王子×悪戯戯曲

そら汰★

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幕間 Piece《悠斗side》

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 背中越しに先輩はそう言ってきた。
 その含みを持たせた言葉には、刺々しさを感じる。

「……秘密?」

 首を傾げ秘密とは一体なんなのだろうと思案するが、生憎人に隠すような秘密など持ち合わせていない。

「その前に、先輩のお名前を教えてくれませんか?」

 柔らかな笑顔でそう言うと、先輩はチラリとこちらに視線を寄越し一笑した。

「フッ……女性慣れしているのね? そうやってみんなを騙しているのかしら。そうね……フェアじゃないから教えてあげる。私は二年の高崎よ」

 ずいぶん攻撃的だ。ようやく確認できた表情も険があり、目が据わっている。嫌な予感はしていたが、自分は彼女になにかしてしまったのだろうか。
 考えたところで、高崎先輩とは今日が初対面。いくら自分が目立つ人間だとしても、恨みを持たれるような行いはしていないはずだ。

「知っているのよ? 柳瀬菜……確か、姫乃ちゃんだったかしら? あなたと柳瀬菜、付き合っているんでしょ?」

 これは大変よろしくない。
 なにがといえば、先輩は俺だけではなく、瀬菜に対しても悪意を持っている。呼び出されたのが俺で良かったが、ここで食い止めなければ、いずれ瀬菜にも危害が及ぶ。

「ええ……瀬菜は確かに僕の恋人ですけど、そのことでなにか問題でもあるんですか?」

 姫乃ちゃんに関しても、一部の人間しか知らないことだ。それをなぜ先輩が知っているのか。

「──ッ! 問題? 大アリよ‼」

 これは少し長引きそうだな。
 瀬菜が心配するな……。

 スマホを取り出し遅くなることを伝えようとすると、横から伸びてきた腕に遮られた。

「なにしているのよ! あなたは私と話をしているのよ!」

 ヒステリックに高崎先輩は怒鳴り、俺のスマホを奪っていた。

「あの……返してくれませんか? 遅くなる連絡を……」
「連絡? 仲間を呼ぶつもりなの⁉ それとも彼? ああ、彼女かしら? どう見てもあっちが受ける側よね? うわっ! なんなのこれッ!」

 顔を歪め俺のスマホを勝手に操作する先輩。
 まるで汚いものでも見るような顔付きだ。

「クスッ……可愛さが分からないなら見ないでくださいよ。あぁ、いや違くて……返してもらえます? 個人情報ですよ? というか……呼び出した理由を……」

 先輩の手からスマホを取ろうとすると、さっと避けられてしまう。画面を見ながら先輩は、弱点を握ったとでもいうように挑発してきた。

「このデータ広めてあげるわ! 拡散させて……そしたら、あなた達も学校に居られなくなる!」
「広めてくれるなんて光栄だな……公認になったら悪い虫もつかなくなる」

 ニコッと微笑み大した脅迫ではないと思いながら、高崎先輩の言葉に引っかかりを感じた。

 けど、広まったら先生から呼び出しかな?
 でもまぁ……家族公認だし問題ないかな。
 それより男もイケるって、広まるのは厄介か。
 それにしても……あなた達もってどういうことだ?

「──クッ、なによ……馬鹿にして……私の幸せを壊したくせに」
「幸せ? あっ、ちょ、ちょっと‼」

 考え込んでいたせいで行動が遅れてしまう。スマホを大きく掲げ鬼のような形相の先輩の姿。

「あなた達も壊れてしまえッ‼」

 あっ……っと思ったときには追いかけていた。

 これは……ヤバイかも……?

 ギリギリ踏ん張ろうとしたが、重力に逆らえずにスローモションのように、ゆっくりと身体が宙に浮き落ちていく。時間にすると数秒の出来事。
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