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第23幕 モノクロ
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自分では分かっていなかったことを指摘され、的を得ている指摘に焦りを感じる。否定するように収めた手を引こうとすれば、ギュッと握りしめられ逃れることが叶わなかった。
指先一本一本に絡まる玉夫の指先。スーッと擽られ撫でられると、ビクンと身体に電流が走る。すっかり冷えていたはずの体温が上昇し、顔中に熱が集まっていく。
「瀬菜ちゃんの手、小さいね。それに冷え性かな? 遠くより……こうして近くで触れられたほうが、幸せって思わない? 俺ならいつでも温めてあげられるよ?」
ポケットから手を出すと、玉夫は俺の指先にそっとキスを落とす。離れた唇から吐息が溢れ、空気が肌に触れ温まっていく。
「ね? 温かいでしょ?」
「──ッ、玉夫っ‼」
引き抜いた手のひらを隠すように背後に回し、玉夫の視線からも逃れる。
「フッ……なーんてね。ドキッとした?」
「……冗談はやめろよ」
「悪かったよ。まぁ明日早いし、ゆっくり休みな」
クシャリと髪を撫でられ、背中をポンっと押される。前によろめくのを踏ん張ると、窺うように振り向き一応確認した。
「泊まっていかねぇの?」
俺の家からのほうが断然大学には近い。明日は早い時間に大学に行き、会場まで作品を持参し搬入しなければならない。泊まったほうが眠る時間は確保できる。
そう思って言った言葉に、不意をつかれたような顔でキョトンとする玉夫。
「それこそ冗談でしょ? 帰るよ。服の変えもないし、瀬菜ちゃんのベッドじゃ狭くて寝られないよ」
「アホ。誰が一緒に寝ると言った。まぁ明日寝坊するなよ? 気を付けて帰れよ」
「うん、おやすみ……」
「おやすみ!」
階段を登り見下ろすと、玉夫は手を小さく振りながらニコニコとしていた。俺も小さく手を上げると、家の中へと入っていった。
「……ったく……無防備で鈍感かよ。危ないねぇー。こりゃ時間がかかりそうだ……。時間はたっぷりあるし、慎重に……かな」
上げた手を髪に差し込み掬い上げる玉夫は、クスクスと笑いながら暗闇の中へ消えていった。
***
毎年行われているコンクール。作品は写真だけに留まらず、絵画やグラフィクなど美術作品に関わるものであればなんでも出展可能だ。大学生のみが参加を許される一大イベント。
去年も参加はしたが、写真研究会のメンバーで入賞した者はいなかった。難関で精鋭作品が集まる展示コンクールなのだ。
入賞ものなら研究会にも支援金が大学から入り、設備投資もできる訳だが、世の中そう上手くはいかないものだ。一般公開をし、プロの投票と一般投票で選考される仕組みだ。
大賞を取った学生は、プロへの転身も夢ではなく、大学側も知名度を上げるために力を注いでいる。
開催期間は一週間と長く、この時期のサークルメンバーは皆、胃に穴が開きそうになるほど気がきではない一週間を強いられる。
大学から展示会場に搬入し、指定の展示ブースに持ち込んだ作品を壁に掛ける前に床に並べた。作品の雰囲気とバランスを取りながら、部長と副部長が指示を出していく。
「十王のは最初にしよう。そのほうが全体のバランスがとれて映える。柳のは真ん中に……それから……」
「絵美ちゃんのは最後がよくない?」
二人が話し合い指示を出し、それぞれが並び替えをしていく。順序も魅せるうちの一つなのだ。自分の作品を置き終えると、もたつく玉夫のヘルプに入って俺はありえないほど大きな悲鳴を上げた。
指先一本一本に絡まる玉夫の指先。スーッと擽られ撫でられると、ビクンと身体に電流が走る。すっかり冷えていたはずの体温が上昇し、顔中に熱が集まっていく。
「瀬菜ちゃんの手、小さいね。それに冷え性かな? 遠くより……こうして近くで触れられたほうが、幸せって思わない? 俺ならいつでも温めてあげられるよ?」
ポケットから手を出すと、玉夫は俺の指先にそっとキスを落とす。離れた唇から吐息が溢れ、空気が肌に触れ温まっていく。
「ね? 温かいでしょ?」
「──ッ、玉夫っ‼」
引き抜いた手のひらを隠すように背後に回し、玉夫の視線からも逃れる。
「フッ……なーんてね。ドキッとした?」
「……冗談はやめろよ」
「悪かったよ。まぁ明日早いし、ゆっくり休みな」
クシャリと髪を撫でられ、背中をポンっと押される。前によろめくのを踏ん張ると、窺うように振り向き一応確認した。
「泊まっていかねぇの?」
俺の家からのほうが断然大学には近い。明日は早い時間に大学に行き、会場まで作品を持参し搬入しなければならない。泊まったほうが眠る時間は確保できる。
そう思って言った言葉に、不意をつかれたような顔でキョトンとする玉夫。
「それこそ冗談でしょ? 帰るよ。服の変えもないし、瀬菜ちゃんのベッドじゃ狭くて寝られないよ」
「アホ。誰が一緒に寝ると言った。まぁ明日寝坊するなよ? 気を付けて帰れよ」
「うん、おやすみ……」
「おやすみ!」
階段を登り見下ろすと、玉夫は手を小さく振りながらニコニコとしていた。俺も小さく手を上げると、家の中へと入っていった。
「……ったく……無防備で鈍感かよ。危ないねぇー。こりゃ時間がかかりそうだ……。時間はたっぷりあるし、慎重に……かな」
上げた手を髪に差し込み掬い上げる玉夫は、クスクスと笑いながら暗闇の中へ消えていった。
***
毎年行われているコンクール。作品は写真だけに留まらず、絵画やグラフィクなど美術作品に関わるものであればなんでも出展可能だ。大学生のみが参加を許される一大イベント。
去年も参加はしたが、写真研究会のメンバーで入賞した者はいなかった。難関で精鋭作品が集まる展示コンクールなのだ。
入賞ものなら研究会にも支援金が大学から入り、設備投資もできる訳だが、世の中そう上手くはいかないものだ。一般公開をし、プロの投票と一般投票で選考される仕組みだ。
大賞を取った学生は、プロへの転身も夢ではなく、大学側も知名度を上げるために力を注いでいる。
開催期間は一週間と長く、この時期のサークルメンバーは皆、胃に穴が開きそうになるほど気がきではない一週間を強いられる。
大学から展示会場に搬入し、指定の展示ブースに持ち込んだ作品を壁に掛ける前に床に並べた。作品の雰囲気とバランスを取りながら、部長と副部長が指示を出していく。
「十王のは最初にしよう。そのほうが全体のバランスがとれて映える。柳のは真ん中に……それから……」
「絵美ちゃんのは最後がよくない?」
二人が話し合い指示を出し、それぞれが並び替えをしていく。順序も魅せるうちの一つなのだ。自分の作品を置き終えると、もたつく玉夫のヘルプに入って俺はありえないほど大きな悲鳴を上げた。
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