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第14幕 季節外れの天使ちゃん
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「忘れ物した!」
「えっ? 店?」
駆け寄ってきた実千流はニコッと笑い、俺に抱きつくと耳元で「ありがとう……大好き」と呟いた。
それから首に腕を巻かれ……それはもう……思い切り……。
「────ッ! ふぅッ──ンッ……ん」
「……ンッ……」
唇に齧り付くようにキスをお見舞いされた。それもディープだ。
口腔を舌で好き勝手に動き回られ、悠斗の口付けとは違う柔らかさにピキンと四方の手足を伸ばし、しばらく硬直していた俺は、実千流の肩を掴んでベリッと引き剥がし大きく息を吸い込んだ。
「──ッちょちょちょっとぉッ!」
「ふふっ、さようならの挨拶♪ 俺、意外と上手いだろ?」
実千流の宇宙人のような行動に、俺も含め皆大きく目を広げ動けずにいた。環樹先輩は急いで駆け寄ると、実千流の首根っこを掴み「アホかっ!」と言いながら、危険物のように俺から引き剥がした。
「悪いね王子……消毒しといて……。ほら、帰るぞ実千流。あとで楽しい楽しい説教だよ~♪」
「えぇ~~挨拶じゃん!」
「お前は王子を敵に回したいのか! 今後の交友関係含めて躾直しだね~」
「悠斗さんはこんなことじゃ怒らないもん! 瀬菜の唇柔らかかった~♪ じゃぁな~瀬菜~悠斗さん~♪」
引きずられるようになりながらも、大きく手を振る実千流を悠斗と二人、唖然としながら今度こそ見送った。
「……嵐みたいだな。あの様子だと先輩にいっぱい怒られるな」
「本当に元気だね。先輩もアレで甘いから……大丈夫だよ。瀬菜、俺たちも帰ろうか?」
「うん。夕飯一緒に食べるだろう?」
「瀬菜あれだけ食べたのに、まだ食べるの? そんなに食べてもオッパイにはならないと思うな」
「……お前ら……もしかして……」
「ふふっ……なんのことやら。ほら、日が暮れちゃう。買い物して帰ろう?」
ごまかす悠斗に「いつから居たんだよ!」と尋問すると、クスクスと笑うだけで教えてはくれなかった。実千流となにを話したか、まずいことを言っていないか百面相をしつつ、逃げる悠斗を追い掛けたのだった。
帰宅後、夕食を一緒に作り食べ、入浴したあとも今日の出来事を終始話していた。盛り沢山な話題は尽きることがない。
「凄くびっくりしたんだ。実千流が男だって言わなかったら気付かなかった」
「ふふっ、あの女装姿は完璧だもんね。まぁ、メイクしてなくても実千流ちゃんは中性的だし、女の子って刷り込みがあったら気付かないよ」
ベッドに寝転びダラダラする俺とは対照的に、悠斗は床に座って雑誌をパラパラと見ていた。
「すっかり仲良しさんだね」
「うん! もっといっぱい話していたかった! あぁそれと、びっくりなのは先輩だよ! まさか一緒に居るなんて思わなかった。どこでご飯食べるか言ってなかったのにさ」
ランチは場所を行き当たりばったりで決めたのだ。
悠斗には駅に着いてからのメールは送っていない。
「先輩から急に連絡が来て何事かと思ったよ。瀬菜がいる場所はすぐに分かるよ?」
「えっ? なにそれ、超怖いんだけど……。話……丸聞こえだった?」
「ううん。流石にバレるから、遠い席にしてもらったんだ。でも目の前通り過ぎても二人とも話に夢中で、気付いていなかった」
「……あっ、なんだ」
結構恋愛話をしていたので、聞かれておらず安心する。
「ふふっ、実千流ちゃん、想いが叶うといいね?」
「……うん。先輩はどう思ってるんだろ」
「どうだろうね? 先輩って心の中と行動が噛み合わないから、実際良く分からない」
「だよな。そう考えると、実千流もだよ。去年の文化祭前の先輩みたいに、突然現れて驚かすとことか。従兄弟って納得しちゃうよなー。今日だってまさかキスされるとも思ってなかった。俺思ったんだけど、実千流の女装ってさ、先輩が俺にさせた……」
