王子×悪戯戯曲

そら汰★

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第10幕 新学年と不良くん 〜高校二年生編〜

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 お風呂から出ると、濡れてしまったテーピングを巻き直し、頭を乾かしてもらう。自分ひとりではこうはいかない。

「はい、いいよ。それはそうと、ボール避けられなかったの?」
「うん。悠斗が凄いから、見惚れていたんだ」
「ふふっ、試合中なのに?」
「うん。そしたらボールが目の前でビックリした」
「俺もビックリした。意識ないし……。でも、捻挫だけで済んで本当に良かった」

 顎を上げ悠斗と双眸を交わす。

「あのさ、由良君が言ってたけど、凄い速さで駆け寄って来たんだろ? 一体どんな顔していたんだ? 驚いていたぞ?」
「……特に変わりはないよ。ただ、瀬菜に触れて欲しくなかったんだ」
「なんだよそれ」

 そう言い苦笑いを浮かべると、口元がピリリと痛む。顔を歪めると、悠斗がそっと触れてきた。

「痛む?」
「ううん、平気。すぐに治る」

 洗面所から二階の部屋まで姫抱っこ。自分はそれほど軽い訳ではない。安静にとは言われたか、ここまで姫対応されると気が引ける。
 ベッドに腰を落とすと、悠斗も隣に腰掛けてくる。それから少し戸惑った様子で、俺に質問してきた。

「瀬菜は……由良君のこと、どう思っているの?」
「どうって……不良っぽいけど、優しいところあるし、お兄ちゃんみたい。それとさ由良君、最初の頃遅刻とかしてたじゃん。クラスに馴染めないと、登校するの嫌になるのかなって。俺も入学してすぐは、友達中々できなくて……でも、悠斗が居たから頑張れたんだ。まぁ、由良君は全然ひとりでも気にしていないかもだけど」

 俯きながら言うと、頭をポンポンと撫でられる。

「瀬菜は優しいね。由良君が聞いたら勘違いするかも」
「勘違い? あっ、そうだ。悠斗に相談したかったんだ」

 俺がここ最近ずっと気にしていたこと。

「由良君にさ、俺たちのこと話したほうがいいと思う? てか悠斗は恋人ってこと教えたいの?」
「そりゃ言いたい……というか、俺からよりも瀬菜からちゃんと伝えて欲しい。けど、瀬菜がどうしても言いたくないなら無理強いはしない」
「うん……。あのさ、悠斗が記憶なくなったとき、女の先輩居たでしょ?」
「先輩? 俺を呼び出した人?」
「うん。事故があったときの真相知りたくて、先輩を訪ねたんだ。そのときに、男同士で気持ち悪いって言われちゃって。思ったんだ……俺の周りはみんな理解あって、受け入れてくれる人ばかりだけど、全ての人がそうじゃないんだって」

 膝に置いた手のひらをギュッと握りしめる。あのときは強がっていられたが、穏やかな日常に時折蘇る高崎先輩の憎悪と罵声。
 親しい人からそれを向けられたとき、自分は恐らく気持ちを保っていられない。

「だから、躊躇っていたの?」
「うん。折角仲良くなれたのに、空気悪くしたくなかったし。由良君だって、どう接していいか悩むかなって……」
「そっか……瀬菜はいっぱい考えたんだね。それと……ごめん。あのときは本当に、色々辛い思いさせていたんだね。……なのに俺は……情けない」

 ギュッと抱きしめられ、何度もゴメンと言う悠斗の胸に、スリスリしながら首を横に振る。
 俺達の最大の出来事は絆が深まったとはいえ、まだあとを引いている。

「ううん……悠斗のせいじゃないじゃん。俺、謝らせるために言ったんじゃないよ?」
「いや、どうかな……俺のせいだよ。でもね、由良君は大丈夫」
「どうして?」
「ん? どうしても。言える機会ができて、瀬菜がそのときに言いたいって思ったら伝えてあげて」
「自然に? 悠斗から言ってもいいんだぞ?」
「俺はほら、空気読まずに言っちゃうから」
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