429 / 716
第13幕 ひとりぼっち
07
しおりを挟む
ズーンと沈む大きな背中をポンポンと叩き元気付ける。
「……由良りん、元気出せよ。俺なんて苦手なことばっかりだぞ?」
「ふははっ、マジウケる」
「柳ちゃんが助けて~って帰って来たときにはビックリしたけど」
お宝をゲットしたあと、俺と由良りんは本当に怪奇現象に見舞われた。中庭を挟んだ向かいの校舎でそれはポワッと浮び上り、行ったり来たりすると一瞬で消えた。
「俺もビックリした。あれは火の玉だった!」
「それで失神かよ」
「いやぁ~、青春の一ページだね。ドンマイ、カナちゃん!」
「……カッコ悪……」
生徒会室に由良りんを多澤と村上に運んでもらい、現在由良りんを介抱してます。
頑張って入手したお宝は、割に合わない手持ち花火セットだった。どうやらそれぞれ異なるお宝で、当たりとハズレがあるようだ。
「悠斗達遅くね?」
「俺らより早く出たよな」
「まぁ、あの二人だからね……ははっ」
ドドドド……っ! と凄い足音で駆け込んで来る悠斗と環樹先輩。ハァハァと荒い息を吐きながら、なにやら言い争っている。
「このクソ会長! くだらない策略は本当にピカイチだ!」
「やだな~……ハァハァ、君は分かっていない! あのお宝がいかに大切だったか!」
なにやってんだよ……。
仲良いのか悪いのか……。
「姫乃ちゃん! 王子ってば酷いんだ~。僕のロマンを燃やしたぁ!」
「あんなの一瞬で燃やしますよ! これ以上ちょっかい出すのやめてください!」
燃やしたんだ……ロマンとやらを……。
一瞬で……で、由良りんこうなっちゃったんだ……。
由良りんには内緒にしておこう……。
「……でさ、ロマンてなんだったんだ?」
「ん? チケットだったんだけど、柳瀬菜に好きな格好をさせられる券とデート券」
「……あっ、うん。燃やしてくれてありがとう」
「なんで~。王子だって使えたじゃ~ん」
「馬鹿ですか⁉ 僕はそんな券なくても好き放題できるんですよ!」
…………。
いや……悠斗くん。君でも好き放題はできないよ?
結局当たりを引いたのは、多澤と咲ちゃん先輩ペアの食券一ヶ月分だった。村上と橋口先輩のペアは、会長を休ませる券でその後密かに燃やされた。
俺と由良りんはトラブルがあったものの、まだましなお宝だったのかもしれない。
夏休み前の束の間のお祭り騒ぎは、こうして幕を閉じたのだった。
家に帰宅する頃には、だいぶいい時間になっていた。
「はぁ~結構楽しかった!」
「ふふっ、こんなにはしゃいだの久々だね」
「この花火、夏休み中にみんなでやろうな!」
「うん」
「今日泊まっていく?」
「そのつもり。疲れた?」
「ううん。大丈夫。明日から休みだし、夜更かしできるよ?」
「クスッ、瀬菜は起きていられるかなー」
コンビニで食材を買い込み、帰宅する途中で見慣れた車が家のほうから出てきた。車は俺達の前で緩やかに停車し、運転席の窓がゆっくりと降りた。
「……父さん……」
「おじさん、こんばんは」
「こんばんは、瀬菜君。悠斗、丁度お前を迎えに行こうと。おそらく大丈夫だと思うんだが……お祖父さんが倒れた。お前も一緒に連れて来てくれと、兄さんから連絡が」
「……そう……ですか。……瀬菜、約束守れなくてごめん。戻ったら必ず話すから待っててくれる? 落ち着いたら連絡する」
「う、うん。俺はいいから早く行ってやれよ」
「悪いね……瀬菜君」
悠斗は俺の頭を撫でると、悲しそうな面持ちで「家に入るまで気を付けて」と言い車に乗り込んだ。走り出す車のバックライトを眺めながら、俺も悠斗の家族の大事に心が痛んだ。まだ若いとはいえ、倒れたとなれば心配だ。
何事もなければいいけどと、何度か車が走り去った方向を振り返り家へと入った。
「……由良りん、元気出せよ。俺なんて苦手なことばっかりだぞ?」
「ふははっ、マジウケる」
「柳ちゃんが助けて~って帰って来たときにはビックリしたけど」
お宝をゲットしたあと、俺と由良りんは本当に怪奇現象に見舞われた。中庭を挟んだ向かいの校舎でそれはポワッと浮び上り、行ったり来たりすると一瞬で消えた。
「俺もビックリした。あれは火の玉だった!」
「それで失神かよ」
「いやぁ~、青春の一ページだね。ドンマイ、カナちゃん!」
「……カッコ悪……」
