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第10幕 新学年と不良くん 〜高校二年生編〜
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恥ずかしさに俯いていると、ブブブッ……とポケットの中のスマホが震え出し、着信を知らせる。画面を見ると悠斗の名前が表示されていて、終わったかな? とタップして、耳に当て応える。
「悠斗? 終わった?」
『うん。今どこに居るの?』
「さっき学校出て、今は近くの公園でアイス食べてる♪」
『それじゃ、そこ行くから待ってて? 由良君も一緒なの?』
「うん。コンビニの近くのとこ分かる? 由良りんも一緒に居るよ?」
『すぐ行く。瀬菜……変なことされてない?』
される訳ないじゃん。
言葉で嬲られたけど。
心の中で呟くと、由良りんはツンツンと頬っぺたを突いてくる。なんだよと視線だけ向けると、唇の端をペロリと舐められてしまう。いきなりのことに驚き固まっていると、悠斗が心配したように問いかけてくる。
由良りんは由良りんで、ベンチの背もたれに頬杖をつきながら不敵に笑っていた。
『瀬菜? どうしたの?』
「あああっ、アイス! 溶けそうで!」
『……大丈夫?』
「う、うん。平気! 早く来いよ!」
そう悠斗に告げると、急いで通話を終了させる。
「──ちょっと、由良りん! な、舐めなくてもいいだろ⁉ なんの嫌がらせだよ‼」
「肉まんだけじゃ、物足りなくてさ。甘いのも欲しくなった。これも賄賂だと思えよ」
それならせめて手にしているアイスを食べてほしい。
「あ、そ、そっか……賄賂か……」
「賄賂? 俺も貰おうかな? 瀬菜、本当に溶けそうだよ?」
「もう来たのかよ。もっとゆっくり来いよな」
俺の手の中にあるアイスを合流した悠斗が一口食べると、溶けそうな部分を舐め取っていく。
由良りんに舐められた場面を、悠斗に見られなくて良かった。ドキドキと心臓がうるさくて、みんなに聞こえてしまうのではないかと、さらに鼓動が激しくなる。
「瀬菜? もう食べないの?」
「ううん。食べる!」
「そんなに一気に食ったら、頭痛くなるぞ。ヤナは本当に子供みたいだな」
そう言った由良りんの発言に悠斗から笑みがなくなる。
「……ヤナ? それって瀬菜のこと?」
「そうだけど? いい響きだろ? 因みに俺は由良りんだと。立花もあだ名で呼ぶか?」
「……そう。なら僕は、君のこと……カナちゃんって呼ぼうかな」
「うわ……それ、さっき却下したばっかなんだけど」
「瀬菜と思考も一緒なんて嬉しい。カナちゃんで決定だね♪」
「なら、俺はユウって呼ぶ」
「それってどっちに掛けているの? 悠斗? それともお前?」
「ふっ……どうだっていいだろ」
あだ名の話で盛り上がっている二人とは他所に、俺は一気に食べたアイスのせいで、キーンとしている頭を押さえながら悶えていた。
「ううう……イタタ……頭ギンギンする……」
「そんなに慌てて食べるからだよ。取らないからゆっくり食べれば良かったのに」
「言った側から……本当に予想通りに動いてくれるよな」
その日から、悠斗と由良りんの不思議な呼び合いが始まった。悠斗が由良りんを「カナちゃん」と呼ぶ度に、由良りんが引きつった顔をしていた。
悠斗にあやかってか多澤までカナちゃん呼びをし、崩壊しそうな由良りんの表情が面白くて堪らなかった。
「悠斗? 終わった?」
『うん。今どこに居るの?』
「さっき学校出て、今は近くの公園でアイス食べてる♪」
『それじゃ、そこ行くから待ってて? 由良君も一緒なの?』
「うん。コンビニの近くのとこ分かる? 由良りんも一緒に居るよ?」
『すぐ行く。瀬菜……変なことされてない?』
される訳ないじゃん。
言葉で嬲られたけど。
心の中で呟くと、由良りんはツンツンと頬っぺたを突いてくる。なんだよと視線だけ向けると、唇の端をペロリと舐められてしまう。いきなりのことに驚き固まっていると、悠斗が心配したように問いかけてくる。
由良りんは由良りんで、ベンチの背もたれに頬杖をつきながら不敵に笑っていた。
『瀬菜? どうしたの?』
「あああっ、アイス! 溶けそうで!」
『……大丈夫?』
「う、うん。平気! 早く来いよ!」
そう悠斗に告げると、急いで通話を終了させる。
「──ちょっと、由良りん! な、舐めなくてもいいだろ⁉ なんの嫌がらせだよ‼」
「肉まんだけじゃ、物足りなくてさ。甘いのも欲しくなった。これも賄賂だと思えよ」
それならせめて手にしているアイスを食べてほしい。
「あ、そ、そっか……賄賂か……」
「賄賂? 俺も貰おうかな? 瀬菜、本当に溶けそうだよ?」
「もう来たのかよ。もっとゆっくり来いよな」
俺の手の中にあるアイスを合流した悠斗が一口食べると、溶けそうな部分を舐め取っていく。
由良りんに舐められた場面を、悠斗に見られなくて良かった。ドキドキと心臓がうるさくて、みんなに聞こえてしまうのではないかと、さらに鼓動が激しくなる。
「瀬菜? もう食べないの?」
「ううん。食べる!」
「そんなに一気に食ったら、頭痛くなるぞ。ヤナは本当に子供みたいだな」
そう言った由良りんの発言に悠斗から笑みがなくなる。
「……ヤナ? それって瀬菜のこと?」
「そうだけど? いい響きだろ? 因みに俺は由良りんだと。立花もあだ名で呼ぶか?」
「……そう。なら僕は、君のこと……カナちゃんって呼ぼうかな」
「うわ……それ、さっき却下したばっかなんだけど」
「瀬菜と思考も一緒なんて嬉しい。カナちゃんで決定だね♪」
「なら、俺はユウって呼ぶ」
「それってどっちに掛けているの? 悠斗? それともお前?」
「ふっ……どうだっていいだろ」
あだ名の話で盛り上がっている二人とは他所に、俺は一気に食べたアイスのせいで、キーンとしている頭を押さえながら悶えていた。
「ううう……イタタ……頭ギンギンする……」
「そんなに慌てて食べるからだよ。取らないからゆっくり食べれば良かったのに」
「言った側から……本当に予想通りに動いてくれるよな」
その日から、悠斗と由良りんの不思議な呼び合いが始まった。悠斗が由良りんを「カナちゃん」と呼ぶ度に、由良りんが引きつった顔をしていた。
悠斗にあやかってか多澤までカナちゃん呼びをし、崩壊しそうな由良りんの表情が面白くて堪らなかった。
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