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第10幕 新学年と不良くん 〜高校二年生編〜
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しおりを挟む初日の今日は、午前で学校は終了し、その足で俺は肩を怒らせ目的の場所へと向かった。それからすぐに探していた人物を見つけると、大きな声で猛烈に抗議していた。
「先輩! 環樹先輩‼」
「おやおや、新学期早々どうしたの姫乃ちゃん。今日は生徒会お休みなのに、会いに来てくれたの? 嬉しいな~♪」
そんな俺の様子にも、環樹先輩はマイペースだ。
「違う! コレ! コレッ! どういうことか説明‼」
「うわーコレだって! ひでぇ扱いだな悠斗」
「もう、瀬菜……決まったことだし諦めてよ」
「新しいクラスに行く前は、あんなに喜んでたのに……ははは」
興奮するのも無理はない。こんなことができるのは、目の前に居る理事長の孫にほかならない。俺のうしろに居る三人を指差し、環樹先輩をさあ吐けとばかりに責め立てた。
「あれれ~? 気に入らなかったの? 新しいクラス」
「気にいるもなにも、コレおかしい‼」
「柳ちゃん、この間まではみんなと同じクラスだったらいいねって話していたじゃん」
「そうだよ瀬菜。一年よりもイベント多いし、絶対一緒のほうがいいに決まっているよ?」
「初日早々、駄々捏ねるなんてな。先が思い遣られるぜ……」
三人は俺をここに来る前からこうして宥めている。クラス分けを奇跡だねと言う悠斗に、俺は納得できずにいた。
「姫乃ちゃんは、そこまで嫌だったの?」
「そういう訳じゃないけど……ズルしてるみたいじゃん……」
嫌な訳ではない。気の合う仲間と一緒に過ごせるのは、安心だし嬉しいに決まっている。けれど、ほかの子達は自分が思い描いた通りに、好きな人や大切な仲間と一緒に過ごせないというのに、自分だけ整った環境で後ろめたいのだ。
「う~ん。ズルか……姫乃ちゃんは真面目すぎるねぇ~。そんな君は嫌いじゃないけどね~。さて、どうしたものか」
顎に手を当て思案する環樹先輩に、悠斗が待ったをかける。
「先輩、約束ですよ。返却はしないと言ったはずです」
「そうなんだよね~。僕はすでに対価を得てしまった。それに、今から変更するにも、先生方の手を煩わせることになるな~」
確かに決まってしまったことを変えることは、それだけ人が動くということだ。職権乱用がいいこととは言えないが、今度は俺の気持ちだけでその効力を使うことになる。
唇を噛み締め口を閉ざす俺に、悠斗が手を取り憂いを帯びた面持ちで謝罪をした。
「ごめん瀬菜。実は誕生日プレゼントと生徒会に入る条件で、俺が先輩にお願いしたんだ。小学校も中学校でもクラスが別々だったし、進学したり社会人になったら、ずっと一緒は無理でしょ? 高校生活ぐらいは一度でもいいから、同じクラスで瀬菜と過ごしたいって……。瀬菜の気持ちをもっと考えるべきだった。俺が責任をとって転校でも……」
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