王子×悪戯戯曲

そら汰★

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第14幕 季節外れの天使ちゃん

08

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「でよ。お前らナニ? 夫婦喧嘩なら二人のときにしろ」
「まだ冬にもなってないのに、雪が降ってるよね~」
「どうせユウが原因だろ? ヤナは理由もなしに怒らねぇし」
「……俺は別に……」
「……別にだと? 浮気者!」
「違うってば。浮気なんてしていないよ」
「ああ、あの子な。すっかりクラスのマスコットだぜ」
「取り敢えず謝れ」
「だから、謝った。……それに今の瀬菜に話ても、信じてくれないもん」

 しゅんとする悠斗に、自分がいじめている気分にさせられる。

「──そっ、そんなことないし。悠斗がなにも言わないから変に勘繰っちゃうんじゃんか……」
「ならさ、王子の言い分ちゃんと聞いてあげようよ~♪ 勘違いはよくないし。そんじゃ王子納得するように説明を!」

 昼休み屋上でランチをすると、俺と悠斗のよそよそしさにみんな耐えきれずに口を挟んだ。普段放っておくみんなは、今回ばかりはよろしくないと感じたようだ。俺自身も昨日強い口調で言ってしまい、どう接したらいいかタイミングを逃していた。
 多澤がそんな空気を裂くと、便乗するように村上も由良りんも俺達の仲を取り持ってくれた。

「実千流ちゃんとは、たまたま食事会で一度会っただけなんだ。夏休みに入ってすぐ爺様の古くからの知人に紹介したいって。店に着いたら白桜南の理事長で、俺もびっくりした。そのときに一緒に来てたのが実千流ちゃん」
「……一度会っただけ? ずいぶん気に入られたな」

 黙っていようと思っていたが、ついつい嫌味を口にしてしまう。

「それは……この学校で知り合いも居なくて心細かったんだよ。それに今日はそんな素振りなかったでしょ? 近寄っても来なかった」
「──それは……そう……だけど……」

 言われてみれば、同じクラスになったと言うのに、斎賀さんは悠斗に話し掛けてくることもなかった。クラス中が新しい仲間に夢中で、人が集まり質問攻めで斎賀さん自身、余裕がなかったとは思う。
 昨日、生徒会室の扉の前で、困っていた姿が脳裏に浮かぶ。

「悠斗が言ってること嘘じゃねぇよ。年中お前に盛ってて、他人に気取られてる暇なんてないだろ。お前はなにを見ているんだ」
「ははは……俺もそう思う。てかさ、柳ちゃんだってカナちゃんとたまにベッタリじゃん。王子のことばっかり攻められないよ?」
「ひっでぇ! 俺はヤナと友達として付き合ってんだ! わきまえてるっつーの!」

 村上の的を得た言葉にギクッとする。
 好意を持たれているのは、状況は違えど確かに同じだ。

「爺様に呼び出されてから瀬菜に連絡も取れなくて、凄く落ち込んでた。同じ歳ってこともあったけど、実千流ちゃんに瀬菜のこといっぱい話した。それだけで俺、瀬菜が近くに居る気がして元気になれたんだ。それに実千流ちゃんは、瀬菜と仲良しになれるって実感したんだ」
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