王子×悪戯戯曲

そら汰★

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第16幕 新たな決意

05

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「なぜ俺まで追い出されたんだ」

 なにがなんだか分からんといった様子で、保健室の主が言うと、みんなで白い目を佐上先生に向ける。

「佐上、マジ空気読めねぇなぁー」
「元はと言えば、先生が居たからごねたんですよ」
「確かに、大人なんだから察してあげてよ~」
「あれじゃね? 恋愛事にご無沙汰で、状況掴めなかった的な」
「先生ー。俺、喋ってたら喉渇いた」
「……あそこは俺の城じゃ! 居てなにが悪い。そもそも保健室は青春する場所じゃねぇだろ。てか、ビッチどさくさ紛れにおねだりか? もっと可愛くねだれ!」

 キモイことを言い出す佐上先生に、ひきつった顔をしていると、悠斗が先生を背後からホールドした。

「カナちゃん。先生手が塞がってるって。お財布取ってあげてよ」
「……みたいだな。…………ああ、あった。うちの学校給料いいの? めっちゃ入ってんじゃん。ヤナなに飲みたい?」
「えっ、えっと……いちごミルク!」
「俺、コーラ」
「俺も~♪」
「おっお前らっ! 生徒会のくせに教師にカツアゲかよ‼ こらっ返せ‼」

 暴れる佐上先生は、悠斗に羽交い締めされている。どれだけ怪力なのだ。

「先生人聞き悪いですよ? 可愛いおねだりでしたよね? ご馳走さまです♡ 先生大~好き♡ あっ、先生は何飲みます?」
「あっ、……ばばばッ、バナナ・オレ♡」

 悠斗の甘い囁きに陥落した佐上先生から、見事俺達はお財布の紐を緩めさせ、飲み物をゲットしたのだった。



 ちゃっかり佐上先生にご馳走になったあとは、教室に戻り帰り支度をした。校内に溢れ返っていた人垣もポツリポツリと残っている程度だ。
 このままどこかに出掛けようと提案されたが、やはり実千流のことが気掛かりだった俺は、もう少し残ると断った。
 明日から終業式まで学校も休みで春休みに突入だ。忙しかった生徒会も、卒業式と新学期の準備も終わり久々の骨休みとなる。
 誰も居なくなった教室で悠斗と二人、休みはなにをしようかと相談しつつ、実千流が教室に戻って来るのを待っていた。

「俺、行きたいところがあるんだ」

 珍しく悠斗がそう言う。

「どこ?」
「うん。ふと思い出して。瀬菜は覚えているかな?」

 どうやら自分も行ったことのある場所のようだ。色々考えてみるが、悠斗が行きたがる場所があっただろうか。
 机にペタリとタコのように項垂れながら考えていると、悠斗は矢田さんの席に腰掛け、俺の髪を弄って遊んでいた。一日動き回った身体には心地よく、瞼が重くなってしまう。眠らないように欠伸をしながら唸り声をあげ、考えている風を装う。

「……瀬菜眠いでしょ?」
「眠くないよ。今考えてるんだ」
「クスッ……嘘ばっか」
「嘘じゃない。……んー、ヒント!」
「いいよ? なら、こっち向いて?」

 悠斗は俺の顎を掬い上げると、チュッと啄むキスをしてからひと言呟いた。
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