王子×悪戯戯曲

そら汰★

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第13幕 ひとりぼっち

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 テーブルにお誕生日のお祝いのメッセージカードも置かれており、自分の誕生日を改めて実感する。着替えもせずに食べる優雅な夕食は、贅沢以外に当てはまるものはない。

「妖精さんでも居るのかって思っちゃった」
「ふふっ、素敵な妖精さんだね。お誕生日おめでとう。瀬菜の一年が今年も幸せでありますように」
「へへっ、ありがとう♪」

 チンッとグラスを合わせ、炭酸水でそれっぽく乾杯をする。冷えた炭酸が口の中でシュワシュワと弾け、お風呂上がりで火照った身体に丁度良く染み込んでいく。

「それで悠斗……取り引きって?」
「爺様は渋々だったけど、俺が将来リッカに携わること。但し条件は祐一さんが社長になるのが前提。それ以外は知りませんってね」
「それで納得するのか? だってジャイ○ンみたいな爺ちゃんだろ?」
「爺様が横暴なら、俺も相当横暴だよ。俺がリッカに入るんだ。それぐらい譲歩してくれないと。だいたいファミリー経営していたら、ゆくゆくは経営が立ち回らなくなる。新しい風を取り入れるのも必要だよ」

 悠斗はそう言い、グラスを傾ける。その堂々とした姿に、俺は呆れてしまう。

「お前は高校生なのか? 悠斗はほかに、やりたいことあったの?」
「大きな夢はないけど、同族経営で経験は積めないかなって。あっ、でも経営には興味ある。小さい会社でもいいんだ。それでね、いずれ歳をとったら、瀬菜と話し合って小さなお店を開きたい。海か山の自然に囲まれて、時間に追われず二人でゆっくり過ごしたいんだ。ふんわりとした細やかな夢だよ」

 悠斗の言葉に俺はしばらくキョトンとしながら固まると、どんどん赤く顔を火照らせてしまう。今日は一体何度プロポーズみたいなことを言われるのだろう。
 一緒に居たいと俺も確かに思っていたが、悠斗ほど現実味はなかった。悠斗の話で目の前に自分達の未来の光景が、パッと広がったのだ。

「……瀬菜?」

 首をブンブンと振り目の前の食事に視線を彷徨わせ、ガツガツと食べ始める俺に、悠斗はスッと手を伸ばしてくる。頰に触れた悠斗の指先にビクッとなり、視線を合わせると唇を舐めながら俺を見つめていた。

「……な、なんだよ……」
「ん?」
「……お前も早く食べろ」
「うん。いつも思うけど、瀬菜が美味しそうに食べている姿って、凄くいいよね。俺も食べたくなっちゃう」

 なっ、なんだ‼
 食べるのにその変な色気はいらねぇだろ‼
 しばらく会っていない間に、俺の免疫落ちているのか⁉

「だ、だから食えばいいだろ?」
「あ~ん♡」
「あ~ん? って! それは俺のだぞ‼ 最後に取っておいたのにぃ~~‼」

 俺がフォークに刺していたクレソンが、悠斗の口の中に無残にも消えていく。クレソン? って思うかもしれないが、苦味があって意外と美味しい付け合わせなのだ。
 恨めしそうにフルフル震え悠斗にクレソンの存在を伝えれば、肩を震わせながら大爆笑している。
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