視線を感じ振り返ると、悠斗が俺を不機嫌そうに見ていた。
「えっ? 店?」
駆け寄ってきた実千流はニコッと笑い、俺に抱きつくと耳元で「ありがとう……大好き」と呟いた。
それから首に腕を巻かれ……それはもう……思い切り……。
「────ッ! ふぅッ──ンッ……ん」
「……ンッ……」
唇に齧り付くようにキスをお見舞いされた。それもディープだ。
口腔を舌で好き勝手に動き回られ、悠斗の口付けとは違う柔らかさにピキンと四方の手足を伸ばし、しばらく硬直していた俺は、実千流の肩を掴んでベリッと引き剥がし大きく息を吸い込んだ。
「──ッちょちょちょっとぉッ!」
「ふふっ、さようならの挨拶♪ 俺、意外と上手いだろ?」
実千流の宇宙人のような行動に、俺も含め皆大きく目を広げ動けずにいた。環樹先輩は急いで駆け寄ると、実千流の首根っこを掴み「アホかっ!」と言いながら、危険物のように俺から引き剥がした。
「悪いね王子……消毒しといて……。ほら、帰るぞ実千流。あとで楽しい楽しい説教だよ~♪」
「えぇ~~挨拶じゃん!」
「お前は王子を敵に回したいのか! 今後の交友関係含めて躾直しだね~」
「悠斗さんはこんなことじゃ怒らないもん! 瀬菜の唇柔らかかった~♪ じゃぁな~瀬菜~悠斗さん~♪」
引きずられるようになりながらも、大きく手を振る実千流を悠斗と二人、唖然としながら今度こそ見送った。
「……嵐みたいだな。あの様子だと先輩にいっぱい怒られるな」
「本当に元気だね。先輩もアレで甘いから……大丈夫だよ。瀬菜、俺たちも帰ろうか?」
「うん。夕飯一緒に食べるだろう?」
「瀬菜あれだけ食べたのに、まだ食べるの? そんなに食べてもオッパイにはならないと思うな」
「……お前ら……もしかして……」
「ふふっ……なんのことやら。ほら、日が暮れちゃう。買い物して帰ろう?」
ごまかす悠斗に「いつから居たんだよ!」と尋問すると、クスクスと笑うだけで教えてはくれなかった。実千流となにを話したか、まずいことを言っていないか百面相をしつつ、逃げる悠斗を追い掛けたのだった。
帰宅後、夕食を一緒に作り食べ、入浴したあとも今日の出来事を終始話していた。盛り沢山な話題は尽きることがない。
「凄くびっくりしたんだ。実千流が男だって言わなかったら気付かなかった」
「ふふっ、あの女装姿は完璧だもんね。まぁ、メイクしてなくても実千流ちゃんは中性的だし、女の子って刷り込みがあったら気付かないよ」
ベッドに寝転びダラダラする俺とは対照的に、悠斗は床に座って雑誌をパラパラと見ていた。
「すっかり仲良しさんだね」
「うん! もっといっぱい話していたかった! あぁそれと、びっくりなのは先輩だよ! まさか一緒に居るなんて思わなかった。どこでご飯食べるか言ってなかったのにさ」
ランチは場所を行き当たりばったりで決めたのだ。
悠斗には駅に着いてからのメールは送っていない。
「先輩から急に連絡が来て何事かと思ったよ。瀬菜がいる場所はすぐに分かるよ?」
「えっ? なにそれ、超怖いんだけど……。話……丸聞こえだった?」
「ううん。流石にバレるから、遠い席にしてもらったんだ。でも目の前通り過ぎても二人とも話に夢中で、気付いていなかった」
「……あっ、なんだ」
結構恋愛話をしていたので、聞かれておらず安心する。
「ふふっ、実千流ちゃん、想いが叶うといいね?」
「……うん。先輩はどう思ってるんだろ」
「どうだろうね? 先輩って心の中と行動が噛み合わないから、実際良く分からない」
「だよな。そう考えると、実千流もだよ。去年の文化祭前の先輩みたいに、突然現れて驚かすとことか。従兄弟って納得しちゃうよなー。今日だってまさかキスされるとも思ってなかった。俺思ったんだけど、実千流の女装ってさ、先輩が俺にさせた……」
視線を感じ振り返ると、悠斗が俺を不機嫌そうに見ていた。
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