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第14幕 季節外れの天使ちゃん
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「……助けてくれなかったお礼」
「はぁ?」
「──ッ、だから! 助けてくれなかったお礼をして!」
「なんで俺ぇっ⁉︎ 由良りんは⁉︎ それに──」
「瀬菜に言ってるの! 明日、ランチ奢って! 白桜駅前に十二時前! 分かった!」
「ちょ、ちょっと! 斎賀さんっ!」
言いたいことだけ言うと、斎賀さんはどこかへ行ってしまった。
「……なんだよあれ……」
「さぁ、変なやつだな。俺も行くか?」
「……いや、うん平気……俺も話したいことあるし……」
まさかの展開だが、俺に突っかかる原因はなんなのか、悠斗のことを本当はどう思っているのか、聞きたいことは山積みだ。話をするには丁度いい……そう思った俺は、斎賀さんと二人で行くことを決めた。
「それより……これどうする?」
「……ほっとけ。そのうち起きるだろ」
大怪我をしていたらどうしようと思ったが、由良りんから先ほど話を聞いていた俺は、心を鬼にしてその場を立ち去った。
「ふふっ、そんなことがあったんだ」
「笑いごとかよ。一歩間違えれば傷害事件だぞ?」
「でも、そっか。実千流ちゃんがね」
「悠斗、行くなって言わないんだな。斎賀さんを信用してるのか?」
「信用とはちょっと違うかな」
「むぅーー。まさか、斎賀さんと婚約したとか言わないよな? そんでもって、俺とは愛人関係続けるから仲良くしろとか……。だから斎賀さんも俺のこと目の敵にして……」
ひとり妄想を始めた俺を楽しそうに窺ってくる悠斗。生徒会が終わり、帰宅中に悠斗に今日あったことと、明日呼び出されたことを伝えておいた。
一緒に行くと言われると思っていた俺だが、「楽しんで来てね」とあっさりとした返事に、戸惑いを隠せないでいた。
妄想が思いの外広がり、口にするつもりではなかったはずのことも呟いてしまっていた。
「凄いドラマだね? そんな泥沼愛憎劇どこで観たの?」
「俺とお前の話だ!」
「やめてよ。瀬菜を愛人にしたいだなんて思ったこともない。瀬菜は俺の特別。ちゃんと正妻として迎えるし、愛人なんて必要ないくらい、瀬菜は俺を満たしてくれるでしょ? 心でも、身体でもね」
流し目で俺を捕らえた悠斗は、瞳だけで犯してくる。
その色気はどうかやめてほしい。
「クスッ……瀬菜が嫉妬してくれてる」
「……俺だって嫉妬ぐらいする」
「うん。嬉しい……無視されるのは応えるけどね?」
「……ごめん。知らない子が悠斗と仲よさそうにして、おじいさんに気に入られて婚約成立とか、普通にありそうじゃん。俺、男だし……きっと認めてなんて貰えないだろうし」
「瀬菜、もしかして爺様に瀬菜のこと話さなかったの気にしていたの?」
「……悪いかよ……」
「ううん……悪くない。嬉しすぎる。俺の家族のことも考えてくれるんだね。瀬菜は本当に優しいね? 爺様には時期が来たらちゃんと話すよ? 瀬菜にも紹介する。だから少し待ってて欲しい」
「……うん。ありがとう。疑って……その、俺……ごめん……」
ずっと気になっていた。
悠斗が帰って来なかったあの日に、どんなことがあったのか。悠斗は大丈夫と言っていたけれど、そんな簡単なこととは思えなかった。祐一さんと佐伯さんも認めてもらえなかったのだ。悠斗に望みを託したおじいさんが、本当に引き下がってくれたのか。
どうしても引っかかってしまい、変に勘ぐって信じ切ることができない。そんな自分が情けなくて、悠斗を信じる以前に自信がなくなっていた。
「はぁ?」
「──ッ、だから! 助けてくれなかったお礼をして!」
「なんで俺ぇっ⁉︎ 由良りんは⁉︎ それに──」
「瀬菜に言ってるの! 明日、ランチ奢って! 白桜駅前に十二時前! 分かった!」
「ちょ、ちょっと! 斎賀さんっ!」
言いたいことだけ言うと、斎賀さんはどこかへ行ってしまった。
「……なんだよあれ……」
「さぁ、変なやつだな。俺も行くか?」
「……いや、うん平気……俺も話したいことあるし……」
まさかの展開だが、俺に突っかかる原因はなんなのか、悠斗のことを本当はどう思っているのか、聞きたいことは山積みだ。話をするには丁度いい……そう思った俺は、斎賀さんと二人で行くことを決めた。
「それより……これどうする?」
「……ほっとけ。そのうち起きるだろ」
大怪我をしていたらどうしようと思ったが、由良りんから先ほど話を聞いていた俺は、心を鬼にしてその場を立ち去った。
「ふふっ、そんなことがあったんだ」
「笑いごとかよ。一歩間違えれば傷害事件だぞ?」
「でも、そっか。実千流ちゃんがね」
「悠斗、行くなって言わないんだな。斎賀さんを信用してるのか?」
「信用とはちょっと違うかな」
「むぅーー。まさか、斎賀さんと婚約したとか言わないよな? そんでもって、俺とは愛人関係続けるから仲良くしろとか……。だから斎賀さんも俺のこと目の敵にして……」
ひとり妄想を始めた俺を楽しそうに窺ってくる悠斗。生徒会が終わり、帰宅中に悠斗に今日あったことと、明日呼び出されたことを伝えておいた。
一緒に行くと言われると思っていた俺だが、「楽しんで来てね」とあっさりとした返事に、戸惑いを隠せないでいた。
妄想が思いの外広がり、口にするつもりではなかったはずのことも呟いてしまっていた。
「凄いドラマだね? そんな泥沼愛憎劇どこで観たの?」
「俺とお前の話だ!」
「やめてよ。瀬菜を愛人にしたいだなんて思ったこともない。瀬菜は俺の特別。ちゃんと正妻として迎えるし、愛人なんて必要ないくらい、瀬菜は俺を満たしてくれるでしょ? 心でも、身体でもね」
流し目で俺を捕らえた悠斗は、瞳だけで犯してくる。
その色気はどうかやめてほしい。
「クスッ……瀬菜が嫉妬してくれてる」
「……俺だって嫉妬ぐらいする」
「うん。嬉しい……無視されるのは応えるけどね?」
「……ごめん。知らない子が悠斗と仲よさそうにして、おじいさんに気に入られて婚約成立とか、普通にありそうじゃん。俺、男だし……きっと認めてなんて貰えないだろうし」
「瀬菜、もしかして爺様に瀬菜のこと話さなかったの気にしていたの?」
「……悪いかよ……」
「ううん……悪くない。嬉しすぎる。俺の家族のことも考えてくれるんだね。瀬菜は本当に優しいね? 爺様には時期が来たらちゃんと話すよ? 瀬菜にも紹介する。だから少し待ってて欲しい」
「……うん。ありがとう。疑って……その、俺……ごめん……」
ずっと気になっていた。
悠斗が帰って来なかったあの日に、どんなことがあったのか。悠斗は大丈夫と言っていたけれど、そんな簡単なこととは思えなかった。祐一さんと佐伯さんも認めてもらえなかったのだ。悠斗に望みを託したおじいさんが、本当に引き下がってくれたのか。
どうしても引っかかってしまい、変に勘ぐって信じ切ることができない。そんな自分が情けなくて、悠斗を信じる以前に自信がなくなっていた。
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