王子×悪戯戯曲

そら汰★

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第7幕 ドキドキ☆クリスマス

06

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 待ち合わせ場所が見えるカフェで村上と朝食を取りながら悠斗の到着を待っていた。

「そろそろかな?」
「そうだよな……ちょっと見辛いな……。あっ、あれ悠斗だ!」
「おお、来たきた。なんつーか……絵になるね~♪」
「だろ? シンプルな服装なのに、立っているだけでカッコ良く見えるんだ」

 俺がそんなに早く来ないと思っているであろう悠斗は、壁際に立ちスマホを弄っている。黒の少し長めのコートに、この間プレゼントしたマフラーを巻いていた。濃いめのグレーのパンツに黒いラフな革の靴。紺色の革のトートバッグを肩に掛け、片手をポケットに突っ込みスマホを弄る姿は、爽やか王子そのものだ。
 普段の制服姿とは違う大人っぽさもあり、自分の恋人だが惚れ惚れしてしまう。

 サンドイッチを摘み、カフェオレを飲みながら村上と悠斗について話していると、二人組の女性が悠斗に声を掛けていた。

「あれ、明らかに……ナンパじゃね?」
「この短時間でとか……柳ちゃんとは違った意味でひとりにしちゃいけない気がする」
「そうだろ? 俺のこと言えないじゃん」
「まぁ、断るのは間違いないけど、相手が悪いと長引くよ?」

 話の内容までは分からないが、首を横に振ったり縦に頷いたりする悠斗に、二人の女性は離れる様子がない。悠斗も少し困り顔で珍しく無視を決め込んでいる。スマホを弄り出したと思えば、俺のスマホが震えメッセージを受信した。

「助けてコールかな?」
「……そうみたい。今着いたって」

 ずいぶん前に到着していたというのに、のんびり屋の俺を気遣い、待ち合わせ五分前にメールを寄越すとは悠斗らしい。

「もうちょい見ていたいけど、行ったら?」
「うん。村上、昨日と今日はありがとう!」
「全然! デート楽しんで来てね!」

 コクリと頷きニコリとして椅子から立ち上がると、バイバイと手を振る。
 どんな風に声を掛けようかと考えながら、助けを密かに求める悠斗の元へ向かった。


 近くに行くと女性がしつこく話し掛けていた。悠斗は完全無視体制で、下を向いてスマホ弄りに熱中している。どうやら俺にも気付いていない様子だ。

「ねぇねぇ、無視しないでよ~~」
「そんなところもクールでカッコいい♡」
「待ち合わせの子、中々来ないじゃない。ドタキャンだよきっと!」
「あと三分待って来なかったら、私達とデートして欲しいな♡」

 ドタキャンなんてしないし……勝手なこと言うな。
 三分って……カップラーメンか?
 麺が伸びたらマズイのか?
 少し伸びたぐらいが、美味しくて胃に優しい場合もあるんだぞ⁉
 三分以上粘ってるお姉さんは、ラーメンの汁もなくなって、もっとマズイだろが!

「私達意外とお買い得だと思うんだけどな」
「そうだよー。もう滅茶苦茶サービスしちゃうし♪」

 ひとり胸の内でブツブツ呟くと、意を決して声を掛ける。

「……お、お待たせ‼」

 俺へと視線が集まる。
 二人組の女性は綺麗系の大学生ぐらいで、お買い得というだけある容姿だった。そんなお姉さん達の視線を感じながら、悠斗にふわりと微笑みかける。

「────あ、うん……。全然、待っていない……ヤバ……」

 悠斗は驚いた様子で、言葉切れぎれに呟いていた。
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