王子×悪戯戯曲

そら汰★

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第6幕 計画は入念に、愛情込めて

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「もう貸せ!」
「わっ、瀬菜‼︎ 取らないでよ‼︎」
「取らないよ……」

 それから悠斗の首にグルグルと巻き、本来の使い方でセットする。
 そうだ、コレは単なるマフラーだ。それ以上でもそれ以下でもない。

「えへへっ、暖かい♪ 誕生日がこの季節で良かった♪ 嬉しい……瀬菜ありがとう♡」
「そんなに喜んでもらえるなら、作った甲斐もあったよ」
「つ、作った? 凄い! いつ作ったの? これ本当に綺麗な色だね!」
「こっそりな! この糸見たとき、悠斗にぴったりだなって思ったんだ。ブルーマリーヌって色だよ?」
「ヤバイ……愛情たっぷり……ずっと大切にする」
「へへっ……悠斗のこれには負けるけどな」
「そんなことない……」

 悠斗くん、ずっと涙目だね……。
 可愛すぎなんだけど……。

 普段あまり見ない表情を今日は沢山見ている気がする。いつもの爽やか王子と変態王子はすっかりなりを潜めている。なんだかしんみりとしているので、マフラーを掴んで引き寄せるとちゅっと軽いキスを贈る。

「ほら、そろそろ学校行くぞ!」

 ブワッと真っ赤になる悠斗を置き去りに、肩に鞄を掛けると部屋をあとにする。しばらくするとなにかに打つかる大きな音がし、バタバタと悠斗が「瀬菜待って!」と叫ぶ声がする。
 一階に降りるとおばさんが「あら、行ってらっしゃい」と、こっそり俺にウィンクをして来る。俺もおばさんにニシシと笑い学校へと向かった。



 登校中はずっと隣でヘラヘラしている悠斗。視線が合う度に頬を赤くしている。可愛くて堪らないではないか。
 校門が見え始めると、俺はゴクリと唾を飲み黄色い歓声に備えた。

 ほら、やっぱり……。
 みんな手になにかを持っているよ?
 これは……無事教室に辿り着けるかな……。

 心にズンと重石が乗りかかってくる。モヤモヤとする心情にキュッと唇を噛み締めていると、悠斗が俺の頭をポンポンとしてきた。

「瀬菜、手出して?」
「えっ? 手?」

 ニコッとすると、悠斗は俺の手をギュッと握り締めてから小声で呟いた。

「走るよ?」
「ちょ、わぁっ‼︎」

 女子の群れを避けるように走り出す悠斗に手を引かれ、足がもつれそうになりながら下駄箱まで駆け抜ける。素早く靴を履き替えると、息を切らしながらまた教室まで全力疾走。

「到着ー♪ 頑張ったね! 朝からいい運動!」
「ハァハァ……おま……なんで……俺まで……ハァハァ……」
「ん? 瀬菜との時間を邪魔されたくなかったし」
「そう言ったって……ハァハァ……どうせどこかで……ハァハァ」

 ゼイゼイと切れぎれに言うと、悠斗は真面目な面差しを向けてくる。

「あとでちゃんとする。けど、瀬菜の前では嫌だから」
「いやって……てか、お前……なんで……息切れて……ない訳?」
「ふふっ、日頃の鍛錬?」
「言ってろ……」

 息が苦しい。それは走ったせいだけではない。
 悟られないように肩で息をしていると、村上が朝の挨拶をしてきた。

「柳ちゃん、王子おはぁ~♪ てか王子、そのマフラーの巻き方……王子にしてはなんつーか……」
「いいでしょ♡ 瀬菜に巻いてもらったから解くの勿体なくて」
「あー、そういうこと! その色似合ってるね!」
「巻き方? 変?」
「瀬菜変じゃないよ! 村上君の美意識の問題じゃないかな?」
「いや……まぁどんな巻き方でも王子は卒なくこなすよね……はは……」

 村上に遠回しにおかしいと言われてしまう。
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