401 / 716
第11幕 王子の憂鬱と無鉄砲な俺
20
しおりを挟む
由良りん達が居る部屋に戻ると、兄弟仲良く話しをしていた。俺達を見るなりもう一度由良りんと遙さん、それに不良君達三人から丁寧に謝られた。
三人組の由良りんの旧友は、今は学校には通わず、遙さんの元で仕事の手伝いをしているらしい。遙さんは、由良りんと少し歳の離れた二十七歳の次男で、不動産関係の経営していると紹介された。
遙さんは由良りんが可愛いのかな。
年齢が離れているせいで、照れ屋ななにも話してくれない弟が心配なんだ……。
やっぱ、兄弟って羨ましいな……。
由良りんは遙さんが話し掛ける度に、ツンツンしていて素直な態度をみせない。そんな姿を微笑ましく眺めてしまう。
「なんだよ……ヤナ」
「ううん。なにも……ただ、由良りん可愛いなって」
「……可愛いだと? お前に言われたかねぇよ」
「カナちゃん顔真っ赤。そういうところが可愛いんだよ。ねっ、瀬菜」
「うん! お兄さんもそう思うでしょ?」
「そうなんだよ。ウチの哉太は可愛いんだよ~」
デレデレとする兄は満更でもないないようだ。
「寄ってたかって……お前らもう帰れ!」
「言われなくても帰るよ。瀬菜とイチャイチャしなきゃだし」
「し、しないよっ! もう仲直りしたじゃん!」
「まぁ、哉太が楽しそうで良かった。またゆっくり遊びにおいで? それと、瀬菜君。哉太は優良物件だからお引越ししたいときは是非よろしくね?」
遙さんが、パチリとウィンクをしてくる。
引越し? 優良物件って……紹介してくれるってこと?
キョトンとする俺に、悠斗は遙さんから遠ざけるように俺の腕を引き、悠斗の背中しか見えなくなる。由良りんは苦笑いで「送ってく」と言い、俺の頭をグシャグシャとかき混ぜた。
由良りんの家はかなり広く、送ってもらわなければ迷子になると思うほどだった。庭を抜けながら悠斗と由良りんは、はなにやらコソコソ会話をしている。また俺だけ除け者なの? と思ったが、聞いてはいけないような気がして、少し離れて二人の前を歩いていた。
門まで行くと、悠斗がここで大丈夫と断り、由良りんにまた明日と言ってバイバイした。
「……なんの話してたの?」
「ん? 瀬菜は可愛いねって」
「むぅ~~……別にいいけど……」
「ふふっ、怒らないでよ。ねぇ、瀬菜……瀬菜と言い合いしたのいつ振りだろ」
「そんなの結構日常茶飯事じゃん」
「それはじゃれ合い。瀬菜が怒って怒鳴るのは久々」
確かに普段の言い合いなど可愛いものだ。
「……ごめん……」
「ううん。違くて、俺もごめんね? でも、たまには言い合うのもいいかもしれないなって」
「そうかな。俺、怒鳴っておいてなんだけど、やっぱり喧嘩するのは嫌だよ」
俯き小石を蹴ると、悠斗が手を繋いできた。
「でもほら、またこうして愛が深まった。それに、自分を見直すことも。また喧嘩しよ?」
「へへっ……なんだよそれ。故意にするもんじゃないだろ?」
「うん。自然と打つかって、見つめ直して納得し合って、最後には仲直りする」
「……それで修復できなかったら最悪じゃん」
「クスッ……そんなの修復させるに決まってる。俺の執着は折り紙付きだからね? だから……瀬菜。怖がらないで? 怒ることも言いたいことを言うのも、俺にちゃんと伝えて隠さないで?」
すっかり夜に包まれた道を進むと、悠斗がふと立ち止まり俺にそう伝えてきた。
自分は悠斗に言いたいことは言っているつもりだ。ただ、いつも悠斗に引き出してもらっている。
「……うん。なるべく気持ちは伝える。悠斗もだぞ!」
俺だけだなんてダメだ。
お前すぐに隠すから……。