生徒会室に由良りんを多澤と村上に運んでもらい、現在由良りんを介抱してます。
頑張って入手したお宝は、割に合わない手持ち花火セットだった。どうやらそれぞれ異なるお宝で、当たりとハズレがあるようだ。
「悠斗達遅くね?」
「俺らより早く出たよな」
「まぁ、あの二人だからね……ははっ」
ドドドド……っ! と凄い足音で駆け込んで来る悠斗と環樹先輩。ハァハァと荒い息を吐きながら、なにやら言い争っている。
「このクソ会長! くだらない策略は本当にピカイチだ!」
「やだな~……ハァハァ、君は分かっていない! あのお宝がいかに大切だったか!」
なにやってんだよ……。
仲良いのか悪いのか……。
「姫乃ちゃん! 王子ってば酷いんだ~。僕のロマンを燃やしたぁ!」
「あんなの一瞬で燃やしますよ! これ以上ちょっかい出すのやめてください!」
燃やしたんだ……ロマンとやらを……。
一瞬で……で、由良りんこうなっちゃったんだ……。
由良りんには内緒にしておこう……。
「……でさ、ロマンてなんだったんだ?」
「ん? チケットだったんだけど、柳瀬菜に好きな格好をさせられる券とデート券」
「……あっ、うん。燃やしてくれてありがとう」
「なんで~。王子だって使えたじゃ~ん」
「馬鹿ですか⁉ 僕はそんな券なくても好き放題できるんですよ!」
…………。
いや……悠斗くん。君でも好き放題はできないよ?
結局当たりを引いたのは、多澤と咲ちゃん先輩ペアの食券一ヶ月分だった。村上と橋口先輩のペアは、会長を休ませる券でその後密かに燃やされた。
俺と由良りんはトラブルがあったものの、まだましなお宝だったのかもしれない。
夏休み前の束の間のお祭り騒ぎは、こうして幕を閉じたのだった。
家に帰宅する頃には、だいぶいい時間になっていた。
「はぁ~結構楽しかった!」
「ふふっ、こんなにはしゃいだの久々だね」
「この花火、夏休み中にみんなでやろうな!」
「うん」
「今日泊まっていく?」
「そのつもり。疲れた?」
「ううん。大丈夫。明日から休みだし、夜更かしできるよ?」
「クスッ、瀬菜は起きていられるかなー」
コンビニで食材を買い込み、帰宅する途中で見慣れた車が家のほうから出てきた。車は俺達の前で緩やかに停車し、運転席の窓がゆっくりと降りた。
「……父さん……」
「おじさん、こんばんは」
「こんばんは、瀬菜君。悠斗、丁度お前を迎えに行こうと。おそらく大丈夫だと思うんだが……お祖父さんが倒れた。お前も一緒に連れて来てくれと、兄さんから連絡が」
「……そう……ですか。……瀬菜、約束守れなくてごめん。戻ったら必ず話すから待っててくれる? 落ち着いたら連絡する」
「う、うん。俺はいいから早く行ってやれよ」
「悪いね……瀬菜君」
悠斗は俺の頭を撫でると、悲しそうな面持ちで「家に入るまで気を付けて」と言い車に乗り込んだ。走り出す車のバックライトを眺めながら、俺も悠斗の家族の大事に心が痛んだ。まだ若いとはいえ、倒れたとなれば心配だ。
何事もなければいいけどと、何度か車が走り去った方向を振り返り家へと入った。
0
お気に入りに追加
235
あなたにおすすめの小説
俺のこと、冷遇してるんだから離婚してくれますよね?〜王妃は国王の隠れた溺愛に気付いてない〜
明太子
BL
伯爵令息のエスメラルダは幼い頃から恋心を抱いていたレオンスタリア王国の国王であるキースと結婚し、王妃となった。
しかし、当のキースからは冷遇され、1人寂しく別居生活を送っている。
それでもキースへの想いを捨てきれないエスメラルダ。
だが、その思いも虚しく、エスメラルダはキースが別の令嬢を新しい妃を迎えようとしている場面に遭遇してしまう。
流石に心が折れてしまったエスメラルダは離婚を決意するが…?
エスメラルダの一途な初恋はキースに届くのか?
そして、キースの本当の気持ちは?
分かりづらい伏線とそこそこのどんでん返しありな喜怒哀楽激しめ王妃のシリアス?コメディ?こじらせ初恋BLです!
※R指定は保険です。
告白してきたヤツを寝取られたらイケメンαが本気で囲ってきて逃げられない
ネコフク
BL
【本編完結・番外編更新中】ある昼過ぎの大学の食堂で「瀬名すまない、別れてくれ」って言われ浮気相手らしき奴にプギャーされたけど、俺達付き合ってないよな?
