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第9幕 王子と王子
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「まだ具合悪い?」
「もう大丈夫……けどお水もう少し貰っていい?」
ゆっくりと起き上がる悠斗に、コップを渡すとコクコクと飲み干しフーッと息を吐く。赤みが刺した顔色にひとまず安心する。
「病院行く?」
「ううん……月曜日に検診があるし、今は問題ないから」
そうは言うものの、心配は心配。悠斗が体調を崩すことは小さい頃は別にして、今まであまりなかった。もしまた同じような症状が出たら、大丈夫と言われても引きずって病院に行こうと思った。
コップを片そうと立ち上がろうとすると、悠斗に腕を取られ、やはり具合が良くないのではと不安になってしまう。
「柳君……柳君と……僕は……イヤ……ああ、そう指は大丈夫?」
「えっ? あーー! 忘れていた‼」
「まだ血出ているよ? 結構切ったんじゃない?」
「そうじゃなくて! シャツ‼ 脱いで‼」
「えっ……その……ずいぶん積極的だね? 先に絆創膏貼らないと……」
「あ、そっか……」
冷水で指に付いた血を流すと、悠斗がガーゼで拭きとり消毒をしてから、絆創膏を貼ってくれる。傷を見る限りそこまで深くはなさそうだ。
「立花君、シャツ脱いで? 俺の血が付いちゃって……洗うから」
「本当だ。これぐらいあとでも平気だよ」
「イヤ、その……背中にも……ホラー映画みたいだから。なにかほかに着るの出すからちょっと待っていて!」
悠斗にトレーナーを渡し着替えてもらう。
「わー……これは恐怖だな……」
「だから言ったじゃん! ホラーでしょ?」
「うん。殺人事件に遭遇したみたい」
「これ洗って明日にでも返すね?」
先に浸け置きをしておこうと、シャツを広げていると悠斗は思わぬことを言ってきた。
「……ねぇ、今日泊まってもいい?」
「へっ?」
「あと……もう一回……」
フワリと抱きしめられてしまう。
咄嗟のことに目を丸めるが、どこか様子がおかしい。
「──不安……なんだ……自分でも良く分からないけど……こんなの初めてで……」
震える悠斗が今にも泣きそうな声で呟く。悠斗がなに対して不安を感じているのか、俺には分からなかったが、今の悠斗をひとりにしてはいけないのではと直感する。
「……立花君……俺、なにもできないけどさ、好きなだけ居てくれていいよ?」
「ありがとう……柳君。優しいね……」
耳元で囁く悠斗からゆっくり離れる。
「えへへ……なら明日アイス奢ってね?」
「寒いのにアイスなの?」
「そうだよ? 寒いって言いながら食べるのが贅沢!」
「風引いちゃいそう。けどもし風邪引いたら僕が看病するね?」
「さっきも言ったけど、俺丈夫だから。ここ数年風邪なんて引いたことないし! それはそうと……どうしよっか?」
「ん?」
「安静にしながらだと……やっぱ、DVD鑑賞かな?」
キョトンとする悠斗を二階の部屋へと誘うと、なに観る? と確認する。とはいえ俺が持っている映画はほとんどホラー映画だ。そんな中、夏に観たホラー映画を悠斗はチョイスした。
これを選ぶとは……本能なのか?
一緒に居ると過去を辿られているのは、まるで自分のような気がしてしまう。今日一日でどれだけ辿っただろうか。流れる映像を観ながら、当時のことを思い出す。
悠斗がさり気無く買って来てくれたドリンクとポップコーン。ドキドキとしながら怖いもの見たさで、次はどうなるんだとストーリーを楽しんだ。映画が終わると二人でどのシーンが怖かったと、興奮しながら話をした。遠いようで近い過去。
「まだ一年も経ってない……」
「うん……そうだよね……恐怖は半減かな……」
「もう大丈夫……けどお水もう少し貰っていい?」
ゆっくりと起き上がる悠斗に、コップを渡すとコクコクと飲み干しフーッと息を吐く。赤みが刺した顔色にひとまず安心する。
「病院行く?」
「ううん……月曜日に検診があるし、今は問題ないから」
そうは言うものの、心配は心配。悠斗が体調を崩すことは小さい頃は別にして、今まであまりなかった。もしまた同じような症状が出たら、大丈夫と言われても引きずって病院に行こうと思った。
コップを片そうと立ち上がろうとすると、悠斗に腕を取られ、やはり具合が良くないのではと不安になってしまう。
「柳君……柳君と……僕は……イヤ……ああ、そう指は大丈夫?」
「えっ? あーー! 忘れていた‼」
「まだ血出ているよ? 結構切ったんじゃない?」
「そうじゃなくて! シャツ‼ 脱いで‼」
「えっ……その……ずいぶん積極的だね? 先に絆創膏貼らないと……」
「あ、そっか……」
冷水で指に付いた血を流すと、悠斗がガーゼで拭きとり消毒をしてから、絆創膏を貼ってくれる。傷を見る限りそこまで深くはなさそうだ。
「立花君、シャツ脱いで? 俺の血が付いちゃって……洗うから」
「本当だ。これぐらいあとでも平気だよ」
「イヤ、その……背中にも……ホラー映画みたいだから。なにかほかに着るの出すからちょっと待っていて!」
悠斗にトレーナーを渡し着替えてもらう。
「わー……これは恐怖だな……」
「だから言ったじゃん! ホラーでしょ?」
「うん。殺人事件に遭遇したみたい」
「これ洗って明日にでも返すね?」
先に浸け置きをしておこうと、シャツを広げていると悠斗は思わぬことを言ってきた。
「……ねぇ、今日泊まってもいい?」
「へっ?」
「あと……もう一回……」
フワリと抱きしめられてしまう。
咄嗟のことに目を丸めるが、どこか様子がおかしい。
「──不安……なんだ……自分でも良く分からないけど……こんなの初めてで……」
震える悠斗が今にも泣きそうな声で呟く。悠斗がなに対して不安を感じているのか、俺には分からなかったが、今の悠斗をひとりにしてはいけないのではと直感する。
「……立花君……俺、なにもできないけどさ、好きなだけ居てくれていいよ?」
「ありがとう……柳君。優しいね……」
耳元で囁く悠斗からゆっくり離れる。
「えへへ……なら明日アイス奢ってね?」
「寒いのにアイスなの?」
「そうだよ? 寒いって言いながら食べるのが贅沢!」
「風引いちゃいそう。けどもし風邪引いたら僕が看病するね?」
「さっきも言ったけど、俺丈夫だから。ここ数年風邪なんて引いたことないし! それはそうと……どうしよっか?」
「ん?」
「安静にしながらだと……やっぱ、DVD鑑賞かな?」
キョトンとする悠斗を二階の部屋へと誘うと、なに観る? と確認する。とはいえ俺が持っている映画はほとんどホラー映画だ。そんな中、夏に観たホラー映画を悠斗はチョイスした。
これを選ぶとは……本能なのか?
一緒に居ると過去を辿られているのは、まるで自分のような気がしてしまう。今日一日でどれだけ辿っただろうか。流れる映像を観ながら、当時のことを思い出す。
悠斗がさり気無く買って来てくれたドリンクとポップコーン。ドキドキとしながら怖いもの見たさで、次はどうなるんだとストーリーを楽しんだ。映画が終わると二人でどのシーンが怖かったと、興奮しながら話をした。遠いようで近い過去。
「まだ一年も経ってない……」
「うん……そうだよね……恐怖は半減かな……」
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