王子×悪戯戯曲

そら汰★

文字の大きさ
上 下
337 / 716
幕間 君は僕のお姫様《悠斗side》

05

しおりを挟む
 母さんが昔言ってた意味が、少しは理解できたけど、男の子を好きになっていいものなのか……幼い自分には、とても大きな壁に思えた。
 現実を受け入れざるを得なかった瀬菜は、わんわんと泣き出していた。そんな瀬菜をそっと抱きしめ、もう少し大人になるまでは、友達として君を守るから……どうか僕のことで泣かないでと心の中で呟いていた。


***


 この街に来て今ではすっかり街にも溶け込んでいた。小中学共に白桜町の学校に通い、瀬菜と一緒に成長した。高校は将来を考え、レベルの高い高校に進学しようとも思ったが、どうしても瀬菜と離れることが想像できなかった。
 それとなく瀬菜に進学のことを聞かれ、自分もそこを受験すると即答していた。施設も整った私立白桜南高等学校は、少しレベルは下がるが悪いところではない。
 将来を考えるなら、この選択は間違っているのかもしれない。けれど瀬菜が隣に居ない日々は、自分にとってもっと将来的に問題なのだ。


「なぁ悠斗、俺っていつからお前のこと、悠斗って呼んでいるっけ?」
「ん? どうしたの急に……」

 朝のいつも通りの登校。
 瀬菜を起こしに行き、支度を手伝いながら並んで学校へと向かう。毎日同じことの繰り返しのようでいて、毎日が新鮮。
 瀬菜は昔から積極的に話をしてくれる。恋愛事情は聞かないが、まだ誰かに恋をしたことはないのだろう。悩み相談は幼馴染で親友の俺の特権だが、彼女ができたなど聞いたとき、俺はおそらく平常では居られない。

「今日夢見てさ……いつからだったかなーって考えていた」
「ふふっ……忘れちゃったの?」
「えっ? お前、覚えているの?」
「もちろん、そのときは少しショックだったし……」

 俺が男だとわかると、『ゆうちゃん』から『悠斗』に次の日には変わっていた。ただ、たまにゆうちゃんに変わるときがあった。それは瀬菜が寂しいとき。おばさんもおじさんも居なくて心細いときだけは、甘えるようにゆうちゃん、ゆうちゃんと言ってくれた。

「俺、そんな酷いことしたっけ?」
「それはね? まぁ……曖昧かな……ほら、今日も寝惚けてゆうちゃんって言っていたし」
「ゆうちゃんは俺の中で無敵なんだもん。これからはまた、ゆうちゃんに戻そうかな?」

 それもまぁ瀬菜が言えば可愛いので悪くはない。
 けれど幼い頃の自分に嫉妬してしまいそうだ。

「それは……勘弁かな……」
「えーー、なんで⁉」
「さぁ、なんでだと思う?」

 そう問いかけると瀬菜は眉を寄せ考え込んでいる。それから閃いたとばかりに笑顔を見せる。

「分かったぞ! 王子のイメージ崩れるのが嫌なんだろ!」
「違うよ。瀬菜には一生解けないかもね?」

 隣で膨れる瀬菜に、鈍感だしまだもう少し無理かと……ため息をそっと吐いて微笑むと、親友という役を演じた。

 高校生になっても君は可愛いままだ。
 いつかきっと俺の気持ちに気付いてくれるまで……。
 幼い頃の想いと共に、今も変わらず君の側で……君をそっと守らせて?

 君は俺だけの……。
 愛しい愛しいお姫様なのだから──。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺のこと、冷遇してるんだから離婚してくれますよね?〜王妃は国王の隠れた溺愛に気付いてない〜

明太子
BL
伯爵令息のエスメラルダは幼い頃から恋心を抱いていたレオンスタリア王国の国王であるキースと結婚し、王妃となった。 しかし、当のキースからは冷遇され、1人寂しく別居生活を送っている。 それでもキースへの想いを捨てきれないエスメラルダ。 だが、その思いも虚しく、エスメラルダはキースが別の令嬢を新しい妃を迎えようとしている場面に遭遇してしまう。 流石に心が折れてしまったエスメラルダは離婚を決意するが…? エスメラルダの一途な初恋はキースに届くのか? そして、キースの本当の気持ちは? 分かりづらい伏線とそこそこのどんでん返しありな喜怒哀楽激しめ王妃のシリアス?コメディ?こじらせ初恋BLです! ※R指定は保険です。

