349 / 716
幕間 Piece《悠斗side》
10
しおりを挟む***
朝はたまに一緒に登校するものの、柳君とそれ以外で会うことはなかった。
テスト勉強……大丈夫かな?
解らないところがあったら相談すると言っていたが、柳君から連絡が来ることはなかった。やはり俺では頼りないのだと、帰って来ればテスト勉強で気分を紛らわせた。
最近必要以上に記憶を追いかけるのもやめていた。不安が増幅し、余計にブレーキが掛かってしまう気もしたのと、病院で無理に引き出そうとすれば、精神的に負担がかかると注意を受けたのだ。確かに無理に思い出そうとすると、頭痛に襲われ現実とイメージが混同し、なにが真実なのかあやふやになっていた。
だからって思い出したくない訳じゃないけど……。
あーあ……柳君に会いたいな……。
この間抱きしめたとき、いい匂いがした。
白い肌を舐めたとき、エロい声だったっけ……。
あっ……うそ……やば……。
柳君のことを少し思い出しただけで、自分の息子が元気になっていることに呆れる。
そっと取り出し、数度擦ればすぐに射精感が込み上げてくる。
「……んっ……ッ!」
ビクっと身体を震わせ、急いでティッシュをあてがうと、ビュッ、ビュッ……と濃い精液が溢れ出す。あまりにも早い射精に、最近全くしていなかったなと苦笑い。
しかも自分は今、柳君で自慰をしていた。罪悪感を覚えながらも、可愛いく頰を染める柳君の顔を浮かべただけで、まだ萎えないペニスに指を絡めてしまう。
柳君は自分でしたりするかな?
どんな風にするかな……。
「ハッ、んっ……」
きっと……涙目で……こうやって……。
あの小さな手で……。
シコシコと竿を擦り、亀頭とカリを抉りながら柳君の涙に濡れた顔を思い浮かべる。
『あっ……立花、くんッ……やぁッ! だ、ダメッ……あぅ』
可愛い……なんであんな可愛いのかな……。
快感に委ねる柳君は、綺麗なんだろうな……。
どこもかしこも敏感で……。
泣きながら……。
「イク──ッ!」
荒い息を吐きながら、手のひらを拡げる。
二回目だと思えない精液が指先を伝い床に落ちていく。
「……すご……ごめんね……柳君……」
ここには居るはずのない柳君に謝罪する。性欲は衰えることはない。好きな子を思えば思うほど悪化する身体。
自分でも気持ち悪いと思うのだ。柳君がこんなことを知れば、軽蔑されてしまう。素早く白濁を拭うと、スウェットの中にそれを仕舞い込んだ。
ダメだ……今日はもう寝よう……。
その後勉強を続けたものの、柳君を浮かべては頭を振り集中しようとするが、全く集中できず早目にベッドに潜り込み、悶々とする身体を持て余していた。
***
柳君に会えない時間が増えると、補うように柳君で自慰をする。そんな日が何日も続いていた。罪悪感を覚えながらも止まらない。飢えている……そんな言葉がしっくりくる。
それと同時に柳君と一緒に居るときは、真面に顔を見れなくなってしまう。朝メッセージを送り、返事がないときには迎えに行ったが、返事があるときは一緒に登校しないようにしていた。
これは柳君不足だ……。
テスト期間になると、ほとんど一緒に過ごす時間はなく、一生会えない不安に苛まれる。どんよりと重い空気を背中に纏い、淡々とした毎日を過ごしていた。
「なんだよ悠斗。お前、最近うざいんだけど」
「環樹先輩もだけど、みんなため息ブームなの?」
「環樹先輩もって……一緒にされたくないんだけど……」
どうやらあちらこちらでため息が聞こえてくるらしい。
そんなつもりはないが、勝手に口から飛び出すのだ。
「瀬菜ロスだろ……どうせ……」
「どうせって、どうせそうですよ」
「柳ちゃんは、ひとり真面目に勉強頑張っているっていうのに」
「えっ? ひとりで? 俺、最低……」
村上君からの情報で、さらにどんよりとする。
柳君で自慰をしていたことを深く反省したのだ。
「はぁ? お前なんかしたの?」
「王子の輝きが……薄い」
「柳君にはなにもしていないよ! ちゃんと距離だって俺なりに保っている。村上君! なにその表現……」
「王子はいつも自信に溢れてるから、輝きを失っていて新鮮~♪」
「フッ……最近特に酷いよな」
「俺だって色々考えているんだ……」
もし自分が以前柳君にストーカーのように付き纏っていた人間だったら。もし酷いことを言って傷つけていたなら。
柳君があまり自分に懐いてくれない理由を考えていた。実際それを知っているのは柳君で、こんなことを考えても仕方がないとはいえ、依然として埋まらない記憶に焦りを感じていた。
0
お気に入りに追加
237
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
愛する者の腕に抱かれ、獣は甘い声を上げる
すいかちゃん
BL
獣の血を受け継ぐ一族。人間のままでいるためには・・・。
第一章 「優しい兄達の腕に抱かれ、弟は初めての発情期を迎える」
一族の中でも獣の血が濃く残ってしまった颯真。一族から疎まれる存在でしかなかった弟を、兄の亜蘭と玖蘭は密かに連れ出し育てる。3人だけで暮らすなか、颯真は初めての発情期を迎える。亜蘭と玖蘭は、颯真が獣にならないようにその身体を抱き締め支配する。
2人のイケメン兄達が、とにかく弟を可愛がるという話です。
第二章「孤独に育った獣は、愛する男の腕に抱かれ甘く啼く」
獣の血が濃い護は、幼い頃から家族から離されて暮らしていた。世話係りをしていた柳沢が引退する事となり、代わりに彼の孫である誠司がやってくる。真面目で優しい誠司に、護は次第に心を開いていく。やがて、2人は恋人同士となったが・・・。
第三章「獣と化した幼馴染みに、青年は変わらぬ愛を注ぎ続ける」
幼馴染み同士の凛と夏陽。成長しても、ずっと一緒だった。凛に片思いしている事に気が付き、夏陽は思い切って告白。凛も同じ気持ちだと言ってくれた。
だが、成人式の数日前。夏陽は、凛から別れを告げられる。そして、凛の兄である靖から彼の中に獣の血が流れている事を知らされる。発情期を迎えた凛の元に向かえば、靖がいきなり夏陽を羽交い締めにする。
獣が攻めとなる話です。また、時代もかなり現代に近くなっています。
なんか金髪超絶美形の御曹司を抱くことになったんだが
なずとず
BL
タイトル通りの軽いノリの話です
酔った勢いで知らないハーフと将来を約束してしまった勇気君視点のお話になります
攻
井之上 勇気
まだまだ若手のサラリーマン
元ヤンの過去を隠しているが、酒が入ると本性が出てしまうらしい
でも翌朝には完全に記憶がない
受
牧野・ハロルド・エリス
天才・イケメン・天然ボケなカタコトハーフの御曹司
金髪ロング、勇気より背が高い
勇気にベタ惚れの仔犬ちゃん
ユウキにオヨメサンにしてもらいたい
同作者作品の「一夜の関係」の登場人物も絡んできます
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる