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第6幕 計画は入念に、愛情込めて
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しおりを挟む「ただいまー」
「お邪魔しますー」
玄関を開けると室内はどういう訳かシーンと静まり返っていた。普段明るい声で迎えてくれるおばさんの声もない。それどころか真っ暗な家の様子に、悠斗と顔を見合わせ首を傾げてしまう。
出掛けてしまったのか……。せめて灯りを点けようとスイッチを押すが、部屋は明るくならない。何度かパチパチとスイッチを押しても反応しない状況に眉を寄せる。
「……停電でもしているのかな?」
「けど、ほかの家は明るかったぞ?」
「そうだよね……うちだけなら故障かな?」
「でも、おばさん達も居ないみたいだし……まさか……現実ホラー現象⁉︎」
「もう、瀬菜……ホラー映画観過ぎだから。電話してみるよ」
電話を掛け不安そうにする悠斗。
「……おかしいな。コールもしない」
「もしかしたらおばさん倒れてるのかも! 俺リビングのほう見てくるな!」
「あっ、ちょっと瀬菜待って!」
背中に悠斗の制止の声が聞こえるが、ひとり廊下を手探りでリビングに向かう。夕方とはいえ冬のこの時期は日が落ちるのが早く、灯りのない室には真っ暗だ。
悠斗は自身のスマホに電波が入っていることを確認すると、電波障害ではなさそうだと、スマホのライトを点灯させ俺を追いかけようとしていた。
「瀬菜ー。どこにいるの?」
「こっち!」
「こっちって……転ばないでよー」
お互いに大きな声で呼びかける。
そんな悠斗の耳に悲鳴が届いたのはすぐのことだった。
「……うわぁ~~‼︎」
「──瀬菜ッ‼︎」
バタバタと足音をさせながら、悠斗は俺の居るであろうリビングに向かい扉を開ける。真っ暗なリビングにライトを向けるが、人の気配が全くない。
「瀬菜? 冗談はやめてよ……」
ガサガサっと物音がし、音の鳴ったほうへと視線を向ける。ゴクリと唾を飲み込むと、テレビの画面がチカチカと点滅しだす。電気が復旧したのか、あちこちから電化製品がウィーンと音を立てながら起動し始める。
悠斗は音が鳴る度に視線を向け、不安そうに身体を強ばらせていた。けれど部屋の灯はやはり点灯されない。暗闇の中テレビがプツッと音を立て仄かに光を発する。黒い画面の中心に丸い白抜きの数字が表示され、カウントダウンが始まった。
悠斗は強張った頬を緩ませクスッと笑い、テレビに視線を向けながらソファーにゆっくりと腰掛けた。
『十一月十日AM五時三十二分』
カウントダウンを終えた画面には日付が表示される。それからパーっと明るくなり、生まれたばかりの悠斗が映し出された。一歳、二歳、三歳……と成長する悠斗の映像が、スローモーションで流れていく。十五歳の悠斗の映像がフェイドアウトするとまた画面は暗くなり、定番のお誕生日の音楽がオルゴール音で奏でられ、文字がふわりと浮かび上がる。
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