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第9幕 王子と王子
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「もしもし? 終わった?」
『うん、お待たせ。今どこに居るの?』
「アクセサリーコーナーの、イヤフォンジャックとかストラップとかあるところ」
『なら、そっち向かうね』
「うん、それじゃ……」
電話を切ろうとすると慌てた様子で止められる。
『柳君! 待って! 切らないでこのまま……話そう? 新しいスマホだから試したくて。それにね、柳君が一番目の登録だから嬉しくて』
「へへっ……変なの。電池すぐになくなっちゃうよ?」
『ふふっ……確かに。モバイルバッテリーも買わないと』
「ああ、それなら近くに──」
「こら、動いちゃダメでしょ? 見つけられなくなっちゃう」
待っていた場所から、モバイルバッテリーはあっちにと思い、足を踏み出したところで悠斗に腕を掴まれた。条件反射とは恐ろしいものだ。
「あっ……ごめん。つい……へへっ」
「クスッ、本当に柳君は……」
俺なんか変?
コテっと頭を横に倒して「なに?」と聞けば、爽やかな微笑みを返され「ううん、なんでもない」と言われた。それから悠斗は圧巻の声を上げ吊り棚を見渡した。
「それにしても凄い種類」
「だよね。イヤホンジャック、猫とかサイはあったよ?」
「本当に探してくれてたの? ありがとう。……でも、ウサギさんはないのか……」
寂しげにボソリと呟く悠斗。そんなにウサギが好きだっただろうか。
「ウサギ好きなの?」
「ん? どうかな……好きなのかな? それよりも保護シールとケースとバッテリー探してもいい?」
「ははっ、なんで疑問形? おかしい。それならあっちに……」
「ふふっ……柳君、店員さんみたいだね?」
「どうぞ、こちらですお客様」
冗談を言いつつ、目当てを物色し各コーナーを案内していく。お会計を済ませたところで、お腹空いたなと思うと、お腹がグーグー主張しだす。
「お腹減ったね。上にレストラン街あるみたいだし、お昼にしよ?」
「もしかして……聞こえた?」
「ふふっ、もう助けて~ってね」
「ははは……恥ずかしい……」
フロアの案内板には様々な料理の写真が並んでいる。
「立花君は好きな食べものなに?」
「僕は嫌いなものあまりないけど、凄い好きってのもあんまり。強いて言うなら和食かな。柳君は?」
「好き嫌いないなんて偉いね。俺は甘いものが好き」
「ふふっ、それも柳君っぽい」
「ぽいって、俺どんなイメージなの?」
「ん? ふふふ……内緒。どれにするか決まった?」
どれにしようか迷ってしまう。写真を見る限り全て美味しそうに見える。
「ん~俺、優柔不断なんだ。そうだな~、トンカツ‼」
「あはは……まさかのチョイスだね」
「だから、俺どんなイメージなの!」
「可愛いものとセットみたいな?」
「野菜不足なんだ! キャベツいっぱい食べれるし、お米もお味噌汁もおかわりできる!」
「そんなにいっぱい食べるの? けどそっか……人参じゃなくてもいいのか……」
「人参? トンカツと人参は合わなくない?」
「ああ、ひとり言だから気にしないで?」
ロースカツセットを頼み、キャベツとお味噌汁を二度ほどお代わりする俺を、悠斗はポカーンとしながら「柳君は細いのに意外と食べるんだね」と苦笑いしていた。ご飯を食べたあとは、折角だからと電気街をブラブラする。
「いかがですか~♪ メイド喫茶メイドスターです~♪」
メイドの格好をした女の子が寒そうな中、チラシを配る姿をジッと見つめ、俺もこんなだったのかな……と客観的に観察してしまう。
「柳君はメイドさんに興味があるの?」
「いや、そういう訳じゃないけど……」
悠斗の唐突な質問にドキッとしている自分が居る。
「メイドさんの衣装って本当に可愛いよね。入ってみる?」
「ち、違くて。てか入らない! 本当にご主人様帰って来たとか騒ぎになりそう!」
「騒ぎ? なにそれ? ああ、でも柳君があんな格好したら、きっと凄く似合うだろうな」
「立花君は王子だから! それに俺が着ても似合わない!」
「えぇー、残念……絶対似合うのに……」
『うん、お待たせ。今どこに居るの?』
「アクセサリーコーナーの、イヤフォンジャックとかストラップとかあるところ」
『なら、そっち向かうね』
「うん、それじゃ……」
電話を切ろうとすると慌てた様子で止められる。
『柳君! 待って! 切らないでこのまま……話そう? 新しいスマホだから試したくて。それにね、柳君が一番目の登録だから嬉しくて』
「へへっ……変なの。電池すぐになくなっちゃうよ?」
『ふふっ……確かに。モバイルバッテリーも買わないと』
「ああ、それなら近くに──」
「こら、動いちゃダメでしょ? 見つけられなくなっちゃう」
待っていた場所から、モバイルバッテリーはあっちにと思い、足を踏み出したところで悠斗に腕を掴まれた。条件反射とは恐ろしいものだ。
「あっ……ごめん。つい……へへっ」
「クスッ、本当に柳君は……」
俺なんか変?
