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第7幕 ドキドキ☆クリスマス
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鼻歌交じりで家に帰宅する。そんな俺を楽しそうに見ている悠斗が謎だ。
「ふふっ、瀬菜ってばご機嫌だね」
「うん! 俺ケーキこんなに大量に買ったの初めて♪」
ケーキは全部で六種類。
もっと買おうとする俺を悠斗が止め、全部半分にしようと言うので、六種類も食べられるならと渋々諦めたのだ。
「着いたら早速食べような!」
「紅茶を淹れる時間ぐらいちょうだいね?」
確かにケーキだけ食べていたら、お口直しに無糖の紅茶も欲しくなるはず。いいよと上からな物言いにも、悠斗はニコリとしながら先に食べないでねと控えめな対応だ。
電車を乗り継ぎ、見慣れた駅に辿り着く。外出は楽しい。特に行ったことのない場所はウキウキする。
今回の初クリスマスデートは、見たことがないものばかりで幸せいっぱいになれた。けれど、やはり地元が安心するのは、ずっとそこで暮していたからで、スーッと肩の力が抜けていく。
「ただいま」
玄関を開けた途端さらに気が抜け、どっと疲れがのし掛かり部屋まで進むのも億劫だ。
「おばさんもまだ帰っていないね? 上がっていい?」
「あ、うん。なんだよ他人行儀だな。一々聞くなよ!」
「ふふっ、一応ね……礼儀みたいな?」
「どうぞ、お上がりください。悠斗は紅茶係な。俺部屋温めとく!」
荷物を持って自室に向かうと暖房を入れ、冷え切った部屋を温める。荷物を解いて片付けをしながら、悠斗と自分のお土産を振り分ける。
村上の家に荷物を少し置いてきているので、お土産を渡しがてらあとで行こうかと思っていると、悠斗がティーセットをお盆に乗せて入って来た。
「偉い、片付けしていたの?」
「おぅ! そういうお前は、上がっていいかとか聞くくせに、しっかりうちのキッチン把握しているよな。笑えるんだけど!」
「そりゃ、一通りのことはね? それじゃ、ケーキパーティ始めようか」
「わーい! 待ってました~~♪」
ケーキが入った箱を開けると、色とりどりのツヤツヤと光る果物達が視覚から楽しませてくれる。滑らかに乗ったクリームが綺麗にデコレーションされ、見るからに美味しそうだ。まずは無難にショートケーキを選ぶ。
「やっぱりそれなんだね?」
「だって、イチゴが凄く酸っぱいときない?」
「あー確かにあるね。俺は……ラズベリータルトにしよ」
「ナイスチョイス! それも酸っぱいの多いもんな」
俺と悠斗が食べたイチゴとラズベリーは、熟しておらずやはり酸味が強かった。その酸っぱさに、二人で梅干しを食べたときの顔付きになる。すぐにクリームやカスタードを口に運び、甘さが酸味を中和すると、頬を緩ませ幸せ気分に浸った。
「ねぇ、デート楽しかった?」
「うん‼ 水族館は大きくて青いライトに照らされたキラキラな魚がいっぱいで、イルミネーションは綺麗だし最高に楽しかった♪」
「良かった。俺は瀬菜のまさかの姿に夢中になっちゃったな」
「あれは……特別、だからな! 俺、昨日行ったところで一番好きになれたの、やっぱりあの教会かな。なんだか心が洗われた感じで落ち着けたし、神秘的だった」
「俺もだよ。瀬菜とずっとあそこに居たいって思った」
「へへっ。でも悠斗……俺はさ……」
ポッと頬を赤らめ悠斗から視線を逸らす。
「……俺は、あの場所だけじゃなくても、ずっとお前と一緒に居たいよ」
ボソリと呟くと、悠斗が息を飲むのが聞こえた。
「──瀬菜……俺もだよ? ずっと……」
くしゃりと微笑む悠斗は、潤んだ瞳で俺を見つめてくると、そっと唇を重ね優しいキスを与えてくれた。
一頻りキスをしお互いの愛を確かめ合うと、コツンと額を重ねてクスリと笑い合う。
「甘いキスだね」
「うん……凄く甘くて美味しいな」
「クスッ……もっと甘くなるように、魔法のケーキ食べようか?」
「馬鹿……キスのために食べる訳じゃないんだからな」