「ふふっ、なら……まずは」
暗くて悠斗の表情は良く見えないが、笑っているような気がする。
三人組の由良りんの旧友は、今は学校には通わず、遙さんの元で仕事の手伝いをしているらしい。遙さんは、由良りんと少し歳の離れた二十七歳の次男で、不動産関係の経営していると紹介された。
遙さんは由良りんが可愛いのかな。
年齢が離れているせいで、照れ屋ななにも話してくれない弟が心配なんだ……。
やっぱ、兄弟って羨ましいな……。
由良りんは遙さんが話し掛ける度に、ツンツンしていて素直な態度をみせない。そんな姿を微笑ましく眺めてしまう。
「なんだよ……ヤナ」
「ううん。なにも……ただ、由良りん可愛いなって」
「……可愛いだと? お前に言われたかねぇよ」
「カナちゃん顔真っ赤。そういうところが可愛いんだよ。ねっ、瀬菜」
「うん! お兄さんもそう思うでしょ?」
「そうなんだよ。ウチの哉太は可愛いんだよ~」
デレデレとする兄は満更でもないないようだ。
「寄ってたかって……お前らもう帰れ!」
「言われなくても帰るよ。瀬菜とイチャイチャしなきゃだし」
「し、しないよっ! もう仲直りしたじゃん!」
「まぁ、哉太が楽しそうで良かった。またゆっくり遊びにおいで? それと、瀬菜君。哉太は優良物件だからお引越ししたいときは是非よろしくね?」
遙さんが、パチリとウィンクをしてくる。
引越し? 優良物件って……紹介してくれるってこと?
キョトンとする俺に、悠斗は遙さんから遠ざけるように俺の腕を引き、悠斗の背中しか見えなくなる。由良りんは苦笑いで「送ってく」と言い、俺の頭をグシャグシャとかき混ぜた。
由良りんの家はかなり広く、送ってもらわなければ迷子になると思うほどだった。庭を抜けながら悠斗と由良りんは、はなにやらコソコソ会話をしている。また俺だけ除け者なの? と思ったが、聞いてはいけないような気がして、少し離れて二人の前を歩いていた。
門まで行くと、悠斗がここで大丈夫と断り、由良りんにまた明日と言ってバイバイした。
「……なんの話してたの?」
「ん? 瀬菜は可愛いねって」
「むぅ~~……別にいいけど……」
「ふふっ、怒らないでよ。ねぇ、瀬菜……瀬菜と言い合いしたのいつ振りだろ」
「そんなの結構日常茶飯事じゃん」
「それはじゃれ合い。瀬菜が怒って怒鳴るのは久々」
確かに普段の言い合いなど可愛いものだ。
「……ごめん……」
「ううん。違くて、俺もごめんね? でも、たまには言い合うのもいいかもしれないなって」
「そうかな。俺、怒鳴っておいてなんだけど、やっぱり喧嘩するのは嫌だよ」
俯き小石を蹴ると、悠斗が手を繋いできた。
「でもほら、またこうして愛が深まった。それに、自分を見直すことも。また喧嘩しよ?」
「へへっ……なんだよそれ。故意にするもんじゃないだろ?」
「うん。自然と打つかって、見つめ直して納得し合って、最後には仲直りする」
「……それで修復できなかったら最悪じゃん」
「クスッ……そんなの修復させるに決まってる。俺の執着は折り紙付きだからね? だから……瀬菜。怖がらないで? 怒ることも言いたいことを言うのも、俺にちゃんと伝えて隠さないで?」
すっかり夜に包まれた道を進むと、悠斗がふと立ち止まり俺にそう伝えてきた。
自分は悠斗に言いたいことは言っているつもりだ。ただ、いつも悠斗に引き出してもらっている。
「……うん。なるべく気持ちは伝える。悠斗もだぞ!」
俺だけだなんてダメだ。
お前すぐに隠すから……。
「ふふっ、なら……まずは」
暗くて悠斗の表情は良く見えないが、笑っているような気がする。
0
お気に入りに追加
