王子×悪戯戯曲

そら汰★

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第5幕 噂の姫乃ちゃん

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「君達の急行って、ずいぶん時間が掛かるんだね~♪ 亀より遅いんじゃない?」
「僕達ウサギなので亀にも抜かれちゃうんですよ」

 嫌味合戦とでもいうような言葉の掛け合いに、肩を震わせクスクス笑っている咲先輩に、環樹先輩は驚きに目を丸めている。それから悠斗に視線を戻すとニヤリと笑う。

「もう咲ちゃんと仲良しになったの? 人を惹きつける魔力が君にはあるのかな? やっぱり凄いね~王子ってば♪ タラシにもほどがあるでしょ」
「いえ、湯月先輩はあなたに対してずいぶんストレスがおありのようで、解消して差し上げただけですよ。それより……清河環樹生徒会長は僕達をあんなふざけた放送で呼び出して、いかがされましたか? ご用命の通り姫君を連れて参りましたが?」
「ヤダなぁ~♪ そんなにツンケンしないでよ~♪ まぁ立ち話もなんだし、みんな座ってよ」


 応接セットの豪華なソファーに腰掛け、絨毯と同じようにフワフワなソファーに緊張してしまう。入ったことのない生徒会室は設備も整っており、本当に同じ校内なのかとキョロキョロしてしまう。
 フワリといい香りが立ち込めると、咲先輩がお茶を目の前に置いてくれる。お客様対応に慣れていない俺は、まるで借りてきた猫のようだ。

「姫乃ちゃん、体調は問題ないかな? それに心のほうもね。もし、精神的に辛かったりしたら学校側でサポートするつもりだよ?」
「──いえ……特に問題ありません。今回のこと……そりゃ辛くないって言ったら嘘になるかもしれないけど。でも俺はひとりじゃないから。こんなにいっぱい仲間が居るから大丈夫です」

 三人の顔を見渡し、環樹先輩に本心を伝える。

「そう……いい仲間に巡り会えたんだね。でも、それでもなにかあれば協力は惜しまないよ。だからそのときは遠慮しないように……」

 環樹先輩は驚くほど紳士的にそう言う。

「──はい。ありがとうございます。それよりも……」

 俺は自分のことよりも、気になっていたこと聞こうとしていた。環樹先輩は俺の気持ちを汲み取ったのか、俺が全てを言う前に口を開いた。

「あの二人のことだよね? あのあと事情を洗いざらい吐いてもらったよ。君のおかげであの二人組を捕まえることができた。気になっていると思うから結論から先に話すと、犯罪者をうちに置いておく訳には行かないし、彼等には早々に退学届けを出してもらった」

 予想外な結論に驚く俺の代わりに多澤が口を挟む。

「凄い早い結論だな。それは先輩が理事長の孫だからですか?」
「うーん。まぁ……それはそれかな~。だって強姦罪だよ? 本来退学で済む話ではないよね。姫乃ちゃんは訴えて彼等を警察に引き渡すことだってできる。どうする?」

 環樹先輩はそう言うと、俺に最終処分の確認をしてきた。

「俺は……退学になったのならそれでいい。警察に届けることになったら、一から十まで話さなきゃならないし、男として……その、ちょっと恥かしいというか……」

 俺の言葉に環樹先輩は頷き、分かったと短く答えた。
 それぞれがお茶を口にし喉を潤わせると、悠斗が見計ったように言う。

「それで、清河先輩はどうして瀬菜に接触を? あまりにもタイミングが良過ぎませんか?」
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