甘い甘いクリスマス。
こんな日々がずっとずっと続きますように……と、そっと心の中で幸せを願っていた。
「ふふっ、瀬菜ってばご機嫌だね」
「うん! 俺ケーキこんなに大量に買ったの初めて♪」
ケーキは全部で六種類。
もっと買おうとする俺を悠斗が止め、全部半分にしようと言うので、六種類も食べられるならと渋々諦めたのだ。
「着いたら早速食べような!」
「紅茶を淹れる時間ぐらいちょうだいね?」
確かにケーキだけ食べていたら、お口直しに無糖の紅茶も欲しくなるはず。いいよと上からな物言いにも、悠斗はニコリとしながら先に食べないでねと控えめな対応だ。
電車を乗り継ぎ、見慣れた駅に辿り着く。外出は楽しい。特に行ったことのない場所はウキウキする。
今回の初クリスマスデートは、見たことがないものばかりで幸せいっぱいになれた。けれど、やはり地元が安心するのは、ずっとそこで暮していたからで、スーッと肩の力が抜けていく。
「ただいま」
玄関を開けた途端さらに気が抜け、どっと疲れがのし掛かり部屋まで進むのも億劫だ。
「おばさんもまだ帰っていないね? 上がっていい?」
「あ、うん。なんだよ他人行儀だな。一々聞くなよ!」
「ふふっ、一応ね……礼儀みたいな?」
「どうぞ、お上がりください。悠斗は紅茶係な。俺部屋温めとく!」
荷物を持って自室に向かうと暖房を入れ、冷え切った部屋を温める。荷物を解いて片付けをしながら、悠斗と自分のお土産を振り分ける。
村上の家に荷物を少し置いてきているので、お土産を渡しがてらあとで行こうかと思っていると、悠斗がティーセットをお盆に乗せて入って来た。
「偉い、片付けしていたの?」
「おぅ! そういうお前は、上がっていいかとか聞くくせに、しっかりうちのキッチン把握しているよな。笑えるんだけど!」
「そりゃ、一通りのことはね? それじゃ、ケーキパーティ始めようか」
「わーい! 待ってました~~♪」
ケーキが入った箱を開けると、色とりどりのツヤツヤと光る果物達が視覚から楽しませてくれる。滑らかに乗ったクリームが綺麗にデコレーションされ、見るからに美味しそうだ。まずは無難にショートケーキを選ぶ。
「やっぱりそれなんだね?」
「だって、イチゴが凄く酸っぱいときない?」
「あー確かにあるね。俺は……ラズベリータルトにしよ」
「ナイスチョイス! それも酸っぱいの多いもんな」
俺と悠斗が食べたイチゴとラズベリーは、熟しておらずやはり酸味が強かった。その酸っぱさに、二人で梅干しを食べたときの顔付きになる。すぐにクリームやカスタードを口に運び、甘さが酸味を中和すると、頬を緩ませ幸せ気分に浸った。
「ねぇ、デート楽しかった?」
「うん‼ 水族館は大きくて青いライトに照らされたキラキラな魚がいっぱいで、イルミネーションは綺麗だし最高に楽しかった♪」
「良かった。俺は瀬菜のまさかの姿に夢中になっちゃったな」
「あれは……特別、だからな! 俺、昨日行ったところで一番好きになれたの、やっぱりあの教会かな。なんだか心が洗われた感じで落ち着けたし、神秘的だった」
「俺もだよ。瀬菜とずっとあそこに居たいって思った」
「へへっ。でも悠斗……俺はさ……」
ポッと頬を赤らめ悠斗から視線を逸らす。
「……俺は、あの場所だけじゃなくても、ずっとお前と一緒に居たいよ」
ボソリと呟くと、悠斗が息を飲むのが聞こえた。
「──瀬菜……俺もだよ? ずっと……」
くしゃりと微笑む悠斗は、潤んだ瞳で俺を見つめてくると、そっと唇を重ね優しいキスを与えてくれた。
一頻りキスをしお互いの愛を確かめ合うと、コツンと額を重ねてクスリと笑い合う。
「甘いキスだね」
「うん……凄く甘くて美味しいな」
「クスッ……もっと甘くなるように、魔法のケーキ食べようか?」
「馬鹿……キスのために食べる訳じゃないんだからな」
甘い甘いクリスマス。
こんな日々がずっとずっと続きますように……と、そっと心の中で幸せを願っていた。
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