王子×悪戯戯曲

そら汰★

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第13幕 ひとりぼっち

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「なぁ、肉……硬くなっちゃうぞ?」
「……ん、そっ、そうだよね! うわっっあっちぃぃ~~‼」

 上げた肉が鍋に落ち、跳ねた熱湯が村上の手の甲に当たっていた。

「……大丈夫か?」
「う、うん大丈夫……ってぇ‼ それはこっちのセリフだよ」
「えっ? なにが?」
「……あの……一応、違うと思うけど確認。……その……さ……」

 村上は箸を置き下を向いたままチラチラと俺を見てくる。口がパクパクと動き、言葉を選んでいるようだ。

「……別れた……とかじゃないよね?」
「えっ……そうなの?」
「あっ、そっか違うか……」
「俺、知らない間に振られたの?」
「イヤイヤ、ちょい待ち! 変な空気になってる。振られてないし別れてないと思うよ。柳ちゃん、今日までの経緯話して」

 村上の言葉に凹む俺に、これまでの経緯を話した。悠斗のおじいさんのことや、最近おかしかった悠斗の様子、祐一さんのことも当たり障りなく少しだけ。
 村上は俺の話に時折相槌を打って、話が終わる頃には少し怒った顔をしていた。

「……なんで今まで連絡くれなかったの」
「んー……俺もまさかこんなことになるとは思っていなくて」
「柳ちゃんってさ。辛いときほど無理に普通になろうとするよね。それに相変わらず人に頼ろうとしない」
「……だってさ、明日には悠斗が帰って来るって……毎日そう思ってて」
「うわぁ~健気過ぎて涙出そうなんですけど……連絡はしてみたの?」
「してない。返信来なかったら凹むし。あいつのことだから連絡もできない状況ってことだろ?」
「確かに……あの王子が柳ちゃんに連絡もしないってよっぽど……」

 豆な悠斗が連絡してこないということは、おそらくその余裕すらないはずだ。

「どうしよう……このまま本当に戻って来なかったら……」
「必ず戻って来るよ。流石に高校生でいきなり跡を継げなんて言われても困る訳だし、きっとなにかしら王子には考えがあるはず。気晴らしなら俺がいつでも付き合うし」
「うん……そうだよな。あいつ物腰は柔らかいけど、結構自分の意思はブレないもんな。ありがとう村上。……はぁ、なんか話したらスッキリした! 時間まで食べるの再開!」
「うんうん。食べて発散しよう~!」

 お代わりのお肉を追加して、野菜も取りに行く。三大欲求の食で幸福感を満たしながら、村上と夏休みの予定も立てたりした。休みはあっという間とはいえ、まだ一ヶ月以上はあるのだ。
 満喫しないなど勿体ない。そう思っても心の奥底で、チラチラと悠斗の顔がどうしても浮かんでしまうのだった。

 待つっきゃないか……。
 俺にできることは今はそれだけ……。
 普段通りに笑顔で迎えられるように。
 悠斗が休まる場所をいつでも作っておかないと。

 呪文のように自分に言い聞かせながら、寂しい気持ちをごまかし続けた。
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