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第14幕 季節外れの天使ちゃん
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心の中でぼやいていると、由良りんが思い出したように言った。
「……俺あいつ知ってるわ……。結構遊び人で、相手取っ替え引っ替えしてるぞ。名前は確か……忘れた。あんまりいい噂は聞いたことねぇ」
「……それって……」
「ほら、真ん中に居る一番背の高い奴。一度寝たらポイするんだと。元カノも引っかかりそうになったって怒っていたな。歩く下半身野郎ってな」
「最低だな」
「……ヤナも気を付けろ?」
「え、いや……俺、一応男だから……」
「ああ、それ意味ねぇ。あいつバイだし。可愛い綺麗で好みなら男でもなんでもありだ。知らねぇの? バイセクシャルって聞いたことねぇ?」
ブンブンと首を横に振る。
世の中には俺の知らないことがまだまだ沢山あるようだ。
「聞いた話じゃ、数こなしてるだけあってテクは半端ないらしいぜ? 快感に抗えなくなるんだと。中には乱交に持ち込まれた子も居るらしいぜ?」
「それ……問題にならないのかよ……」
「最終的になぜか合意で堕ちるらしい。まぁ、そういう相手に声かけてんだろ。まぁツラはいいし、一夜でもいいってやつはいる。けどお前は見掛けたら逃げろ。口車にすぐに引っかかる鈍感だし、あと敏感だしよ」
「……敏感は関係ないだろ⁉︎ それにビッチじゃねぇ‼︎」
由良りんは俺にニヤッとしながら、卑猥なものを見るように快感に弱そうだと無言で伝えてくる。
俺だって相手によるわ!
……快感には弱いかもだけど……。
それは悠斗だけ! 悠斗にだけ! 悠斗以外に経験ないけど……。
ひとり百面相をしていると、女の子の大きな声が中庭を駆け抜けた。
「いい加減にしてください! 私急いでいるんです!」
被害者の女の子が痺れを切らしたように大声をあげたのだ。声が中庭に響き渡る。その声に焦ったのか、歩く下半身男が壁に押さえつけるように、女の子の口を手のひら塞いだ。くぐもった声が、苦しそうで由良りんと目で合図し合うと立ち上がった。
「──やめっ! やめろって言っているだろがッ!」
……っと言ったのは、俺でも由良りんでもありませんでした。
もちろん茶髪イケメンのどなたかでも御座いません。
巻き舌気味のオラオラ声で、一瞬誰が声を発したの? と思うほど、殺気立った声を上げた女の子は、俺達が助け出す前に驚く素早さを披露してくれた。
「お前らマジでしつこいんだよッ! 優しくしてれば付け上がりやがって! その下品なちんこ切り落とすぞッ!」
そう言いながら地面に落ちている落ち葉を踏むように、イケメン男子を踏み付けていた。女の子とは思えない怪力で、時間にしたら数秒の出来事。複数の男子をあっという間に地面に叩きつけたのだ。
「楽しいことしようだと? 相手見て挑めってんだ!」
何度も背中を足蹴にする凄まじい姿になにもできずに放心していると、由良りんが止めに入ってくれた。
「……おい、それぐらいにしとけ。パンツ……見えてるぞ……」
「──ぎゃぁッ! 見ていたなら助けなさいよ!」
「……助けなんて必要ねぇだろ。お前さ、二重人格なの?」
男顔負けの体術を見せたのは、転校してきたばかりの天使と名高い斎賀さんだった。
「違うわよッ!」
「……それにしても、怪力だね? 完全伸び切ってるけど……」
「ふんっ、どちらが悪いなんて明白でしょ? それよりいい加減、手離して……」
「……はいよ」
由良りんにバツが悪そうにそう言うと、身なりを整える斎賀さん。俺よりも強いのかもしれない。確かに二重人格と言われてもおかしくないほど普段とかけ離れている。
