王子×悪戯戯曲

そら汰★

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幕間 君は僕のお姫様《悠斗side》

03

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 美久とのゲームは、自ら男の子と言うのは禁止で、「僕」「俺」という表現もNGワードだった。一週間経ってしまったので、当然僕の負けは確定された訳だけど……。逆に一ヶ月乗り越えれば引き分けで、またゲームの見直しができるはずだ。

 ここまで一緒に居て気付かないって……。
 せな君は結構鈍感なのかな。
 そういえば……せな君って……。

「せな君、せな君ってどうやって漢字書くの?」
「どうやって? えっと……」

 空中で一生懸命空気に書くせな君。
 なんて可愛いのだろう。

「紙とえんぴつある?」
「あ、うん! ……難しい漢字だね? ……はな? ……僕、まだ漢字難しくて……」
「立花悠斗。こうやって書くんだ。せな君は?」
「へぇ~なんかカッコいいね! 僕は……えっと……うーんと……こんなだったかな?」

 はちゃめちゃな漢字。
 ニュアンスはなんとなく理解できる。

「ああ、これちょっと違う。こうかな?」

 紙にせな君が書いたのを推測して、「柳瀬菜」と書き直すと、せな君は興奮した様子でまん丸い瞳をキラキラさせる。

「凄い! そう、これ! 僕の名前! ゆうちゃんは綺麗だし、頭もいいね!」
「合っていた? お勉強の時間に母さんが教えてくれるんだ。せな君のほうのが綺麗な名前だよ」
「えーー。なんかさ、女の子みたいでいやだって、お母さんに言ったんだ。お花っぽくない?」
「そんなことないよ。ほら二人ともお花が咲いてる」
「えへへ……本当だ! お揃いだね! ゆうちゃんがいいって言うなら、好きになれるかも……へへっ」

 好きって言われた……。あれ?
 今……心臓がギュゥってなった……。
 おかしいな……もしかして僕の身体、もっと悪くなっちゃったのかな……。

「ゆうちゃん? お顔真っ赤だよ? 大丈夫?」
「うん、平気……瀬菜君、また明日も遊ぶ?」
「うん‼ 僕、ゆうちゃんともっと仲良しになりたい! そうだ! 僕のこと、瀬菜って呼んで!」
「瀬菜……なんか恥ずかしいな……」

 そう言うとせな君は僕の手をギュッと握ってきた。
 柔らかくて温かい。僕より少し大きな手。

 あっ……まただ……。
 心臓が痛い……。

「えへへ……すぐに慣れるよ!」
「なら……ゆうちゃんじゃなくて悠斗って呼んでくれる?」
「それはダメ! ゆうちゃんはゆうちゃんだから♪」
「クスッ……変なの……」

 少し強引で、でも仲良くなろうと必死で、そんな瀬菜君を見ていると胸が締め付けられる。握られた手のひらの感触。ピリピリと痺れて感覚が曖昧。
 家に帰って母さんに胸が痛いのが取れないと言うと、慌てた様子で熱を測ったりされた。もちろん平熱で、念のため病院にも連れて行かれたが問題はなかった。

「悠くん? どんなときに痛くなるの?」
「瀬菜君……瀬菜と一緒のときは酷い気がする」
「あら、イジメられたり……してる訳ないわね。毎日遊んですっかり仲良しだものね?」
「瀬菜君はイジメなんてしないよ! 子犬みたいで……凄く……凄く可愛いんだ……」

 ボソリと呟く僕に、母さんは目を丸めて驚いている。

「ふふふ……悠くんってばおませさんね。そうね、お母さんびっくりしちゃったけど、悠くんが望むなら反対しないわよ? 悠くんがもう少し大きくなったら、その意味も分かるかしら?」
「えっ? なに⁉ どうして今教えてくれないの⁉」
「内緒よ? でも、ここが痛いのは病気じゃないから安心しなさい?」
「病気じゃないなら、明日も瀬菜君と遊んで平気だよね?」

 ニコリと微笑む母さんは、僕の頭を撫でながらもちろんよと言ってくれた。僕は毎日のように瀬菜君と遊んだ。時間が経つにつれて、自然と瀬菜と呼べるようにもなった。そんな僕に瀬菜は喜んでくれた。
 瀬菜は僕より少し背が高い。少し悔しかったけど、追い付けるようにご飯もいっぱい食べた。母さんも父さんも美久も、僕が沢山食べることに凄く驚いていた。元々小食で熱を出しやすかったけれど、最近は体重も増え調子のいい日が続いていた。
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