王子×悪戯戯曲

そら汰★

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第16幕 新たな決意

01

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 高校生活二年目の終わりも目前に迫っていた。構内は三年生の卒業で皆、なんとなく寂しそうである。予行練習だけで涙を流す生徒も居るほどだ。
 部活動で関わりがある先輩は居ないが、生徒会の先輩方が卒業というのは不安でもあり、寂しさが募ってしまう。
 この二年間で色々なことを教わった。卒業式を無事終えることができたら、先輩達も安心して俺達に生徒会を任せられると思ってくれるだろうか……。


 ──卒業式当日。
 生徒会の俺達は、壇上の袖から式典を見守っていた。実千流の声がマイクを通し会場内に流れていく。
 シーンとした空間に、時折鼻を啜る音や咳払いが響いている。卒業生が別れを題材にした音楽と共に入場し、最後の高校生活を噛み締めていた。

「……瀬菜、お水ある?」

 式の進行を纏めている実千流は、額に汗をかきながら袖に入ってネクタイを緩めた。
 今日の実千流は、明らかに朝から体調が優れない様子だった。悠斗と進行役を交代するかと提案したが、実千流は断固として譲らなかった。

「実千流……お前熱出てるんじゃね?」
「……大丈夫。薬も飲んだし。ちょっと照明がキツくて」
「無理するな。倒れてからじゃ遅いんだぞ」
「……分かってる。台無しにはしないよ。卒業生の門出だもん」

 卒業証書授与でしばらくは休めると、椅子に腰掛けながら実千流は目を離さず壇上を見つめていた。
 実千流の気持ちも分からなくはない。そのためにここ数ヶ月、用意を重ねてきたのだ。

「実千流ちゃん、首回り冷やしたほうがいいよ? 瀬菜、手伝ってあげて」

 どうしたものかと考えていると、悠斗が俺にタオルを手渡してきた。触れた途端に冷たいそれは、タオルに包まれた氷嚢だった。おそらく悠斗はこうなることを、予め察知していたのだろう。
 実千流のうなじに当てると、「気持ちいい~」と険しい顔つきが緩み、気休めにはなったようだ。


 式は着々と進み、理事長挨拶、校長挨拶、来賓挨拶、来賓電報と続き門出の言葉が贈られていく。

「悠斗、俺緊張してきた……」
「なんで瀬菜が緊張するの」
「えーー、お前緊張しねぇの?」
「まぁ……こういうの慣れてるし。行ってくるね」

 今年の在校生送辞は悠斗が対応する。自分が壇上に立つ訳ではないが、妙に緊張しまくっていた。
 悠斗は大勢の前でも物怖じしないのか、優雅な動作と言葉で卒業生に送辞を贈っていた。
 送辞が終わると、卒業生答辞となり、環樹先輩が壇上に呼ばれた。

「──卒業生答辞。っ……清河……環樹」
「……はい」

 環樹先輩の名前を発したとき、実千流の声が少し掠れ詰まったような気がした。先輩は壇上に上がる階段を昇りながら、チラリと実千流に視線を投げ『泣くなよばぁーか』とでも言うように、ニヤッとしていた。
 実千流は一瞬ムッとし、顔を背けると唇を噛み締めながら、泣くのを我慢している様子だった。

 閉式のことばで締め括られると、卒業生退場でそれぞれ色々な表情をしながら、拍手と音楽により贈られていく。多くの人が涙を流し、別れを惜しんでいた。
 全ての卒業生が講堂をあとにすると、卒業式は終わりを迎えた。

 式が終わったあとは、来賓の案内や卒業生の保護者の案内などで、生徒会メンバーは転々と散り、対応に追われていた。
 実千流と由良りんと俺は講堂に残り、数名の生徒会と在校生で、講堂内の片付けを行っていた。人数がある程度居るので、片付けは早く終わりそうだ。

 
 ガシャンッ! パリンッ! と大きな音がし、驚きながら視線を移す。壇上に設置していた大きな花瓶が割れ、破片や花が床に飛び散っていた。
 水浸しの床に倒れて居る人影を見て、俺は青ざめながら息を飲み、式が終わって休ませなかったことを後悔した。

「────! 実千流‼」
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