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第6幕 計画は入念に、愛情込めて
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「もう……やめてよ……」
「ダーメ、もうちょっとだけ」
「これ以上したら……俺……」
「ほら、ちゃんとお口開けて?」
口を少し開けて上を向くと、筆を当てて綺麗に塗りつけられていく。
ああ、完璧に女子じゃないか……。
いつの間にお前はそんなテクニックを身につけた?
流石に家から着替えて行くのは恥ずかしいと、祐一さんの家に着いてから着替え仮装をしていた。以前着たメイド服は俺をあっという間に女子に見立て、最後の仕上げに悠斗が化粧を施してくれている。真っ赤なルージュを形良く塗り完成だ。
コンコンと控え目な扉を叩く音がし、祐一さんが声を掛けてくる。
「こっちは準備できたけど、そっちはどう?」
「今終わりました。そっちに行きます」
悠斗が返事をすると同時に、俺のお腹も返事をするようにグゥーーっと鳴る。先ほどからいい匂いが漂っているせいだ。
「ふふっ、瀬菜のお腹も限界みたいだね」
「へへ……お腹減った」
俺も立ち上がり短いスカートを捲れていないか確認すると、悠斗が手を差し伸べてくる。
「うん。やっぱり姫乃ちゃんは最高に可愛い♡」
「そう言われても……凄い複雑なんだけど……」
リビングに行くと、なんとも不思議な光景だ。ハロウインのカボチャのランタンや蜘蛛の巣の飾りがされた部屋は、おとぎ話のような装飾でとても可愛らしい。
祐一さんはドラキュラ、佐伯さんはフランケンシュタイン、村上はゲームキャラなのかツンツン頭に大きな剣を担いでいる。多澤は真っ赤な布を頭に巻いてロングヘアーに真っ赤なマントを付けている。悠斗は以前同様王子スタイルだ。
ハロウィンの意味は理解していつもりだが、ハチャメチャな仮装に思わずみんなで笑ってしまう。
朝から佐伯さんが用意してくれた美味しい手料理を、モリモリと食べ満たされていく。折角綺麗に塗ってくれたルージュは取れてしまい、ほんのりと残っただけだ。
「真っ赤もいいけど、そのままでも色気があっていいね♡」
「口紅って食べちゃうじゃん。だからやめてって言ったのに」
俺達のやり取りを祐一さんがジッと涙目で見つめている。ドラキュラだけど少年のようで怖いというよりも小さな悪魔みたいだ。
「これが文化祭のときの衣装なんだね♪ 瀬菜君可愛い! テンション上がっちゃう! 血をちょうだい♪」
「祐一さん、そこはお菓子でしょ! 俺の血飲んでもなんの効果もないよ?」
「いやいや、瀬菜君の若いエキスを!」
「それ以上若返ってどうするんですか?」
「そうだぞ祐一。お前はそれでなくても童顔なんだ、甘く見られる。大人しくケーキでも食べていろ」
口を揃えて子供っぽいと言われた祐一さんは、口を尖らせバンバンと机を叩いた。
「むむーー酷い! 佐伯! お酒が足りないぞ!」
「へいへい、スパークリングでいいか?」
そう言いながらキッチンへ向かう佐伯さんに、多澤がいけないことを言い出す。
「今日は特別だし、ちょっとだけ一緒にお酒ダメです?」
「俺も飲みたい~♪」
「「ダメです! 未成年‼︎」」
多澤に便乗し村上もおねだりするが、祐一さんと佐伯さんは声を揃えて駄目出しをしている。佐伯さんは冷蔵庫に行くと、スパークリングワインと、ノンアルコールのシャンパンを手にテーブルに戻り、細身のワイングラスに注いでくれた。細かい泡がシュワシュワと立ち上がり、特別感がみんなを興奮させる。
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