斎賀さんは一呼吸つくと、俺の前にズンズンと進んで来る。俺も足蹴にされる? と身構えると、意味不明なことを言ってきた。
「……俺あいつ知ってるわ……。結構遊び人で、相手取っ替え引っ替えしてるぞ。名前は確か……忘れた。あんまりいい噂は聞いたことねぇ」
「……それって……」
「ほら、真ん中に居る一番背の高い奴。一度寝たらポイするんだと。元カノも引っかかりそうになったって怒っていたな。歩く下半身野郎ってな」
「最低だな」
「……ヤナも気を付けろ?」
「え、いや……俺、一応男だから……」
「ああ、それ意味ねぇ。あいつバイだし。可愛い綺麗で好みなら男でもなんでもありだ。知らねぇの? バイセクシャルって聞いたことねぇ?」
ブンブンと首を横に振る。
世の中には俺の知らないことがまだまだ沢山あるようだ。
「聞いた話じゃ、数こなしてるだけあってテクは半端ないらしいぜ? 快感に抗えなくなるんだと。中には乱交に持ち込まれた子も居るらしいぜ?」
「それ……問題にならないのかよ……」
「最終的になぜか合意で堕ちるらしい。まぁ、そういう相手に声かけてんだろ。まぁツラはいいし、一夜でもいいってやつはいる。けどお前は見掛けたら逃げろ。口車にすぐに引っかかる鈍感だし、あと敏感だしよ」
「……敏感は関係ないだろ⁉︎ それにビッチじゃねぇ‼︎」
由良りんは俺にニヤッとしながら、卑猥なものを見るように快感に弱そうだと無言で伝えてくる。
俺だって相手によるわ!
……快感には弱いかもだけど……。
それは悠斗だけ! 悠斗にだけ! 悠斗以外に経験ないけど……。
ひとり百面相をしていると、女の子の大きな声が中庭を駆け抜けた。
「いい加減にしてください! 私急いでいるんです!」
被害者の女の子が痺れを切らしたように大声をあげたのだ。声が中庭に響き渡る。その声に焦ったのか、歩く下半身男が壁に押さえつけるように、女の子の口を手のひら塞いだ。くぐもった声が、苦しそうで由良りんと目で合図し合うと立ち上がった。
「──やめっ! やめろって言っているだろがッ!」
……っと言ったのは、俺でも由良りんでもありませんでした。
もちろん茶髪イケメンのどなたかでも御座いません。
巻き舌気味のオラオラ声で、一瞬誰が声を発したの? と思うほど、殺気立った声を上げた女の子は、俺達が助け出す前に驚く素早さを披露してくれた。
「お前らマジでしつこいんだよッ! 優しくしてれば付け上がりやがって! その下品なちんこ切り落とすぞッ!」
そう言いながら地面に落ちている落ち葉を踏むように、イケメン男子を踏み付けていた。女の子とは思えない怪力で、時間にしたら数秒の出来事。複数の男子をあっという間に地面に叩きつけたのだ。
「楽しいことしようだと? 相手見て挑めってんだ!」
何度も背中を足蹴にする凄まじい姿になにもできずに放心していると、由良りんが止めに入ってくれた。
「……おい、それぐらいにしとけ。パンツ……見えてるぞ……」
「──ぎゃぁッ! 見ていたなら助けなさいよ!」
「……助けなんて必要ねぇだろ。お前さ、二重人格なの?」
男顔負けの体術を見せたのは、転校してきたばかりの天使と名高い斎賀さんだった。
「違うわよッ!」
「……それにしても、怪力だね? 完全伸び切ってるけど……」
「ふんっ、どちらが悪いなんて明白でしょ? それよりいい加減、手離して……」
「……はいよ」
由良りんにバツが悪そうにそう言うと、身なりを整える斎賀さん。俺よりも強いのかもしれない。確かに二重人格と言われてもおかしくないほど普段とかけ離れている。
斎賀さんは一呼吸つくと、俺の前にズンズンと進んで来る。俺も足蹴にされる? と身構えると、意味不明なことを言ってきた。
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