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第16幕 新たな決意
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行きにくくなったと思った傍から早速お泊まりコースの俺は、昨夜の激しい情事のせいもあり普段より遅めの朝を迎えた。
気だるげにぼんやりとしながら、おばさんの美味しい朝食を至れり尽くせりで堪能する。休日の自宅ならこうはいかない。
朝食を食べ、もう一眠りしたいところだが、今日は春休みに入る前に約束していた高台の公園に行こうと前日から打ち合わせをしていたのだ。
それなのに……嗚呼、それなのに。
……腰が……痛い……。
あ、あんな体勢でしたらそりゃ……。
がっつきやがって……今日の予定も考えろよ。
高台までたどり着けるかな……。
「……お前、俺が途中で歩けなくなったらおんぶな」
「構わないけど、どうせならお姫様抱っこがいいな♡」
「……お主の要望をなぜに聞かねばならぬのだ」
「それが私の勤めにございます。ほら、責任は感じてるからね」
責任を感じたほどなら、もう少し手加減してほしいものだ。
「へー、知らなかったー」
「だって、昨日の瀬菜もエロくて……歯止め効かなくなるのは仕方なくない?」
「ソダネ。シカタナイヨネ」
「もー、その言い方。あんなおねだりされたらそりゃね?」
ナニを思い出しているのか、だらしのない表情の悠斗に無表情に返すと、スタスタとひとり先に進む。
「クスッ、瀬菜の恥ずかしがり屋は健在だね」
お散歩ついでに早めに家を出る。早いといっても昼前ぐらいだ。それでも三月の空気はまだ肌寒い。日差しがキツイかもしれないと薄着で出たことを後悔したが、歩いていれば身体も暖まるはずだ。
小学校までは高校の場所とは真逆のため、滅多に訪れなくなった方角だ。見慣れていたはずの景色は昔と全く異なり、時間の流れを感じてしまう。
うろ覚えの記憶を辿りながら、ここにはあれがあった、これがなかったと歩いているだけで話は尽きなかった。
「悠斗、悠斗。あった……ここ……だったよな?」
「うん、確かこの階段を登ったところだったはず」
十年位前とは違った景色に戸惑い何度も道を間違えながら歩きどうにか目的の場所にたどり着いた。
「昔はもっと高い感じがしたけど、こうして見上げるとそうでもないな」
「本当だね。俺達、背も伸びたし視線の高さが違うと変わるね」
「うわ~、なんかそれ嫌味にしか聞こえないぞ」
「そんなことないよ。瀬菜は確かに小さいけど、成長はしっかりしたでしょ?」
悠斗のほどよく筋肉がついたお腹にパンチを入れてやる。
「──ッ! いたぁー。瀬菜、昨日から狂暴だよ? あんなに激しく愛し合ったのにな」
「お前のひと言とその激しさが俺をこうやって狂暴にさせるんだ!」
お腹を大袈裟に擦りながら、悠斗は「可愛くないんだから。激しいほうが瀬菜も腰振っちゃうくせに……」と呟き、俺の手に指を絡めてきた。
一段先に悠斗が進み俺を引っ張ってくれる。階段を登るのには丁度いい介錯だ。なにせ俺は病みあがりみたいなものだから。
気だるげにぼんやりとしながら、おばさんの美味しい朝食を至れり尽くせりで堪能する。休日の自宅ならこうはいかない。
朝食を食べ、もう一眠りしたいところだが、今日は春休みに入る前に約束していた高台の公園に行こうと前日から打ち合わせをしていたのだ。
それなのに……嗚呼、それなのに。
……腰が……痛い……。
あ、あんな体勢でしたらそりゃ……。
がっつきやがって……今日の予定も考えろよ。
高台までたどり着けるかな……。
「……お前、俺が途中で歩けなくなったらおんぶな」
「構わないけど、どうせならお姫様抱っこがいいな♡」
「……お主の要望をなぜに聞かねばならぬのだ」
「それが私の勤めにございます。ほら、責任は感じてるからね」
責任を感じたほどなら、もう少し手加減してほしいものだ。
「へー、知らなかったー」
「だって、昨日の瀬菜もエロくて……歯止め効かなくなるのは仕方なくない?」
「ソダネ。シカタナイヨネ」
「もー、その言い方。あんなおねだりされたらそりゃね?」
ナニを思い出しているのか、だらしのない表情の悠斗に無表情に返すと、スタスタとひとり先に進む。
「クスッ、瀬菜の恥ずかしがり屋は健在だね」
お散歩ついでに早めに家を出る。早いといっても昼前ぐらいだ。それでも三月の空気はまだ肌寒い。日差しがキツイかもしれないと薄着で出たことを後悔したが、歩いていれば身体も暖まるはずだ。
小学校までは高校の場所とは真逆のため、滅多に訪れなくなった方角だ。見慣れていたはずの景色は昔と全く異なり、時間の流れを感じてしまう。
うろ覚えの記憶を辿りながら、ここにはあれがあった、これがなかったと歩いているだけで話は尽きなかった。
「悠斗、悠斗。あった……ここ……だったよな?」
「うん、確かこの階段を登ったところだったはず」
十年位前とは違った景色に戸惑い何度も道を間違えながら歩きどうにか目的の場所にたどり着いた。
「昔はもっと高い感じがしたけど、こうして見上げるとそうでもないな」
「本当だね。俺達、背も伸びたし視線の高さが違うと変わるね」
「うわ~、なんかそれ嫌味にしか聞こえないぞ」
「そんなことないよ。瀬菜は確かに小さいけど、成長はしっかりしたでしょ?」
悠斗のほどよく筋肉がついたお腹にパンチを入れてやる。
「──ッ! いたぁー。瀬菜、昨日から狂暴だよ? あんなに激しく愛し合ったのにな」
「お前のひと言とその激しさが俺をこうやって狂暴にさせるんだ!」
お腹を大袈裟に擦りながら、悠斗は「可愛くないんだから。激しいほうが瀬菜も腰振っちゃうくせに……」と呟き、俺の手に指を絡めてきた。
一段先に悠斗が進み俺を引っ張ってくれる。階段を登るのには丁度いい介錯だ。なにせ俺は病みあがりみたいなものだから。
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