コテっと頭を横に倒して「なに?」と聞けば、爽やかな微笑みを返され「ううん、なんでもない」と言われた。それから悠斗は圧巻の声を上げ吊り棚を見渡した。
「それにしても凄い種類」
「だよね。イヤホンジャック、猫とかサイはあったよ?」
「本当に探してくれてたの? ありがとう。……でも、ウサギさんはないのか……」
寂しげにボソリと呟く悠斗。そんなにウサギが好きだっただろうか。
「ウサギ好きなの?」
「ん? どうかな……好きなのかな? それよりも保護シールとケースとバッテリー探してもいい?」
「ははっ、なんで疑問形? おかしい。それならあっちに……」
「ふふっ……柳君、店員さんみたいだね?」
「どうぞ、こちらですお客様」
冗談を言いつつ、目当てを物色し各コーナーを案内していく。お会計を済ませたところで、お腹空いたなと思うと、お腹がグーグー主張しだす。
「お腹減ったね。上にレストラン街あるみたいだし、お昼にしよ?」
「もしかして……聞こえた?」
「ふふっ、もう助けて~ってね」
「ははは……恥ずかしい……」
フロアの案内板には様々な料理の写真が並んでいる。
「立花君は好きな食べものなに?」
「僕は嫌いなものあまりないけど、凄い好きってのもあんまり。強いて言うなら和食かな。柳君は?」
「好き嫌いないなんて偉いね。俺は甘いものが好き」
「ふふっ、それも柳君っぽい」
「ぽいって、俺どんなイメージなの?」
「ん? ふふふ……内緒。どれにするか決まった?」
どれにしようか迷ってしまう。写真を見る限り全て美味しそうに見える。
「ん~俺、優柔不断なんだ。そうだな~、トンカツ‼」
「あはは……まさかのチョイスだね」
「だから、俺どんなイメージなの!」
「可愛いものとセットみたいな?」
「野菜不足なんだ! キャベツいっぱい食べれるし、お米もお味噌汁もおかわりできる!」
「そんなにいっぱい食べるの? けどそっか……人参じゃなくてもいいのか……」
「人参? トンカツと人参は合わなくない?」
「ああ、ひとり言だから気にしないで?」
ロースカツセットを頼み、キャベツとお味噌汁を二度ほどお代わりする俺を、悠斗はポカーンとしながら「柳君は細いのに意外と食べるんだね」と苦笑いしていた。ご飯を食べたあとは、折角だからと電気街をブラブラする。
「いかがですか~♪ メイド喫茶メイドスターです~♪」
メイドの格好をした女の子が寒そうな中、チラシを配る姿をジッと見つめ、俺もこんなだったのかな……と客観的に観察してしまう。
「柳君はメイドさんに興味があるの?」
「いや、そういう訳じゃないけど……」
悠斗の唐突な質問にドキッとしている自分が居る。
「メイドさんの衣装って本当に可愛いよね。入ってみる?」
「ち、違くて。てか入らない! 本当にご主人様帰って来たとか騒ぎになりそう!」
「騒ぎ? なにそれ? ああ、でも柳君があんな格好したら、きっと凄く似合うだろうな」
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