王子×悪戯戯曲

そら汰★

文字の大きさ
上 下
261 / 716
第7幕 ドキドキ☆クリスマス

10

しおりを挟む
 お会計を済ませ品物を受け取ると、我慢した割に結構な量になってしまった。手にしていた荷物を悠斗がさり気なく奪ってしまう。自分も持つと言う前に悠斗が確認してくる。

「トイレは大丈夫?」
「あつ、うん。実は行きたいけど……どうしよう?」

 なんだかデジャブ……。
 学校じゃないし人も多いし……。

 外出先はこれが困る。女装でも男は男だ。女性用トイレに入る訳にはいかない。水族館を出てから人が少なそうなトイレを探すことにした。

「小さいところなら、人あまり来ないし大丈夫かな」
「うん、悠斗が見張ってて」

 同じビルの小さめなトイレに向かうと、丁度人が出て来たところだった。中を確認してもらい、超特急で用を済ます。鏡を見るとルージュが取れてしまっていたが、取り敢えず急いで外に出る。俺がトイレから出るとひとりこちらへ向かって来ていた。

「セーフ……俺、いつか痴女に間違えられそう。お化粧も治したかったけど」
「ふふっ、さっき入って行った人、表示を二度見してたよね。あそこ……座ろっか」

 フロアの端にある休憩スペースのソファーに座ると、悠斗が手際よく化粧直しをしてくれる。

「朝見たとき、綺麗にお化粧されていたから、村上君にやってもらったのかなって思ったけど、自分で頑張ったって聞いて嬉しかった」
「最初は不安だったけど、何度か変身しただろ? 見様見真似だけど……なんとかできたんだ。無理だったら手伝ってもらうつもりだったけど……マスカラが一番難しかった! あっ、でも村上の妹のマコちゃんが色々教えてくれたよ」
「そっか。女の子は頼りになるね。瞼ビューラーで挟まなかった?」
「挟んだ! 涙で見えなくなったし、下瞼にマスカラ付いちゃうし!」
「クスッ、想像できる。唇……ちょっと開けてストップね」

 ルージュを指に取ると、トントンと色を乗せてくれる。

「瀬菜は元々ピンクで綺麗な色だし、あんまり付けなくても十分だけどね。はい、パッてしてみて?」

 ルージュをパッパと唇で馴染ませると、ウイッグも整え直してくれた。

「可愛い。食べちゃいたいな……」
「折角直したのに……食べるのか?」
「ふふっ、そうだね。まだ勿体ないかな。時間あるしどうしようか? もう少し暗くなったらイルミネーションも見たいね?」
「うん! 見たい♪」

 この時期のイルミネーションはきっと綺麗に違いない。目をキラキラとする俺に、悠斗は頷くと考え込んでいた。

「そうだな……電車移動して……任せてもらってもいい?」
「うん。俺良く分かんないし、悠斗に任せた!」



 そのあとは電車に乗りどこかへと向かっていた。大きな駅に到着すると、俺はその規模の大きさに感嘆の声を上げた。再開発が進んでいるせいか、現代の最先端技術を使った液晶案内などが沢山設置されており様々な言語が表示されている。
 改札前の大きなエントランスには、クリスマスの飾りが豪華に飾られ、人々は皆足を止め、厳しい表情から笑顔が漏れていた。中心に置かれた天井まで届きそうな大きなツリーには、通りすがる観光客やイベントを楽しむカップルに思い出を提供していた。

「デカイ駅だな~。こんなところ来るの凄い久々!」
「外国の観光客も多いからね。色々開発が進んでいるね」
「人もいっぱい………これを見せたかったのか?」
「ううん。これは俺も知らなかった。話題になっているイルミネーションはここからすぐだけど、先にあっちに行ってみようかなって」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

壊れた番の直し方

おはぎのあんこ
BL
Ωである栗栖灯(くりす あかり)は訳もわからず、山の中の邸宅の檻に入れられ、複数のαと性行為をする。 顔に火傷をしたΩの男の指示のままに…… やがて、灯は真実を知る。 火傷のΩの男の正体は、2年前に死んだはずの元番だったのだ。 番が解消されたのは響一郎が死んだからではなく、Ωの体に変わっていたからだった。 ある理由でαからΩになった元番の男、上天神響一郎(かみてんじん きょういちろう)と灯は暮らし始める。 しかし、2年前とは色々なことが違っている。 そのため、灯と険悪な雰囲気になることも… それでも、2人はαとΩとは違う、2人の関係を深めていく。 発情期のときには、お互いに慰め合う。 灯は響一郎を抱くことで、見たことのない一面を知る。 日本にいれば、2人は敵対者に追われる運命… 2人は安住の地を探す。 ☆前半はホラー風味、中盤〜後半は壊れた番である2人の関係修復メインの地味な話になります。 注意点 ①序盤、主人公が元番ではないαたちとセックスします。元番の男も、別の女とセックスします ②レイプ、近親相姦の描写があります ③リバ描写があります ④独自解釈ありのオメガバースです。薬でα→Ωの性転換ができる世界観です。 表紙のイラストは、なと様(@tatatatawawawaw)に描いていただきました。

薫る薔薇に盲目の愛を

不来方しい
BL
代々医師の家系で育った宮野蓮は、受験と親からのプレッシャーに耐えられず、ストレスから目の機能が低下し見えなくなってしまう。 目には包帯を巻かれ、外を遮断された世界にいた蓮の前に現れたのは「かずと先生」だった。 爽やかな声と暖かな気持ちで接してくれる彼に惹かれていく。勇気を出して告白した蓮だが、彼と気持ちが通じ合うことはなかった。 彼が残してくれたものを胸に秘め、蓮は大学生になった。偶然にも駅前でかずとらしき声を聞き、蓮は追いかけていく。かずとは蓮の顔を見るや驚き、目が見える人との差を突きつけられた。 うまく話せない蓮は帰り道、かずとへ文化祭の誘いをする。「必ず行くよ」とあの頃と変わらない優しさを向けるかずとに、振られた過去を引きずりながら想いを募らせていく。  色のある世界で紡いでいく、小さな暖かい恋──。

ハッピーエンド

藤美りゅう
BL
恋心を抱いた人には、彼女がいましたーー。 レンタルショップ『MIMIYA』でアルバイトをする三上凛は、週末の夜に来るカップルの彼氏、堺智樹に恋心を抱いていた。 ある日、凛はそのカップルが雨の中喧嘩をするのを偶然目撃してしまい、雨が降りしきる中、帰れず立ち尽くしている智樹に自分の傘を貸してやる。 それから二人の距離は縮まろうとしていたが、一本のある映画が、凛の心にブレーキをかけてしまう。 ※ 他サイトでコンテスト用に執筆した作品です。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

無自覚両片想いの鈍感アイドルが、ラブラブになるまでの話

タタミ
BL
アイドルグループ・ORCAに属する一原優成はある日、リーダーの藤守高嶺から衝撃的な指摘を受ける。 「優成、お前明樹のこと好きだろ」 高嶺曰く、優成は同じグループの中城明樹に恋をしているらしい。 メンバー全員に指摘されても到底受け入れられない優成だったが、ひょんなことから明樹とキスしたことでドキドキが止まらなくなり──!?

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

処理中です...