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幕間 Piece《悠斗side》
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ソファーの上に環樹先輩のうしろ姿。横から伸びる細い足。これからそういう行為を始めるような情景に、愕然と立ち尽くしてしまった。
すぐに駆け寄り先輩を引きずり下ろしたくなるが、諦めたようなか細い声に俺の足はその場から動けずにいた。
これはすべて自分が招いてしまったこと。
それでも、奪われたくはない──!
グッと拳を握り締め、怒りを抑え込む。静かに瞳を閉じ細く長い呼吸を繰り返すと、目を見開き環樹先輩と視線を合わせた。
「ククッ……、悪くないね……君のそういう顔は中々見られないから。僕のこと殴りたい?」
勝ち誇った様子で、環樹先輩は俺に向けてそう言ってきた。
「ええ……今すぐにでも殴りたくて仕方ないのに、抑えられている自分が不思議です」
なんの不思議もない。
自分が先輩に殴り掛からないのは負い目があるからだ。
俺が動かないのをいいことに、先輩は身を屈め頬にキスを落とし、なにかを囁いていた。
「本当に……いい加減にしてくださいよ」
明らかに嫌がらせをして楽しんでいる環樹先輩に、若干の怒気を孕んだ声を出す。
先輩も人が悪い……まるでタイミングを見計らったかのような行動だ。俺との会話遊びを始める先輩に合わせ、余裕の自分を演じると、それも筒抜けなのか、トンと肩に拳を押し付け励まされた。
「待たせすぎだよ。けど、すべてを君に返そう」
環樹先輩は珍しく穏やかな笑顔で小さくそう呟くと、俺の手のひらにラビたんをポトリと落とし、生徒会室を静かに出て行った。
大きな丸い瞳が、瞬きもせず俺を見つめている。
ぷくりと膨らむ唇は仄かに開き震え、怯えているようにも見える。長い黒髪とスカートは乱れ、そこらか覗く細い脚はとても淫らで欲情を誘う。
画像も可愛かったが、実物はもっと可愛い。
触れても……大丈夫だろうか……。
拒絶されないだろうか……。
ゆっくりと近付き跪くと、硬直したままの華奢な身体をそっと抱きしめる。自分の腕の中に居る存在を感じると、目頭が熱くなり腕に力を込めてしまう。
最後に抱きしめたのはいつだったか。少し痩せたのではないだろうか。こんな風にしてしまった自分を、受け入れてくれるだろうか……。
「──瀬菜……」
発した自分の声が震えうわずっている。
なんてみっともないのだろう。
「……ごめん……瀬菜」
上手く声を出せない。
怖くて怖くて堪らない。
「ずっと、ひとりにして……ごめんね?」
「辛い思いさせて……ごめんね?」
「瀬菜を忘れてしまって……ごめんね?」
何度謝罪を口にしても足りない。
少しすると、震える声でやっと瀬菜が反応を示してくれた。
「──たち、ばな……くん?」
「瀬菜ッ、その呼びかたは切ないな。それとも……もう、俺を呼ぶのは嫌?」
ずっと他人行儀に呼ばせてしまっていた。瀬菜はきっと『立花君』と名を呼ぶ度に、こんな風に何度も胸を締めつけられていたのだ。
痛かったよね……。
今のこの一度で痛いんだ……切ないんだ……。
一ヶ月もずっと……悩んで……苦しんで……。
みるみると瀬菜の大きな瞳が潤み、ビー玉のような大粒の涙が溢れ出す。またこうして俺が泣かせてしまった。
「ゆぅとぉ……おれ──ッ、おれ……っ」
「瀬菜……ごめん……もう忘れたりしない。ひとりにさせない……だから──俺を許してくれる?」
コクコクと頷く瀬菜は俺に抱きつき、我慢の限界だったのか、大きな声を上げて泣き出してしまった。ギュッと強く抱きしめながら、何度も謝罪を口にした。
すぐに駆け寄り先輩を引きずり下ろしたくなるが、諦めたようなか細い声に俺の足はその場から動けずにいた。
これはすべて自分が招いてしまったこと。
それでも、奪われたくはない──!
グッと拳を握り締め、怒りを抑え込む。静かに瞳を閉じ細く長い呼吸を繰り返すと、目を見開き環樹先輩と視線を合わせた。
「ククッ……、悪くないね……君のそういう顔は中々見られないから。僕のこと殴りたい?」
勝ち誇った様子で、環樹先輩は俺に向けてそう言ってきた。
「ええ……今すぐにでも殴りたくて仕方ないのに、抑えられている自分が不思議です」
なんの不思議もない。
自分が先輩に殴り掛からないのは負い目があるからだ。
俺が動かないのをいいことに、先輩は身を屈め頬にキスを落とし、なにかを囁いていた。
「本当に……いい加減にしてくださいよ」
明らかに嫌がらせをして楽しんでいる環樹先輩に、若干の怒気を孕んだ声を出す。
先輩も人が悪い……まるでタイミングを見計らったかのような行動だ。俺との会話遊びを始める先輩に合わせ、余裕の自分を演じると、それも筒抜けなのか、トンと肩に拳を押し付け励まされた。
「待たせすぎだよ。けど、すべてを君に返そう」
環樹先輩は珍しく穏やかな笑顔で小さくそう呟くと、俺の手のひらにラビたんをポトリと落とし、生徒会室を静かに出て行った。
大きな丸い瞳が、瞬きもせず俺を見つめている。
ぷくりと膨らむ唇は仄かに開き震え、怯えているようにも見える。長い黒髪とスカートは乱れ、そこらか覗く細い脚はとても淫らで欲情を誘う。
画像も可愛かったが、実物はもっと可愛い。
触れても……大丈夫だろうか……。
拒絶されないだろうか……。
ゆっくりと近付き跪くと、硬直したままの華奢な身体をそっと抱きしめる。自分の腕の中に居る存在を感じると、目頭が熱くなり腕に力を込めてしまう。
最後に抱きしめたのはいつだったか。少し痩せたのではないだろうか。こんな風にしてしまった自分を、受け入れてくれるだろうか……。
「──瀬菜……」
発した自分の声が震えうわずっている。
なんてみっともないのだろう。
「……ごめん……瀬菜」
上手く声を出せない。
怖くて怖くて堪らない。
「ずっと、ひとりにして……ごめんね?」
「辛い思いさせて……ごめんね?」
「瀬菜を忘れてしまって……ごめんね?」
何度謝罪を口にしても足りない。
少しすると、震える声でやっと瀬菜が反応を示してくれた。
「──たち、ばな……くん?」
「瀬菜ッ、その呼びかたは切ないな。それとも……もう、俺を呼ぶのは嫌?」
ずっと他人行儀に呼ばせてしまっていた。瀬菜はきっと『立花君』と名を呼ぶ度に、こんな風に何度も胸を締めつけられていたのだ。
痛かったよね……。
今のこの一度で痛いんだ……切ないんだ……。
一ヶ月もずっと……悩んで……苦しんで……。
みるみると瀬菜の大きな瞳が潤み、ビー玉のような大粒の涙が溢れ出す。またこうして俺が泣かせてしまった。
「ゆぅとぉ……おれ──ッ、おれ……っ」
「瀬菜……ごめん……もう忘れたりしない。ひとりにさせない……だから──俺を許してくれる?」
コクコクと頷く瀬菜は俺に抱きつき、我慢の限界だったのか、大きな声を上げて泣き出してしまった。ギュッと強く抱きしめながら、何度も謝罪を口にした。
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