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第12幕 修学旅行はお遊びではありません
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俺が止めた表示は六秒五三。由良りんも下手くそで俺と大差なかった。結局ベッドをゲットしたのは多澤と村上だった。悠斗もいい秒数で止めてはいるものの、コンマ以降の秒数で二人にベッドを明け渡すことに。
「んじゃ、遠慮なく~♪」
「そこの三人。くれぐれも変な気起こすなよ」
「変な気ってなんだよ!」
「カナちゃん。ここからこっちに入ってこないでね?」
「なんだよこの隙間は! もっと寄せろ!」
悠斗と由良りんの攻防に、多澤は「とっとと寝ちまえ」とげんなりし、村上は「また始まった」と笑いながら自分の安眠のための巣作りをしている。
俺は悠斗と由良りんに挟まれ、布団に乗りながら右へ左へと揺さぶられていた。
なんだろ……吐きそう……。
絶対この組み合わせ良くない……。
「瀬菜は俺と一緒に寝るの!」
「ユウと一緒? お前襲うつもりだろ! ヤナ早めに避難だぞ?」
「ちょ、ちょっと。もうやめてよ! 俺あっちで離れて寝るのから! 悠斗と由良りん二人くっついて寝ろよ」
「「あり得ない!」」
変なところでピッタリ息が合う二人をジロッと睨むと、降参とばかりに俺から少し隙間を空けて左右に陣取りテリトリーを築いていた。
ただ寝る場所を決めるだけで、こんなに騒ぎになるとは思っていない俺はグッタリだ。横になるとすぐに眠気が訪れる。ただ、左右からの視線と圧力に金縛りにあったように唸ることになったのは、言うまでもない……。
***
身体妙な圧迫を感じ、唸りながら目を覚ます。最初に目にしたのは天井。ボーッと見慣れない天井に寝起きの頭が整理を始めると、ここが修学旅行で宿泊中の旅館だと理解する。
いばらのように左右から身体に巻きつくものに視線を向けると、そっとため息を吐く。
珍しく一番早く目覚めたのはこの重みのせいだ。シーンと静まる室内に、時折衣擦れの音が鳴り、外から鳥のさえずりが聞こえてくる。
隣でモゾモゾと動き出す物体にビクッと身体を跳ねさせると、俺を見る悠斗の視線と絡まった。
なにかを言いたそうにしながら、起き上がる悠斗に自分から仕出かしたことじゃないと声を出そうとすると、頰を撫でられ「喋らないで」とでも言うようにそっと唇を塞がれた。
悠斗のキスで俺の眠気は一気に覚めていく。騒いで見られたらたまったものではない。大人しく口腔を明け渡すと、無遠慮に愛撫され瞳に涙が溜まってしまう。
離れていく悠斗の唇に、涙目で睨みつければ、意地悪そうな顔で朝から色気を振り撒く悠斗に、叫び声を上げたくなる。
由良りんが起きたらどうするんだ!
俺の腰に腕を回す由良りんをそっと見ると、スースーと寝息を立てかなり深い眠りに就いている様子だ。起きる気配がないことにホッとする。
悠斗は由良りんの拘束から俺を解放すると、静かに自身の方へ引き寄せた。ぽすんと悠斗の胸にスッポリ収まると、ギュッと抱きしめられスリスリと悠斗が甘えている。
俺の耳元で「外行こ」と呟くと、そのまま手を引かれ部屋の外へと連れ出された。
「んじゃ、遠慮なく~♪」
「そこの三人。くれぐれも変な気起こすなよ」
「変な気ってなんだよ!」
「カナちゃん。ここからこっちに入ってこないでね?」
「なんだよこの隙間は! もっと寄せろ!」
悠斗と由良りんの攻防に、多澤は「とっとと寝ちまえ」とげんなりし、村上は「また始まった」と笑いながら自分の安眠のための巣作りをしている。
俺は悠斗と由良りんに挟まれ、布団に乗りながら右へ左へと揺さぶられていた。
なんだろ……吐きそう……。
絶対この組み合わせ良くない……。
「瀬菜は俺と一緒に寝るの!」
「ユウと一緒? お前襲うつもりだろ! ヤナ早めに避難だぞ?」
「ちょ、ちょっと。もうやめてよ! 俺あっちで離れて寝るのから! 悠斗と由良りん二人くっついて寝ろよ」
「「あり得ない!」」
変なところでピッタリ息が合う二人をジロッと睨むと、降参とばかりに俺から少し隙間を空けて左右に陣取りテリトリーを築いていた。
ただ寝る場所を決めるだけで、こんなに騒ぎになるとは思っていない俺はグッタリだ。横になるとすぐに眠気が訪れる。ただ、左右からの視線と圧力に金縛りにあったように唸ることになったのは、言うまでもない……。
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身体妙な圧迫を感じ、唸りながら目を覚ます。最初に目にしたのは天井。ボーッと見慣れない天井に寝起きの頭が整理を始めると、ここが修学旅行で宿泊中の旅館だと理解する。
いばらのように左右から身体に巻きつくものに視線を向けると、そっとため息を吐く。
珍しく一番早く目覚めたのはこの重みのせいだ。シーンと静まる室内に、時折衣擦れの音が鳴り、外から鳥のさえずりが聞こえてくる。
隣でモゾモゾと動き出す物体にビクッと身体を跳ねさせると、俺を見る悠斗の視線と絡まった。
なにかを言いたそうにしながら、起き上がる悠斗に自分から仕出かしたことじゃないと声を出そうとすると、頰を撫でられ「喋らないで」とでも言うようにそっと唇を塞がれた。
悠斗のキスで俺の眠気は一気に覚めていく。騒いで見られたらたまったものではない。大人しく口腔を明け渡すと、無遠慮に愛撫され瞳に涙が溜まってしまう。
離れていく悠斗の唇に、涙目で睨みつければ、意地悪そうな顔で朝から色気を振り撒く悠斗に、叫び声を上げたくなる。
由良りんが起きたらどうするんだ!
俺の腰に腕を回す由良りんをそっと見ると、スースーと寝息を立てかなり深い眠りに就いている様子だ。起きる気配がないことにホッとする。
悠斗は由良りんの拘束から俺を解放すると、静かに自身の方へ引き寄せた。ぽすんと悠斗の胸にスッポリ収まると、ギュッと抱きしめられスリスリと悠斗が甘えている。
俺の耳元で「外行こ」と呟くと、そのまま手を引かれ部屋の外へと連れ出された。
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