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第23幕 モノクロ
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お米が炊かれた匂いに目を覚ます。昨日の怠さが嘘のようだ。身体が軽く、匂いに誘われ珍しくお腹もグーグーと鳴っている。
ベッドから起き上がろうとすると阻まれ、ぬくもりに視線を下ろしクスッと笑う。実千流が俺の手を握りながら隣で眠り、その逆側でユウが行儀よく眠っていた。
「へへっ……川の字だ」
狭いベッドで密着しながら眠っていたというのに、こんなに気分がいいのは久し振りだ。目を覚まさず熟睡できたのは、このぬくもりのせいなのかもしれない。
起きそうにない実千流の手をそっと解き、ベッドから抜け出すとキッチンへ顔を出す。
「……玉夫。おはよ」
「起きた? 顔色、悪くなさそうだね。もうすぐだから待ってて。お粥なら食べられる?」
「ああ、おかげで気分はいい。その……色々ごめん」
「全然。実千流ちゃんとずっと話していたんだ。すっごく面白かった。でもまさか高校の時、俺を投げ飛ばしたのが実千流ちゃんだとは思わなかったな~」
高校時代の思い出にどうやら花を咲かせていたようだ。
ということは、俺と玉夫の経緯も聞いたのだろう。
「ははっ、驚いただろ? あんなひ弱そうなのに意外と男らしいんだ」
「本当にびっくりだよ。けど一番びっくりしたのは瀬菜ちゃんに実千流ちゃん、二人にナンパしていたことだよ」
「過去の自分に反省してんのか?」
「まさか。自分の直感に関心してた。それと念願の瀬菜ちゃんの女装も見せてもらっちゃった♡」
「勝手に見るなよ。お前の直感なぞ凄くねぇよ。そんだけ色々な子に声掛けていたんだろが」
「なになに? 妬いてんの?」
ニヤリと笑う玉夫にムッとするが、相手にせずほかにどんな話をしたか確認する。
「瀬菜ちゃんが気にしてることは話していないよ。実千流ちゃんって凄く瀬菜ちゃんが好きなんだね。ずっと自慢してたし、心配もしていた。あとで二人でちゃんと話なよ」
「……うん」
「よし、じゃ俺の愛情たっぷりのお粥食べて、もっと元気になろ。そんでもって沢山お返ししてね♡」
「ははは、そのお返しが一番怖いわ」
フワフワな溶き卵がかけられたお粥は塩加減も丁度よく、俺のお腹にはとても優しかった。玉夫が料理上手なのも意外だが、ひとりではないせいか普段以上に食べてしまった。
あくびを何度もする玉夫の姿に、昨夜は眠らず実千流とユウの相手をしてくれていたのだと窺える。
「無理はしちゃ駄目だよ。なにかあればいつでも連絡して」
「うん、ありがとう。お前って結構優しいな」
「今さらだなぁ。俺、瀬菜ちゃんには激甘だから♡ それじゃ」
玉夫はそう言うと俺の頭を撫で、展示会の後片付けに大学へ行ってしまった。
鍵を閉めると背中に冷たいものを感じた。
「……瀬菜と十王君って……なに?」
「実千流! 起きていたのか⁉︎」
突然の寒々しい声に心臓が飛び出しそうになる。機械人形のようにギィギィと首をうしろに回す。まるで浮気現場を抑えられたようで妙に焦る俺。実千流は目を細め、含みのある言葉を俺に投げつけた。
「昨日から思っていたんだけど、二人は友達なの?」
「あっ、当たり前だ! 変なこと言うなよ。その……色々あって」
「ふーん。その色々って聞かせてくれるんだよね?」
実千流の双眸をしっかりと見つめ、躊躇なく頷く。
「話すって、決めたから」
「そっか……ずっと待ってた。けーど、先に体調治さないと♪ 俺看病するためにここに来たんだし~♪」
「へへっ、具合はすっかりいいから大丈夫だよ」
「瀬菜の大丈夫は当てにならない!」
実千流はそう言うと、俺をまた布団に押し込んだ。沢山寝たので眠れるはずはない。
