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第24幕 甘い誘惑と苦い後悔
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グッタリとうつ伏せに横たわる俺を、悠斗は当たり前のように清めていく。これで悠斗の気も済んだのだろうか。
瞳を閉じると無理矢理抱かれたことに怒りも感じるが、なぜか怒り切れない自分がいる。触れられたことへの喜びと、俺の気持ちを無視した行為への悲しみ。複雑な感情が胸の中をグルグルと回る。
二転三転と変化していく現状に戸惑い、頭が追いついていかない。けれど解決しなければならないことが待っている。動けるようになったら、このまま玉夫の家に向かおうと考えていた。
「さっき瀬菜のスマホ見たんだけど、あの写真はなに?」
「……えっ?」
あの写真とは、ひとつしかないだろう。
人のスマホを勝手に見るなど最低だと、怒りも吹き飛んでしまう質問に俺は動揺していた。
「あれ……は……」
「瀬菜?」
火照った身体が冷水を浴びたようにカタカタと震える。
悠斗に見られてしまった。あんな卑猥な写真、早々に削除しておくべきだった。
「──ふっ……ううっ……」
もう本当に戻れないのだと、嗚咽混じりに涙がポロポロと零れていく。
項垂れる俺の肩に温かいものが触れると、悠斗は穏やかな声で囁いた。
「瀬菜、ごめんね。少し嘘をついた。なにも見ていないよ」
悠斗はそう言い俺を抱きしめると、宥めるように俺の背中を擦ってくれた。
「さっきのアイツとの会話、どう考えてもおかしい。困っているなら力になりたいんだ」
実千流にも脅迫めいた玉夫の提案を話せずにいた。話した途端、実千流は玉夫を訴えると言い出し兼ねない。できれば穏便に事を収めたかった。
「だから教えて……瀬菜」
「でも……俺っ、悠斗にいっぱい酷いことした。今さら……助けてなんて、言えない……」
「酷いこと? 二年間前のことならあとでゆっくり話をしよ? 今は目の前の問題解決しなきゃ。じゃなきゃ瀬菜は、俺を受け入れてくれないでしょ? 瀬菜、二人で前に進もうよ」
「悠斗……ふぅぅッ」
悠斗の優しい笑顔に、俺の胸の支えがゆっくりと解けていく。真実を話せば悠斗は俺を軽蔑するかもしれない。けれど、二人で進もうと言ってくれたことがなによりも心強かった。
ベッドの上で白い掛け布団を肩に掛け肌を隠すと、ちょこんと膝を抱えて座る。少し距離を開け、俺の隣で悠斗は枕を抱え話に耳を傾けていた。
玉夫と付き合うことになったきっかけ。別れようとケジメをつけようとしたこと。どの話もみっともなく、改めて振り返ると自分でも聞くに耐えないものだった。
「いい加減な気持ちはよくないし……別れたいって伝えたんだ」
チラリと悠斗に視線を向けると、なにも言わずに頷き先を促される。ゴクリと唾を飲み込み、膝に顔を埋めると続きを言葉にした。
「菊夫と友達に戻りたかった。説得しようとしたけどダメだった。そのとき画像が送られてきて……関係続けるなら消すって。今日が返答の期限なんだ。だから俺、行かないと……」
「ふふっ、そっか……ふふふっ」
悠斗は枕に顔を押しつけながら、クスクスと笑い出した。
「──ッ……」
笑い話をしたつもりではないが、俺の行いに呆れているのだろう。
やはり話さないほうがよかったのだと、ギュッと膝を抱え小さくなった。
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