再開すると、佐伯さんと環樹先輩も手伝うと助っ人を申し出てくれた。三人に任せておけば味の保証は間違いなしだ。
「いや~できる旦那だと助かるね♪」
「俺たちダメーズだな」
「ははは……まぁ、僕たちが手伝っても足手まといなだけだから」
「それより、祐一さん。俺びっくりしたよ」
「あー……ごめんね? お爺様はいつもああなんだ。でもね、どういう訳かとても柔らかくなったよ。きっと瀬菜君と悠斗君に当てられたのかな?」
「それ、うちの爺様も言っていたよ! 優宇貴が機嫌がよくて嬉しいって♪ おかげで俺たちも爺様から、最近はガミガミ言われなくなった」
きっと根は優しい人なのだ。制約の中でどうしても譲れないものが、厳しく怖い人という印象を与えていたのかもしれない。
「瀬菜君……ありがとう」
「……祐一さん?」
なぜか祐一さんは俺に深く頭を下げながら、お礼の言葉を口にしてきた。
最初は生き物を無責任にプレゼントするなんて……とも思っていた。
けれど救われたのは事実で、生きて行く責任を与えてもらえたような気がする。
「ひとつ聞いていいかな? 名前をユウとつけたのは、やはり君も悠斗に似てると思ったから?」
「えっ? ……おじいさんが名付けたんじゃ?」
「私ではないよ?」
「それ、瀬菜のおばさんにも聞いたけど、違うって言っていたよ」
「それじゃ……なんで?」
三人で首を傾げてしまうが、ユウに答えを求めたところで答えてくれるはずはない。マイペースに大きな欠伸をし寝てしまう始末。結局予想ははずれ謎は解けずに終わってしまった。
「……さて、私はそろそろ行くよ」
「では車を用意してきますのでお待ちください」
おじいさんの声に、佐伯さんがそう言い扉を開けようとすると呼び止められる。
「いや、お前たちは残りなさい」
「ですが……」
「佐伯、そこは素直に受け取るものだよ。それに報告もまだだろ? なんのために一緒に来たと思っている。祐一とお前は、今から一週間休暇扱いにしておく。ここのところ働き詰めだ。いいね?」
「……承知しました」
「でも、お爺様? 歩いて帰られるんですか?」
「ふふっ、まさか……そろそろだろ?」
ピンポーン……ピンポーン……と、軽快な音が鳴る。
腕時計を確認するおじいさんに合わせて、インターフォンが鳴ったのだ。悠斗が対応すると『来たよ~♪』と実千流の声が聞こえてきた。
実千流と環樹先輩は、理事長の車で来たのだろう。おじいさんを玄関まで見送ると「また日を改めてゆっくり食事でも」と言ってくれた。
入れ替わりで実千流と環樹先輩が訪れ、リビングは一気に盛り上がりをみせた。
調理の途中だったこともあり、悠斗がキッチンで続きを再開すると、佐伯さんと環樹先輩も手伝うと助っ人を申し出てくれた。三人に任せておけば味の保証は間違いなしだ。
「いや~できる旦那だと助かるね♪」
「俺たちダメーズだな」
「ははは……まぁ、僕たちが手伝っても足手まといなだけだから」
「それより、祐一さん。俺びっくりしたよ」
「あー……ごめんね? お爺様はいつもああなんだ。でもね、どういう訳かとても柔らかくなったよ。きっと瀬菜君と悠斗君に当てられたのかな?」
「それ、うちの爺様も言っていたよ! 優宇貴が機嫌がよくて嬉しいって♪ おかげで俺たちも爺様から、最近はガミガミ言われなくなった」
きっと根は優しい人なのだ。制約の中でどうしても譲れないものが、厳しく怖い人という印象を与えていたのかもしれない。
「瀬菜君……ありがとう」
「……祐一さん?」
なぜか祐一さんは俺に深く頭を下げながら、お礼の言葉を口にしてきた。
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