告白してきたヤツを寝取られたらイケメンαが本気で囲ってきて逃げられない

ネコフク
BL
【本編完結・番外編更新中】ある昼過ぎの大学の食堂で「瀬名すまない、別れてくれ」って言われ浮気相手らしき奴にプギャーされたけど、俺達付き合ってないよな? それなのに接触してくるし、ある事で中学から寝取ってくる奴が虎視眈々と俺の周りのαを狙ってくるし・・・俺まだ誰とも付き合う気ないんですけど⁉ だからちょっと待って!付き合ってないから!「そんな噂も立たないくらい囲ってやる」って物理的に囲わないで! 父親の研究の被験者の為に誰とも付き合わないΩが7年待ち続けているαに囲われちゃう話。脇カプ有。 オメガバース。α×Ω ※この話の主人公は短編「番に囲われ逃げられない」と同じ高校出身で短編から2年後の話になりますが交わる事が無い話なのでこちらだけでお楽しみいただけます。 ※大体2日に一度更新しています。たまに毎日。閑話は文字数が少ないのでその時は本編と一緒に投稿します。 ※本編が完結したので11/6から番外編を2日に一度更新します。

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。 その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。 その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。 早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。 乃木(18)普通の高校三年生。 波田野(17)早坂の友人。 蓑島(17)早坂の友人。 石井(18)乃木の友人。

後天性オメガの近衛騎士は辞職したい

栄円ろく
BL
 ガーテリア王国の第三王子に仕える近衛騎士のイアン・エバンズは、二年前に突如ベータからオメガに性転換した。その影響で筋力が低下したのもあり、主人であるロイ・ガーテリアに「運命の番を探して身を固めたい」と辞職を申し出た。  ロイは王族でありながら魔花と呼ばれる植物の研究にしか興味がない。ゆえに、イアンの辞職もすぐに受け入れられると思ったが、意外にもロイは猛烈に反対してきて……  「運命の番を探すために辞めるなら、俺がそれより楽しいことを教えてやる!」  その日からイアンは、なぜかロイと一緒にお茶をしたり、魔花の研究に付き合うことになり……??  植物学者でツンデレな王子様(23歳)×元ベータで現オメガの真面目な近衛騎士(24歳)のお話です。

元会計には首輪がついている

笹坂寧
BL
 【帝華学園】の生徒会会計を務め、無事卒業した俺。  こんな恐ろしい学園とっとと離れてやる、とばかりに一般入試を受けて遠く遠くの公立高校に入学し、無事、魔の学園から逃げ果すことが出来た。  卒業式から入学式前日まで、誘拐やらなんやらされて無理くり連れ戻されでもしないか戦々恐々としながら前後左右全ての気配を探って生き抜いた毎日が今では懐かしい。  俺は無事高校に入学を果たし、無事毎日登学して講義を受け、無事部活に入って友人を作り、無事彼女まで手に入れることが出来たのだ。    なのに。 「逃げられると思ったか?颯夏」 「ーーな、んで」  目の前に立つ恐ろしい男を前にして、こうも身体が動かないなんて。

家を追い出されたのでツバメをやろうとしたら強面の乳兄弟に反対されて困っている

香歌奈
BL
ある日、突然、セレンは生まれ育った伯爵家を追い出された。 異母兄の婚約者に乱暴を働こうとした罪らしいが、全く身に覚えがない。なのに伯爵家当主となっている異母兄は家から締め出したばかりか、ヴァーレン伯爵家の籍まで抹消したと言う。 途方に暮れたセレンは、年の離れた乳兄弟ギーズを頼ることにした。ギーズは顔に大きな傷跡が残る強面の騎士。悪人からは恐れられ、女子供からは怯えられているという。でもセレンにとっては子守をしてくれた優しいお兄さん。ギーズの家に置いてもらう日々は昔のようで居心地がいい。とはいえ、いつまでも養ってもらうわけにはいかない。しかしお坊ちゃん育ちで手に職があるわけでもなく……。 「僕は女性ウケがいい。この顔を生かしてツバメをしようかな」「おい、待て。ツバメの意味がわかっているのか!」美貌の天然青年に振り回される強面騎士は、ついに実力行使に出る?!

僕は貴方の為に消えたいと願いながらも…

夢見 歩
BL
僕は運命の番に気付いて貰えない。 僕は運命の番と夫婦なのに… 手を伸ばせば届く距離にいるのに… 僕の運命の番は 僕ではないオメガと不倫を続けている。 僕はこれ以上君に嫌われたくなくて 不倫に対して理解のある妻を演じる。 僕の心は随分と前から血を流し続けて そろそろ限界を迎えそうだ。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 傾向|嫌われからの愛され(溺愛予定) ━━━━━━━━━━━━━━━ 夢見 歩の初のBL執筆作品です。 不憫受けをどうしても書きたくなって 衝動的に書き始めました。 途中で修正などが入る可能性が高いので 完璧な物語を読まれたい方には あまりオススメできません。

【BL】声にできない恋

のらねことすていぬ
BL
<年上アルファ×オメガ> オメガの浅葱(あさぎ)は、アルファである樋沼(ひぬま)の番で共に暮らしている。だけどそれは決して彼に愛されているからではなくて、彼の前の恋人を忘れるために番ったのだ。だけど浅葱は樋沼を好きになってしまっていて……。不器用な両片想いのお話。

処理中です...