体温計を差し込まれ音が鳴ると、実千流はホッとしながらベッドに寄りかかり俺から視線を逸して呟いた。
「実はさ、昨日は瀬菜の作品だけ見て帰るつもりだったんだ」
ベッドから起き上がろうとすると阻まれ、ぬくもりに視線を下ろしクスッと笑う。実千流が俺の手を握りながら隣で眠り、その逆側でユウが行儀よく眠っていた。
「へへっ……川の字だ」
狭いベッドで密着しながら眠っていたというのに、こんなに気分がいいのは久し振りだ。目を覚まさず熟睡できたのは、このぬくもりのせいなのかもしれない。
起きそうにない実千流の手をそっと解き、ベッドから抜け出すとキッチンへ顔を出す。
「……玉夫。おはよ」
「起きた? 顔色、悪くなさそうだね。もうすぐだから待ってて。お粥なら食べられる?」
「ああ、おかげで気分はいい。その……色々ごめん」
「全然。実千流ちゃんとずっと話していたんだ。すっごく面白かった。でもまさか高校の時、俺を投げ飛ばしたのが実千流ちゃんだとは思わなかったな~」
高校時代の思い出にどうやら花を咲かせていたようだ。
ということは、俺と玉夫の経緯も聞いたのだろう。
「ははっ、驚いただろ? あんなひ弱そうなのに意外と男らしいんだ」
「本当にびっくりだよ。けど一番びっくりしたのは瀬菜ちゃんに実千流ちゃん、二人にナンパしていたことだよ」
「過去の自分に反省してんのか?」
「まさか。自分の直感に関心してた。それと念願の瀬菜ちゃんの女装も見せてもらっちゃった♡」
「勝手に見るなよ。お前の直感なぞ凄くねぇよ。そんだけ色々な子に声掛けていたんだろが」
「なになに? 妬いてんの?」
ニヤリと笑う玉夫にムッとするが、相手にせずほかにどんな話をしたか確認する。
「瀬菜ちゃんが気にしてることは話していないよ。実千流ちゃんって凄く瀬菜ちゃんが好きなんだね。ずっと自慢してたし、心配もしていた。あとで二人でちゃんと話なよ」
「……うん」
「よし、じゃ俺の愛情たっぷりのお粥食べて、もっと元気になろ。そんでもって沢山お返ししてね♡」
「ははは、そのお返しが一番怖いわ」
フワフワな溶き卵がかけられたお粥は塩加減も丁度よく、俺のお腹にはとても優しかった。玉夫が料理上手なのも意外だが、ひとりではないせいか普段以上に食べてしまった。
あくびを何度もする玉夫の姿に、昨夜は眠らず実千流とユウの相手をしてくれていたのだと窺える。
「無理はしちゃ駄目だよ。なにかあればいつでも連絡して」
「うん、ありがとう。お前って結構優しいな」
「今さらだなぁ。俺、瀬菜ちゃんには激甘だから♡ それじゃ」
玉夫はそう言うと俺の頭を撫で、展示会の後片付けに大学へ行ってしまった。
鍵を閉めると背中に冷たいものを感じた。
「……瀬菜と十王君って……なに?」
「実千流! 起きていたのか⁉︎」
突然の寒々しい声に心臓が飛び出しそうになる。機械人形のようにギィギィと首をうしろに回す。まるで浮気現場を抑えられたようで妙に焦る俺。実千流は目を細め、含みのある言葉を俺に投げつけた。
「昨日から思っていたんだけど、二人は友達なの?」
「あっ、当たり前だ! 変なこと言うなよ。その……色々あって」
「ふーん。その色々って聞かせてくれるんだよね?」
実千流の双眸をしっかりと見つめ、躊躇なく頷く。
「話すって、決めたから」
「そっか……ずっと待ってた。けーど、先に体調治さないと♪ 俺看病するためにここに来たんだし~♪」
「へへっ、具合はすっかりいいから大丈夫だよ」
「瀬菜の大丈夫は当てにならない!」
実千流はそう言うと、俺をまた布団に押し込んだ。沢山寝たので眠れるはずはない。
体温計を差し込まれ音が鳴ると、実千流はホッとしながらベッドに寄りかかり俺から視線を逸して呟いた。
「実はさ、昨日は瀬菜の作品だけ見て帰るつもりだったんだ」
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