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第11幕 王子の憂鬱と無鉄砲な俺
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由良りん達が居る部屋に戻ると、兄弟仲良く話しをしていた。俺達を見るなりもう一度由良りんと遙さん、それに不良君達三人から丁寧に謝られた。
三人組の由良りんの旧友は、今は学校には通わず、遙さんの元で仕事の手伝いをしているらしい。遙さんは、由良りんと少し歳の離れた二十七歳の次男で、不動産関係の経営していると紹介された。
遙さんは由良りんが可愛いのかな。
年齢が離れているせいで、照れ屋ななにも話してくれない弟が心配なんだ……。
やっぱ、兄弟って羨ましいな……。
由良りんは遙さんが話し掛ける度に、ツンツンしていて素直な態度をみせない。そんな姿を微笑ましく眺めてしまう。
「なんだよ……ヤナ」
「ううん。なにも……ただ、由良りん可愛いなって」
「……可愛いだと? お前に言われたかねぇよ」
「カナちゃん顔真っ赤。そういうところが可愛いんだよ。ねっ、瀬菜」
「うん! お兄さんもそう思うでしょ?」
「そうなんだよ。ウチの哉太は可愛いんだよ~」
デレデレとする兄は満更でもないないようだ。
「寄ってたかって……お前らもう帰れ!」
「言われなくても帰るよ。瀬菜とイチャイチャしなきゃだし」
「し、しないよっ! もう仲直りしたじゃん!」
「まぁ、哉太が楽しそうで良かった。またゆっくり遊びにおいで? それと、瀬菜君。哉太は優良物件だからお引越ししたいときは是非よろしくね?」
遙さんが、パチリとウィンクをしてくる。
引越し? 優良物件って……紹介してくれるってこと?
キョトンとする俺に、悠斗は遙さんから遠ざけるように俺の腕を引き、悠斗の背中しか見えなくなる。由良りんは苦笑いで「送ってく」と言い、俺の頭をグシャグシャとかき混ぜた。
由良りんの家はかなり広く、送ってもらわなければ迷子になると思うほどだった。庭を抜けながら悠斗と由良りんは、はなにやらコソコソ会話をしている。また俺だけ除け者なの? と思ったが、聞いてはいけないような気がして、少し離れて二人の前を歩いていた。
門まで行くと、悠斗がここで大丈夫と断り、由良りんにまた明日と言ってバイバイした。
「……なんの話してたの?」
「ん? 瀬菜は可愛いねって」
「むぅ~~……別にいいけど……」
「ふふっ、怒らないでよ。ねぇ、瀬菜……瀬菜と言い合いしたのいつ振りだろ」
「そんなの結構日常茶飯事じゃん」
「それはじゃれ合い。瀬菜が怒って怒鳴るのは久々」
確かに普段の言い合いなど可愛いものだ。
「……ごめん……」
「ううん。違くて、俺もごめんね? でも、たまには言い合うのもいいかもしれないなって」
「そうかな。俺、怒鳴っておいてなんだけど、やっぱり喧嘩するのは嫌だよ」
俯き小石を蹴ると、悠斗が手を繋いできた。
「でもほら、またこうして愛が深まった。それに、自分を見直すことも。また喧嘩しよ?」
「へへっ……なんだよそれ。故意にするもんじゃないだろ?」
「うん。自然と打つかって、見つめ直して納得し合って、最後には仲直りする」
「……それで修復できなかったら最悪じゃん」
「クスッ……そんなの修復させるに決まってる。俺の執着は折り紙付きだからね? だから……瀬菜。怖がらないで? 怒ることも言いたいことを言うのも、俺にちゃんと伝えて隠さないで?」
すっかり夜に包まれた道を進むと、悠斗がふと立ち止まり俺にそう伝えてきた。
自分は悠斗に言いたいことは言っているつもりだ。ただ、いつも悠斗に引き出してもらっている。
「……うん。なるべく気持ちは伝える。悠斗もだぞ!」
俺だけだなんてダメだ。
お前すぐに隠すから……。
「ふふっ、なら……まずは」
暗くて悠斗の表情は良く見えないが、笑っているような気がする。
三人組の由良りんの旧友は、今は学校には通わず、遙さんの元で仕事の手伝いをしているらしい。遙さんは、由良りんと少し歳の離れた二十七歳の次男で、不動産関係の経営していると紹介された。
遙さんは由良りんが可愛いのかな。
年齢が離れているせいで、照れ屋ななにも話してくれない弟が心配なんだ……。
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由良りんは遙さんが話し掛ける度に、ツンツンしていて素直な態度をみせない。そんな姿を微笑ましく眺めてしまう。
「なんだよ……ヤナ」
「ううん。なにも……ただ、由良りん可愛いなって」
「……可愛いだと? お前に言われたかねぇよ」
「カナちゃん顔真っ赤。そういうところが可愛いんだよ。ねっ、瀬菜」
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「言われなくても帰るよ。瀬菜とイチャイチャしなきゃだし」
「し、しないよっ! もう仲直りしたじゃん!」
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遙さんが、パチリとウィンクをしてくる。
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門まで行くと、悠斗がここで大丈夫と断り、由良りんにまた明日と言ってバイバイした。
「……なんの話してたの?」
「ん? 瀬菜は可愛いねって」
「むぅ~~……別にいいけど……」
「ふふっ、怒らないでよ。ねぇ、瀬菜……瀬菜と言い合いしたのいつ振りだろ」
「そんなの結構日常茶飯事じゃん」
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確かに普段の言い合いなど可愛いものだ。
「……ごめん……」
「ううん。違くて、俺もごめんね? でも、たまには言い合うのもいいかもしれないなって」
「そうかな。俺、怒鳴っておいてなんだけど、やっぱり喧嘩するのは嫌だよ」
俯き小石を蹴ると、悠斗が手を繋いできた。
「でもほら、またこうして愛が深まった。それに、自分を見直すことも。また喧嘩しよ?」
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自分は悠斗に言いたいことは言っているつもりだ。ただ、いつも悠斗に引き出してもらっている。
「……うん。なるべく気持ちは伝える。悠斗もだぞ!」
俺だけだなんてダメだ。
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「ふふっ、なら……まずは」
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