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第11幕 王子の憂鬱と無鉄砲な俺
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ヤバイ……俺、またみんなに心配かける。
これはまずい……逃げないと‼
革張りの椅子が、革独特の張りのある音を立てる。逃げるにしても、脚まで縛られていては逃げられない。引きつる俺に、男はスーツの上着を脱ぎ捨て、ワイシャツのボタンを見せつけるように外していく。
上半身艶めかしいほど均等の取れた肌を露わにし、芋虫のように這う俺を抱き上げ、ベッドへ向かって歩き出す。
「震えているね? 怖い?」
「……降ろせ‼ 俺は悠斗のところに帰らないといけないんだ‼」
「悠斗? 哉太じゃないの?」
「俺、また……こんな……あいつを悲しませたくない……」
「ん? なんだ? 以前レイプでもされたの?」
「────っ……」
去年の文化祭でのことを想い出す。そのときの映像がフラッシュバックで蘇る。身体をカタカタ震わせる俺を男は抱きしめ直すと、宥めるようにギュッと手のひらに力を込めていた。
けれど、男がしようとしていることは同じなのだ。恐怖が襲って来るのも無理はない。恐る恐る男の顔を見ると、あの男子学生の下卑た笑みが浮かんできた。青ざめていた顔色は、死人のような色合いになるほど血の気がない。その様子に、なぜか悲しそうに眉根を寄せる男。
「……辛かったんだね。でも安心して。優しくするから」
そっとベッドに俺を置くと、ギシッとスプリングを軋ませながら男が近付いてくる。動く部分を使って後退り、キョロキョロと逃げ場を見つけようとする。三方には三人組がカメラを構え、うしろはベッドヘッド。拉致されてから計算された空間に、逃げ場など存在していなかった。
「大丈夫……少し我慢してくれればすぐに終わるから」
「ヤダ……ひぃっ!」
縛られた腕をベッドヘッドに押さえつけると、制服のシャツのボタンを外され素肌を晒される。男は首筋に唇を這わせると、強く吸い上げ痕を残していった。
気色悪い他人の体温に触れられ抵抗もした。そんな俺の行動は全くの無意味で、暴れたせいで最終的には体力も奪い取られ、縫い付けられ主導権を握られてしまった。
全てを諦め人形のように無表情で涙の痕を残す俺の頰に、男はそっと指を滑らせると、振り向き三人組に問い掛けた。
「映像、哉太に送ったか?」
そう言うと、三人組は指を立てて「バッチリっす!」と明るく答える。男は頷くと、脱がされた服を丁寧に俺に着せ、拘束を解いてくれた。それから俺を横たわらせると、まるで恋人にするように髪を梳き宥めていた。
「……なんでこんなこと」
「ん? 君が可愛かったからかな」
横に首を振り「意味分からない」と伝えると、クスッと笑っていた。その笑い方がなんとなく悠斗に似ていて、また涙がジワリと溢れてしまう。
「怖かった? それとも……」
「……うるさい」
「ははっ、嫌われちゃったな。哉太はいったいどんな反応すると思う?」
「由良りんに恨みでもあるのか? 俺はいい……でもなにかしたら許さないぞ」
「カッコイイこと言うね? 君は哉太がそんなに大切なの?」
「大切だよ! 友達だもん!」
男は俺を宥めていた手を止めると、啞然とした声を出した。
「……友達だって⁉」
「そうだよ! 二年になって最初にできた大切な友達だ!」
男は額に手を当てると、はぁ~~っと大きく落胆のため息を吐いていた。
「あーごめん。作戦は失敗かも……。てっきり……いや、それは哉太に直接聞くよ」
これはまずい……逃げないと‼
革張りの椅子が、革独特の張りのある音を立てる。逃げるにしても、脚まで縛られていては逃げられない。引きつる俺に、男はスーツの上着を脱ぎ捨て、ワイシャツのボタンを見せつけるように外していく。
上半身艶めかしいほど均等の取れた肌を露わにし、芋虫のように這う俺を抱き上げ、ベッドへ向かって歩き出す。
「震えているね? 怖い?」
「……降ろせ‼ 俺は悠斗のところに帰らないといけないんだ‼」
「悠斗? 哉太じゃないの?」
「俺、また……こんな……あいつを悲しませたくない……」
「ん? なんだ? 以前レイプでもされたの?」
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けれど、男がしようとしていることは同じなのだ。恐怖が襲って来るのも無理はない。恐る恐る男の顔を見ると、あの男子学生の下卑た笑みが浮かんできた。青ざめていた顔色は、死人のような色合いになるほど血の気がない。その様子に、なぜか悲しそうに眉根を寄せる男。
「……辛かったんだね。でも安心して。優しくするから」
そっとベッドに俺を置くと、ギシッとスプリングを軋ませながら男が近付いてくる。動く部分を使って後退り、キョロキョロと逃げ場を見つけようとする。三方には三人組がカメラを構え、うしろはベッドヘッド。拉致されてから計算された空間に、逃げ場など存在していなかった。
「大丈夫……少し我慢してくれればすぐに終わるから」
「ヤダ……ひぃっ!」
縛られた腕をベッドヘッドに押さえつけると、制服のシャツのボタンを外され素肌を晒される。男は首筋に唇を這わせると、強く吸い上げ痕を残していった。
気色悪い他人の体温に触れられ抵抗もした。そんな俺の行動は全くの無意味で、暴れたせいで最終的には体力も奪い取られ、縫い付けられ主導権を握られてしまった。
全てを諦め人形のように無表情で涙の痕を残す俺の頰に、男はそっと指を滑らせると、振り向き三人組に問い掛けた。
「映像、哉太に送ったか?」
そう言うと、三人組は指を立てて「バッチリっす!」と明るく答える。男は頷くと、脱がされた服を丁寧に俺に着せ、拘束を解いてくれた。それから俺を横たわらせると、まるで恋人にするように髪を梳き宥めていた。
「……なんでこんなこと」
「ん? 君が可愛かったからかな」
横に首を振り「意味分からない」と伝えると、クスッと笑っていた。その笑い方がなんとなく悠斗に似ていて、また涙がジワリと溢れてしまう。
「怖かった? それとも……」
「……うるさい」
「ははっ、嫌われちゃったな。哉太はいったいどんな反応すると思う?」
「由良りんに恨みでもあるのか? 俺はいい……でもなにかしたら許さないぞ」
「カッコイイこと言うね? 君は哉太がそんなに大切なの?」
「大切だよ! 友達だもん!」
男は俺を宥めていた手を止めると、啞然とした声を出した。
「……友達だって⁉」
「そうだよ! 二年になって最初にできた大切な友達だ!」
男は額に手を当てると、はぁ~~っと大きく落胆のため息を吐いていた。
「あーごめん。作戦は失敗かも……。てっきり……いや、それは哉太に直接聞くよ」
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