236
あなたにおすすめの小説
壊れた番の直し方
おはぎのあんこ
BL
Ωである栗栖灯(くりす あかり)は訳もわからず、山の中の邸宅の檻に入れられ、複数のαと性行為をする。
顔に火傷をしたΩの男の指示のままに……
やがて、灯は真実を知る。
火傷のΩの男の正体は、2年前に死んだはずの元番だったのだ。
番が解消されたのは響一郎が死んだからではなく、Ωの体に変わっていたからだった。
ある理由でαからΩになった元番の男、上天神響一郎(かみてんじん きょういちろう)と灯は暮らし始める。
しかし、2年前とは色々なことが違っている。
そのため、灯と険悪な雰囲気になることも…
それでも、2人はαとΩとは違う、2人の関係を深めていく。
発情期のときには、お互いに慰め合う。
灯は響一郎を抱くことで、見たことのない一面を知る。
日本にいれば、2人は敵対者に追われる運命…
2人は安住の地を探す。
☆前半はホラー風味、中盤〜後半は壊れた番である2人の関係修復メインの地味な話になります。
注意点
①序盤、主人公が元番ではないαたちとセックスします。元番の男も、別の女とセックスします
②レイプ、近親相姦の描写があります
③リバ描写があります
④独自解釈ありのオメガバースです。薬でα→Ωの性転換ができる世界観です。
表紙のイラストは、なと様(@tatatatawawawaw)に描いていただきました。
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
薫る薔薇に盲目の愛を
不来方しい
BL
代々医師の家系で育った宮野蓮は、受験と親からのプレッシャーに耐えられず、ストレスから目の機能が低下し見えなくなってしまう。
目には包帯を巻かれ、外を遮断された世界にいた蓮の前に現れたのは「かずと先生」だった。
爽やかな声と暖かな気持ちで接してくれる彼に惹かれていく。勇気を出して告白した蓮だが、彼と気持ちが通じ合うことはなかった。
彼が残してくれたものを胸に秘め、蓮は大学生になった。偶然にも駅前でかずとらしき声を聞き、蓮は追いかけていく。かずとは蓮の顔を見るや驚き、目が見える人との差を突きつけられた。
うまく話せない蓮は帰り道、かずとへ文化祭の誘いをする。「必ず行くよ」とあの頃と変わらない優しさを向けるかずとに、振られた過去を引きずりながら想いを募らせていく。
色のある世界で紡いでいく、小さな暖かい恋──。
無自覚両片想いの鈍感アイドルが、ラブラブになるまでの話
タタミ
BL
アイドルグループ・ORCAに属する一原優成はある日、リーダーの藤守高嶺から衝撃的な指摘を受ける。
「優成、お前明樹のこと好きだろ」
高嶺曰く、優成は同じグループの中城明樹に恋をしているらしい。
メンバー全員に指摘されても到底受け入れられない優成だったが、ひょんなことから明樹とキスしたことでドキドキが止まらなくなり──!?
ハッピーエンド
藤美りゅう
BL
恋心を抱いた人には、彼女がいましたーー。
レンタルショップ『MIMIYA』でアルバイトをする三上凛は、週末の夜に来るカップルの彼氏、堺智樹に恋心を抱いていた。
ある日、凛はそのカップルが雨の中喧嘩をするのを偶然目撃してしまい、雨が降りしきる中、帰れず立ち尽くしている智樹に自分の傘を貸してやる。
それから二人の距離は縮まろうとしていたが、一本のある映画が、凛の心にブレーキをかけてしまう。
※ 他サイトでコンテスト用に執筆した作品です。
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる