王子×悪戯戯曲

そら汰★

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第5幕 噂の姫乃ちゃん

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「悠斗が俺を守ってくれたんだよ。大切にするって言ったのに、汚しちゃってごめんな」

 悠斗を抱きしめ背中をポンポンと宥めると、スーッと力が抜けて行くのが感じられた。深いため息を吐きながら、怒りも空気と共に溶けていく。フワリと優しい手のひらが俺の背中を包み込む。

「正直……環樹先輩があの場に居てくれてホッとした。怪しい人かと思ったけど、あの人が居なかったらきっと……瀬菜を助けたのが自分じゃないのは悔しいけどね。それに、全然手の届かないところで事件が起きていたと思うと結構ぞっとする。先輩は、もしかしたら……」

 悠斗はそこで言葉を切り、なにか思うことがあるのか考え込んでいた。どうしたんだと問えば、いやなんでもないと、ギュッと俺を抱きしめる。

「次は悠斗の言いつけ守るようにする。俺がいうこと聞かなかったら、また叱ってくれるか?」
「うん、ちゃんと聞いてくれたらいいけどな。はい、お説教は終わり」
「へへっ、お説教だったのかよ。ずいぶん甘いのな」
「俺にしては微糖な感じだけど? 料理が冷めちゃう。食べよ?」

 ちゅっとキスをされなにから食べる? と聞かれる。スープと言えば、あーんをしてくるので悠斗の手からスプーンを奪い取り自分で飲む。

「もう。恥ずかしがり屋さんなんだから。言いつけ守るって約束したばっかりなのに」
「バーカ! これは言いつけとかじゃないだろ!」

 雛鳥バージョンは避けたが、腰が動かない俺に変わり手元にせっせと食事を運ぶ悠斗が、忠犬ハチ公みたいで可愛くて堪らなかった。



 食べ終わるとまたベッドに戻り体力回復に努める。とはいえゴロゴロしているだけだ。
 しばらくするとインターフォンが鳴り悠斗が対応してくれる。訪問はきっと心配しているであろう祐一さんだ。断片的に記憶に残る自分の失態に合わせる顔がないと思いつつ、この安心できるホテルを提供してくれたお礼をしなければと思っていたところだ。

「瀬菜君おはよう! 具合はどう? 違和感とかはない?」
「祐一さんおはようございます。腰が痛いけど大丈夫です。折角文化祭来てくれたのに、迷惑かけてごめんなさい。あと、ホテルもありがとうございます」
「ううん。顔色も悪くないみたいだね。良かった! 本当はね病院連れて行きたかったけど、悠斗君が自分が観るって聞かなくて。文化祭で瀬菜君の可愛い姿見れなかったのは残念だけど。そうそう、これ帰りの服用意したから着てね! メイド服は今クリーニング中だからあとで持って来させるよ」

 帰りの服まで用意してくれた祐一さんにもう一度お礼を言うと、悠斗がまさかの発言をする。

「祐一さん残念そうだし……メイド姿はまた今度お披露目しますよ。買い取ってるので」
「はぁっ⁉︎ 買い取った⁇ いつどこで、なんで⁉︎」
「一日目に文化祭瀬菜と回ったあと瀬菜が着替えてる間に、三浦さんと交渉したんだ。三浦さんも瀬菜っちにならって快く譲ってくれたよ?」
「嘘だろ……買い取ってどうするんだよ!」
「だって、可愛いかったし。見られなかった祐一さんと佐伯さんにも、見せることできるね♡」
「やったー! そのときは悠斗君も王子の格好してくれるんだよね! なら僕の家で今度仮装パーティーやろうよ! そうだな、時期的に十月のハロウィン辺りが丁度いいなぁー♪ ねっ、瀬菜君!」
「ははは……そうですね……」
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