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第25幕 伝えるということ
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おふくろはあのとき確かにもらったと言っていた。嫌味なぐらい悠斗に似ているユウ。当時は悠斗の嫌がらせかと思っていたが、話を聞く限り脚長おじさんは悠斗ではないようだ。おふくろが俺のひとり暮らしが心配で、方便でも使ったのだろうか。
悠斗はキッチンの扉を見つめながらボソッと呟いた。
「……そうか」
「えっ?」
「ううん……それより瀬菜……続きは?」
悠斗が俺の唇をムニムニと親指で転がし早くしろとキスを強請ってくる。下唇がジンジンと熱を持ち紅く染まっていく。
指を退かしてくれなければ、キスはできないではないか。そう思いながら悠斗の指をパクリと咥え、どうだとばかりにほくそ笑んだ。
「ふーん。そう来るか」
「ふぇっ!」
悠斗は仕返しとでも言うように、俺の舌を指で愛撫していく。唾液が溢れないように口を窄めると、ちゅぷちゅぷと掻き回され、まるでフェラでもしているような錯覚に捕われた。
いい加減止めろと目で訴えると、ちゅぽんと引かれた指と唇の間にキラキラと銀糸が垂れ下がる。
「……馬鹿……」
ボソリと悪態をつくと、そっと悠斗の唇に何度も啄むキスを落としていった。
「……妬けちゃうな」
「なににだよ」
「そんなにいっぱいしたんだって」
「ほらみろ、嫌な気持ちになってる。けど……こんなに沢山はしてない」
「聞きたくないけどやっぱり気になる」
それはお互い様だ。
悠斗が気にするように、俺も空白の時間を勝手に想像してしまう。悠斗はどんな風に毎日を過ごしていたのかと……。
「俺だって……同じだ」
「俺は瀬菜が気にするようなことなにも」
「あ~狡い! 今ごまかした!」
一瞬目を逸しクスクス笑う悠斗を、頬を膨らませて睨みつけると、頬の辺りでチュッとリップ音が鳴る。頬と頬が触れただけで、本当にキスをした訳ではなかった。
「この程度だよ。向こうじゃ挨拶は握手かハグだったし。チークキスはほとんどなかった」
「ふーん。怪しい……」
「あーぁ、瀬菜は俺の気持ち忘れたみたい。まぁ、そうか……そうだよね……」
シュンと悲しそうな表情で悠斗は項垂れると、遠い過去を振り返るように、ため息を吐き出していた。
自分が虐めているようでワタワタすると、悠斗の胸に飛び込み抱きしめた。
「今度……今度さ、悠斗が過ごした場所に連れてってよ。俺、知りたいんだ。俺の知らない二年間……」
「うん、瀬菜……必ず連れて行く」
背中が温かい。悠斗の腕が俺をギュッと抱きしめているからだ。
心臓の鼓動が耳に響いている。平常心を装いスマートに振る舞っていても、どうやら悠斗は緊張している様子。
「悠斗に恋人ができたら、どうしようかなって考えてた」
「それは俺も同じだよ。一瞬でもアイツと付き合っていたと思うとムカつく」
「うーーそれ、なにも言えない」
「クスッ……そうでしょ?」
ドヤ顔の悠斗は次第に頬を緩ませ「なにもなくてよかった」と、俺の髪を何度も梳いていた。
「よくね、カメラのレンズ越しに悠斗を見たんだ」
「うん、俺も。街を歩くと瀬菜の幻を追っていた」
「ねぇ悠斗、これも夢かな? 普通に会話をして触れられるだけで今、凄く幸せだよ? 帰って来てくれて……ありがとう」
「俺も幸せだよ。夢でなんて終わらせない。ただいま……瀬菜」
「いっぱい嘘付いて、酷いこと言って心配掛けて……ごめん」
「俺も沢山黙っていて……ごめんね」
悠斗はキッチンの扉を見つめながらボソッと呟いた。
「……そうか」
「えっ?」
「ううん……それより瀬菜……続きは?」
悠斗が俺の唇をムニムニと親指で転がし早くしろとキスを強請ってくる。下唇がジンジンと熱を持ち紅く染まっていく。
指を退かしてくれなければ、キスはできないではないか。そう思いながら悠斗の指をパクリと咥え、どうだとばかりにほくそ笑んだ。
「ふーん。そう来るか」
「ふぇっ!」
悠斗は仕返しとでも言うように、俺の舌を指で愛撫していく。唾液が溢れないように口を窄めると、ちゅぷちゅぷと掻き回され、まるでフェラでもしているような錯覚に捕われた。
いい加減止めろと目で訴えると、ちゅぽんと引かれた指と唇の間にキラキラと銀糸が垂れ下がる。
「……馬鹿……」
ボソリと悪態をつくと、そっと悠斗の唇に何度も啄むキスを落としていった。
「……妬けちゃうな」
「なににだよ」
「そんなにいっぱいしたんだって」
「ほらみろ、嫌な気持ちになってる。けど……こんなに沢山はしてない」
「聞きたくないけどやっぱり気になる」
それはお互い様だ。
悠斗が気にするように、俺も空白の時間を勝手に想像してしまう。悠斗はどんな風に毎日を過ごしていたのかと……。
「俺だって……同じだ」
「俺は瀬菜が気にするようなことなにも」
「あ~狡い! 今ごまかした!」
一瞬目を逸しクスクス笑う悠斗を、頬を膨らませて睨みつけると、頬の辺りでチュッとリップ音が鳴る。頬と頬が触れただけで、本当にキスをした訳ではなかった。
「この程度だよ。向こうじゃ挨拶は握手かハグだったし。チークキスはほとんどなかった」
「ふーん。怪しい……」
「あーぁ、瀬菜は俺の気持ち忘れたみたい。まぁ、そうか……そうだよね……」
シュンと悲しそうな表情で悠斗は項垂れると、遠い過去を振り返るように、ため息を吐き出していた。
自分が虐めているようでワタワタすると、悠斗の胸に飛び込み抱きしめた。
「今度……今度さ、悠斗が過ごした場所に連れてってよ。俺、知りたいんだ。俺の知らない二年間……」
「うん、瀬菜……必ず連れて行く」
背中が温かい。悠斗の腕が俺をギュッと抱きしめているからだ。
心臓の鼓動が耳に響いている。平常心を装いスマートに振る舞っていても、どうやら悠斗は緊張している様子。
「悠斗に恋人ができたら、どうしようかなって考えてた」
「それは俺も同じだよ。一瞬でもアイツと付き合っていたと思うとムカつく」
「うーーそれ、なにも言えない」
「クスッ……そうでしょ?」
ドヤ顔の悠斗は次第に頬を緩ませ「なにもなくてよかった」と、俺の髪を何度も梳いていた。
「よくね、カメラのレンズ越しに悠斗を見たんだ」
「うん、俺も。街を歩くと瀬菜の幻を追っていた」
「ねぇ悠斗、これも夢かな? 普通に会話をして触れられるだけで今、凄く幸せだよ? 帰って来てくれて……ありがとう」
「俺も幸せだよ。夢でなんて終わらせない。ただいま……瀬菜」
「いっぱい嘘付いて、酷いこと言って心配掛けて……ごめん」
「俺も沢山黙っていて……ごめんね」
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