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第21幕 卒業旅行は終わりで始まり
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度数は低いが空になりそうな頃には頬がほんのり色づき、なんとなく気分がいい。夜の気候は北風が混じり少し肌寒いぐらいだが、血行がいいせいかテラスで過ごすにはちょうどいい。
仲間が楽しそうにはしゃいでいる声をBGMに、ぼんやりと輝く夜空を見つめていた。
「飲んでっか? なにひとりで黄昏れてんだよ。ほら、追加」
「サンキュー由良りん。でもあんまり飲むと怒られる」
「フッ、俺が面倒見てやるから気にすんな」
「へへっ、それ由良りんが悠斗に怒られるよ?」
「フンッ、ユウに怒られてもなんとも思わねぇーよ」
鼻で笑いながらグピグピと缶を煽る由良りん。
少し酔っている様子だが機嫌は悪くなさそうだ。
「ねぇ、来てよかった?」
「なんだ、心配してんのか?」
「へへっ、だって多澤曰く金属の塊。苦手なのにゴメン」
「ぶっちゃけ苦手だ。誰だって苦手ぐらいあるだろ?」
「ははっ、お化けもね!」
「あーー、そういうこと言う?」
肩に腕を回され引き寄せらせると、コツっと頭を小突かれる。
「ヤナは苦手とかなさそうだよな」
「そうかな……俺だって、あるよ……」
チラリとキッチンに視線だけを向けると、悠斗が実千流と楽しそうに料理をしていた。俺が手伝うと申し出たのに、実千流にはお願いするのか……とか。
友達を疑う自分自身が苦手だ。素直にその輪に行けない自分が苦手だ。
「……あぁ、ヤナはユウのああいう誰にでも的な優しさ、苦手だよな」
「へへっ……バレてる? 優しいってのはあいつのいいところでもあるし、苦手と思うのは俺の問題だからさ」
「ふーん。ヤナはユウに甘いな」
「そうかな? あー、そうかも。結局最後は俺が折れること多いかも。恋はなんちゃらってやつかな……へへっ……へ?」
自分が放った言葉に羞恥心を煽られ俯いていたが、気配に頭を上げると間近に由良りんの顔があった。まさに瞳を覗かれる感覚。けれどその顔は、無表情ながらもなぜか悲しさを含んでいるような気がする。
動き出す由良りんの唇が言葉を発する前から俺に不安を与え、胸がザワザワと騒ぎ出す。
「お前たち……本当に思い合ってんの?」
一瞬なにを言われたのか理解できなかった。俺に対してあまりキツイことを口に出さない由良りん。声はとても冷たく耳に残る。手の中の缶がカポッ……と音を立て、知らずうちに力が入っていたことを気づかされるかされる。
言葉を発さなくなった俺の髪をグシャっとかき回すと、由良りんはスッと立ち上がり顔を背けた。
「……悪い……変なこと言った。俺、飲み過ぎ……頭冷してくるわ」
「えっ、ちょっと! 由良りん! もう暗いよ!」
ひらひらと手を振り、由良りんは暗い砂浜にポスンと着地すると、「遠くには行かねーよ」と振り向くことなく行ってしまった。
しばらく砂浜を歩く由良りんの姿を見ていたが、ほんのりと光が届く場所で立ち止まり海を眺めていた。あの場所なら問題ないかと、瞳を閉じフーっと息を吐き出す。
一体どうしたのだろうか……。
やはりこの旅行は気に入らなかったのだろうか……。
本当はなにか言いたかったのだろうか……。
飲み過ぎたにしては言葉はハッキリとし、思考に問題はなさそうだった。真っ直ぐに射抜く視線と、思い詰めたような表情に嫌な予感がしてしまう。
もう一度由良りんに確かめてみよう……そう思い瞼を開いたときには、そこに居たはずの由良りんの姿はなく、まさかと思い追うように俺は駆け出していた。
仲間が楽しそうにはしゃいでいる声をBGMに、ぼんやりと輝く夜空を見つめていた。
「飲んでっか? なにひとりで黄昏れてんだよ。ほら、追加」
「サンキュー由良りん。でもあんまり飲むと怒られる」
「フッ、俺が面倒見てやるから気にすんな」
「へへっ、それ由良りんが悠斗に怒られるよ?」
「フンッ、ユウに怒られてもなんとも思わねぇーよ」
鼻で笑いながらグピグピと缶を煽る由良りん。
少し酔っている様子だが機嫌は悪くなさそうだ。
「ねぇ、来てよかった?」
「なんだ、心配してんのか?」
「へへっ、だって多澤曰く金属の塊。苦手なのにゴメン」
「ぶっちゃけ苦手だ。誰だって苦手ぐらいあるだろ?」
「ははっ、お化けもね!」
「あーー、そういうこと言う?」
肩に腕を回され引き寄せらせると、コツっと頭を小突かれる。
「ヤナは苦手とかなさそうだよな」
「そうかな……俺だって、あるよ……」
チラリとキッチンに視線だけを向けると、悠斗が実千流と楽しそうに料理をしていた。俺が手伝うと申し出たのに、実千流にはお願いするのか……とか。
友達を疑う自分自身が苦手だ。素直にその輪に行けない自分が苦手だ。
「……あぁ、ヤナはユウのああいう誰にでも的な優しさ、苦手だよな」
「へへっ……バレてる? 優しいってのはあいつのいいところでもあるし、苦手と思うのは俺の問題だからさ」
「ふーん。ヤナはユウに甘いな」
「そうかな? あー、そうかも。結局最後は俺が折れること多いかも。恋はなんちゃらってやつかな……へへっ……へ?」
自分が放った言葉に羞恥心を煽られ俯いていたが、気配に頭を上げると間近に由良りんの顔があった。まさに瞳を覗かれる感覚。けれどその顔は、無表情ながらもなぜか悲しさを含んでいるような気がする。
動き出す由良りんの唇が言葉を発する前から俺に不安を与え、胸がザワザワと騒ぎ出す。
「お前たち……本当に思い合ってんの?」
一瞬なにを言われたのか理解できなかった。俺に対してあまりキツイことを口に出さない由良りん。声はとても冷たく耳に残る。手の中の缶がカポッ……と音を立て、知らずうちに力が入っていたことを気づかされるかされる。
言葉を発さなくなった俺の髪をグシャっとかき回すと、由良りんはスッと立ち上がり顔を背けた。
「……悪い……変なこと言った。俺、飲み過ぎ……頭冷してくるわ」
「えっ、ちょっと! 由良りん! もう暗いよ!」
ひらひらと手を振り、由良りんは暗い砂浜にポスンと着地すると、「遠くには行かねーよ」と振り向くことなく行ってしまった。
しばらく砂浜を歩く由良りんの姿を見ていたが、ほんのりと光が届く場所で立ち止まり海を眺めていた。あの場所なら問題ないかと、瞳を閉じフーっと息を吐き出す。
一体どうしたのだろうか……。
やはりこの旅行は気に入らなかったのだろうか……。
本当はなにか言いたかったのだろうか……。
飲み過ぎたにしては言葉はハッキリとし、思考に問題はなさそうだった。真っ直ぐに射抜く視線と、思い詰めたような表情に嫌な予感がしてしまう。
もう一度由良りんに確かめてみよう……そう思い瞼を開いたときには、そこに居たはずの由良りんの姿はなく、まさかと思い追うように俺は駆け出していた。
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