それなのに接触してくるし、ある事で中学から寝取ってくる奴が虎視眈々と俺の周りのαを狙ってくるし・・・俺まだ誰とも付き合う気ないんですけど⁉
だからちょっと待って!付き合ってないから!「そんな噂も立たないくらい囲ってやる」って物理的に囲わないで!
父親の研究の被験者の為に誰とも付き合わないΩが7年待ち続けているαに囲われちゃう話。脇カプ有。
オメガバース。α×Ω
※この話の主人公は短編「番に囲われ逃げられない」と同じ高校出身で短編から2年後の話になりますが交わる事が無い話なのでこちらだけでお楽しみいただけます。
※大体2日に一度更新しています。たまに毎日。閑話は文字数が少ないのでその時は本編と一緒に投稿します。
※本編が完結したので11/6から番外編を2日に一度更新します。
告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした
雨宮里玖
BL
《あらすじ》
昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。
その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。
その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。
早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。
乃木(18)普通の高校三年生。
波田野(17)早坂の友人。
蓑島(17)早坂の友人。
石井(18)乃木の友人。
後天性オメガの近衛騎士は辞職したい
栄円ろく
BL
ガーテリア王国の第三王子に仕える近衛騎士のイアン・エバンズは、二年前に突如ベータからオメガに性転換した。その影響で筋力が低下したのもあり、主人であるロイ・ガーテリアに「運命の番を探して身を固めたい」と辞職を申し出た。
ロイは王族でありながら魔花と呼ばれる植物の研究にしか興味がない。ゆえに、イアンの辞職もすぐに受け入れられると思ったが、意外にもロイは猛烈に反対してきて……
「運命の番を探すために辞めるなら、俺がそれより楽しいことを教えてやる!」
その日からイアンは、なぜかロイと一緒にお茶をしたり、魔花の研究に付き合うことになり……??
植物学者でツンデレな王子様(23歳)×元ベータで現オメガの真面目な近衛騎士(24歳)のお話です。
ふしだらオメガ王子の嫁入り
金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか?
お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。
元会計には首輪がついている
笹坂寧
BL
【帝華学園】の生徒会会計を務め、無事卒業した俺。
こんな恐ろしい学園とっとと離れてやる、とばかりに一般入試を受けて遠く遠くの公立高校に入学し、無事、魔の学園から逃げ果すことが出来た。
卒業式から入学式前日まで、誘拐やらなんやらされて無理くり連れ戻されでもしないか戦々恐々としながら前後左右全ての気配を探って生き抜いた毎日が今では懐かしい。
俺は無事高校に入学を果たし、無事毎日登学して講義を受け、無事部活に入って友人を作り、無事彼女まで手に入れることが出来たのだ。
なのに。
「逃げられると思ったか?颯夏」
「ーーな、んで」
目の前に立つ恐ろしい男を前にして、こうも身体が動かないなんて。
家を追い出されたのでツバメをやろうとしたら強面の乳兄弟に反対されて困っている
香歌奈
BL
ある日、突然、セレンは生まれ育った伯爵家を追い出された。
異母兄の婚約者に乱暴を働こうとした罪らしいが、全く身に覚えがない。なのに伯爵家当主となっている異母兄は家から締め出したばかりか、ヴァーレン伯爵家の籍まで抹消したと言う。
途方に暮れたセレンは、年の離れた乳兄弟ギーズを頼ることにした。ギーズは顔に大きな傷跡が残る強面の騎士。悪人からは恐れられ、女子供からは怯えられているという。でもセレンにとっては子守をしてくれた優しいお兄さん。ギーズの家に置いてもらう日々は昔のようで居心地がいい。とはいえ、いつまでも養ってもらうわけにはいかない。しかしお坊ちゃん育ちで手に職があるわけでもなく……。
「僕は女性ウケがいい。この顔を生かしてツバメをしようかな」「おい、待て。ツバメの意味がわかっているのか!」美貌の天然青年に振り回される強面騎士は、ついに実力行使に出る?!
僕は貴方の為に消えたいと願いながらも…
夢見 歩
BL
僕は運命の番に気付いて貰えない。
僕は運命の番と夫婦なのに…
手を伸ばせば届く距離にいるのに…
僕の運命の番は
僕ではないオメガと不倫を続けている。
僕はこれ以上君に嫌われたくなくて
不倫に対して理解のある妻を演じる。
僕の心は随分と前から血を流し続けて
そろそろ限界を迎えそうだ。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
傾向|嫌われからの愛され(溺愛予定)
━━━━━━━━━━━━━━━
夢見 歩の初のBL執筆作品です。
不憫受けをどうしても書きたくなって
衝動的に書き始めました。
途中で修正などが入る可能性が高いので
完璧な物語を読まれたい方には
あまりオススメできません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる