王子×悪戯戯曲

そら汰★

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第8幕 年越し湯けむり罰ゲーム?

08

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 はぁ……と白い息を吐き、痛みに顔を歪めると、大きな声が傾斜の上のほうから聞こえていた。

「瀬菜‼」

 俺を見つけるなり、慌てた様子の悠斗が駆け寄って来る。

「振り向いたら居ないし、大きな音するし! 怪我していない⁉」

 悠斗は俺を覗き込むように見下ろし、矢継ぎ早に言いながら頬に触れてくる。

「……うさぎ逃げちゃった……」
「うさぎ? それより! 痛いところはない⁉」
「んー平気、雪のクッションのおかげで結構元気」
「はぁ~~、もう! ビックリさせないでよ‼」

 少し怒った表情で身体を起こされると、ギュッと抱きしめられた。悠斗のぬくもりに、怒られているはずなのに嬉しくてヘラヘラと笑ってしまう。

「へへっ……ごめん……」
「……なんで笑っているの?」
「別に……自分のトロさに笑えただけ」
「本当に……瀬菜は良く転ぶんだから……立てる?」

 コクリと頷くと、悠斗に手を取られて立ち上がる。背中やお尻に付いた雪を払うと、手を差し出してくる悠斗。コテっと首を傾げると、手……と言われる。

「また転んで居なくなると困るから」
「困る?」
「困るの!」

 俺の手を強制的に握る悠斗は、傾斜をズンズンと登り始める。悠斗にしては強引で荒っぽい。平坦な道に出ると、繋いだ手をそのまま悠斗の上着のポケットに入れられた。
 雪で冷えた手がポカポカと温まり、見られたら恥ずかしいけれど、嬉しくてほっこりとする。
 先を歩いて進んでいた多澤と村上が二人ではしゃぎながら、俺達が遅れて来るのを待っている。遠くから大丈夫~~? と声を掛けられて、平気ーーと伝えると、少し距離を取って歩いてくれた。

 バス停まで戻りバスに乗り込むと、温泉街のお土産屋さんを探索し、冷えた身体には丁度いい鍋焼きうどんを食べる。それからカウントダウンに備え、旅館に早めに戻ることにした。


 観光から旅館に戻ると、これからの予定を決めていった。
 年越しはみんなで近くのお寺に行くことにしていた。夕食前と、夕食後はそれぞれ好きなように過ごそうということになった。

「なら、一旦解散。また夕食のときにな」
「俺は温泉行って、一眠りしよ~」
「おっ、なんだ結局そのパターンかよ。なら温泉一緒に行こうぜ」

 多澤と村上は、どうやら俺達に気を遣ってくれたようだ。悠斗と部屋へ入り、温かい緑茶を淹れて寛いだ。

「瀬菜、このあとはどうする?」
「んーーお茶飲んだら、温泉入りたい。寒くて身体ガチガチ」
「そうだよね。少し離れているけど、海が見える温泉が……ああ、ほらここ」

 旅館のフロアガイドを開いて、マップになっている温泉のある場所を悠斗が教えてくれる。敷地内に設置された数ある温泉の一つだ。建物の外に出て階段を下って行くと、露天風呂の小ぶりの温泉がいくつか点在している。

「貸切露天風呂だし空いているか分からないけど、行ってみない?」
「うん。露天風呂だと長湯できるし、海見ながらとか贅沢だな」

 そうと決まればと、浴衣に着替えて向かうことにした。この旅館は本当に広い。温泉だけで十種類もあるそうだ。全部を制覇するのは俺達には無理そうだが、観光しないで滞在時間一杯まで過ごすこともできる贅沢な旅館。
 露天風呂まで続く階段も、石を積み重ね風情がある造りで、雪除けに屋根付きで下駄でも滑らないように工夫がされていた。木々や四季の草花も植えられ綺麗に手入れがされている。
 階段の所々で道が別れ、それぞれの温泉に行けるようになっていた。小さな小屋の扉に札が掛けられており、空室と大きな文字が下げられている。札をフックから取り外すと、裏返して使用中の文字に変え中に入る仕組みだ。

「頭良いな。一目でわかるな」
「そうだね。それでも間違って入っちゃう人もいるから、内鍵閉めてくださいってなっていたよ」
「露天風呂貸し切りとか超贅沢! 空いていて良かったな!」
「うん。ほら寒いから中入って」
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