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第24幕 甘い誘惑と苦い後悔
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離れてソファーに座っていた玉夫が、腰を上げると俺の隣に腰掛け腕を回してくる。眉間に皺を寄せて「ベタベタするな」と言っても、腰を引かれて密着してしまう。
「瀬菜ちゃんに、聞きたいことがあるんだけど」
「あぁ? なに?」
クイッとグラスを仰ぎ密着する玉夫をチラリと見ると、無表情な表情に一瞬嫌な予感が通り過ぎる。
「瀬菜ちゃんのタイムリミットってどれ位?」
「はぁ? 俺の賞味期限?」
「プッ! そりゃ無期限でしょ。そうじゃなくて、立花悠斗のこと。確か行っている大学、凄い名門で難関大だよね? 入学は簡単でも卒業は四年じゃ足りない場合も多いはず。そんな不確かな相手をどれだけ待つの? 六年? 八年? 十年?」
質問に心臓がドクドクと叩かれる。あたり前に四年ほどで戻って来ると思っていた。年数を聞かれて妙に現実を押しつけられる。四年後もぽつんとひとりで居る自分が見えるような気がした。
俺は待てるはずだ……。
けど、悠斗は?
普通に会い、常に連絡を取り合っている訳でもない。最後に会ったときの悠斗のままだとも限らない。別れた相手のことをいつまでも思っているなど、奇跡かもしれない。実千流が言っていたように、すでに魅力的な相手と付き合っているかもしれない。
モヤモヤとした感情が胸を押し潰し、マイナス思考が頭を浸食していく。
「俺……それでも……」
「ねぇ、瀬菜ちゃん。ただ待ってるって辛くない?」
今までだって辛かった。ひとりで馬鹿みたいに踏ん張って、内面をひた隠しにしてきた。けれど最近の俺は、温かいものに触れ過ぎていた。
一度触れてしまったら、もっと欲しくなる。我慢していた分、その欲求は大きく膨らむばかり。
「あーいじめ過ぎた?」
ツーっと頬に雫が垂れる。胸のモヤモヤが寂しいと悲鳴を上げていた。
玉夫は俺の頬を親指で拭うと、宥めるように俺を抱きしめていた。
「そんなになるなら、いっそのこと会いに行ったらいいじゃん」
「……行かない……」
「結構頑固だねぇ」
「悪いか……」
「俺は独占できるから儲けもの。まぁ、今日は飲んで忘れちゃえ」
「うん……」
ワインボトルが空になると、玉夫はおつまみと新たなワインを取りにキッチンへ。レストランでも散々飲んだせいもあり、一本開けた頃には顔が熱くて堪らなかった。
こんな格好で飲むのも可笑しくて、クスクスとひとりで笑ってしまう。怒ったり泣いたり笑ったりと、忙しい日だ。
コルクを手際よく開ける玉夫に感心しつつ、ニコニコとその姿を眺めていると、玉夫が照れ臭そうにグラスにワインを注いでいく。
「そんな可愛い顔で俺を見ないでよ。彼女にでも見られてる気分」
「俺、オトコ~!」
「瀬菜ちゃん、忘れてるかもだけど、俺バイだからね」
「んー知ってる~。……トイレ」
「場所教えてなかったよね。立てる?」
玉夫のうしろをふらふらと千鳥足で着いて行くと、トイレに案内された。玉夫の住んでいるマンションは、意外と広く豪華で羨ましい限りだ。
「覗くなぁ~変態っ」
「いやぁ、その格好の場合どうすんのかなーって」
「女の子みたいにすんもん! も~出てけ~よ~」
玉夫を押し出すと、お行儀よく済ませ、壁に身体をぶつけながら、フラフラとリビングに戻った。動いたせいか余計にお酒が廻ってふわふわと心地いい。
「瀬菜ちゃんに、聞きたいことがあるんだけど」
「あぁ? なに?」
クイッとグラスを仰ぎ密着する玉夫をチラリと見ると、無表情な表情に一瞬嫌な予感が通り過ぎる。
「瀬菜ちゃんのタイムリミットってどれ位?」
「はぁ? 俺の賞味期限?」
「プッ! そりゃ無期限でしょ。そうじゃなくて、立花悠斗のこと。確か行っている大学、凄い名門で難関大だよね? 入学は簡単でも卒業は四年じゃ足りない場合も多いはず。そんな不確かな相手をどれだけ待つの? 六年? 八年? 十年?」
質問に心臓がドクドクと叩かれる。あたり前に四年ほどで戻って来ると思っていた。年数を聞かれて妙に現実を押しつけられる。四年後もぽつんとひとりで居る自分が見えるような気がした。
俺は待てるはずだ……。
けど、悠斗は?
普通に会い、常に連絡を取り合っている訳でもない。最後に会ったときの悠斗のままだとも限らない。別れた相手のことをいつまでも思っているなど、奇跡かもしれない。実千流が言っていたように、すでに魅力的な相手と付き合っているかもしれない。
モヤモヤとした感情が胸を押し潰し、マイナス思考が頭を浸食していく。
「俺……それでも……」
「ねぇ、瀬菜ちゃん。ただ待ってるって辛くない?」
今までだって辛かった。ひとりで馬鹿みたいに踏ん張って、内面をひた隠しにしてきた。けれど最近の俺は、温かいものに触れ過ぎていた。
一度触れてしまったら、もっと欲しくなる。我慢していた分、その欲求は大きく膨らむばかり。
「あーいじめ過ぎた?」
ツーっと頬に雫が垂れる。胸のモヤモヤが寂しいと悲鳴を上げていた。
玉夫は俺の頬を親指で拭うと、宥めるように俺を抱きしめていた。
「そんなになるなら、いっそのこと会いに行ったらいいじゃん」
「……行かない……」
「結構頑固だねぇ」
「悪いか……」
「俺は独占できるから儲けもの。まぁ、今日は飲んで忘れちゃえ」
「うん……」
ワインボトルが空になると、玉夫はおつまみと新たなワインを取りにキッチンへ。レストランでも散々飲んだせいもあり、一本開けた頃には顔が熱くて堪らなかった。
こんな格好で飲むのも可笑しくて、クスクスとひとりで笑ってしまう。怒ったり泣いたり笑ったりと、忙しい日だ。
コルクを手際よく開ける玉夫に感心しつつ、ニコニコとその姿を眺めていると、玉夫が照れ臭そうにグラスにワインを注いでいく。
「そんな可愛い顔で俺を見ないでよ。彼女にでも見られてる気分」
「俺、オトコ~!」
「瀬菜ちゃん、忘れてるかもだけど、俺バイだからね」
「んー知ってる~。……トイレ」
「場所教えてなかったよね。立てる?」
玉夫のうしろをふらふらと千鳥足で着いて行くと、トイレに案内された。玉夫の住んでいるマンションは、意外と広く豪華で羨ましい限りだ。
「覗くなぁ~変態っ」
「いやぁ、その格好の場合どうすんのかなーって」
「女の子みたいにすんもん! も~出てけ~よ~」
玉夫を押し出すと、お行儀よく済ませ、壁に身体をぶつけながら、フラフラとリビングに戻った。動いたせいか余計にお酒が廻ってふわふわと心地いい。
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