王子×悪戯戯曲

そら汰★

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第5幕 噂の姫乃ちゃん

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 顔を見合わせ笑い出す二人。
 苛立ちにギリっと唇を噛み締めながら睨めば、ケラケラと笑う姿から一変し、瞳をギラつかせながら淡々と呟き出す。

「今から君を俺ら二人で可愛がろうかと思っているんだよね」
「そうそう。うんと良くしてあげるからさ。姫乃ちゃんも楽しもうよ」

 ねっとりとした声で、吐息交じりにそう言われる。

「──どういうこと……なにをだよ。退いてよ……」
「分からない? ウブ過ぎー。益々惚れちゃうんだけど。つまりさ、君を犯すって言っているんだよ」
「二人分だから、姫乃ちゃんにはちょっとキツイかもしれないけど、狂っちゃうぐらいに犯しまくってやるからさ。自分からもっと~って、足開いちゃうかもね」

 言われたことを理解すると、サーっと血の気が引いていく。

 こいつらなにを言ってるんだ……犯す?

 それはレイプのことだ。犯罪を犯罪と思わず、面白そうに言う男達の言葉が怖くて堪らない。恐怖で一気に覚醒し現実を突きつけられる。
 だが自分は男だ。彼らと同じ同性だ。もしかすると姫乃という女性に対して、興奮しているに過ぎないかもしれない。焦る気持ちに蓋をし、俺という事実を口にする。

「ちょっと待てよ! 俺、男だぞ! お前らが思ってるような女の子じゃない! だからッ──」

 だから勘違いしているなら……そう言おうとするが、男達は俺の言葉を遮り笑い出す。

「あははは‼︎ 女の子じゃないかぁ~」
「そうかそうか。ならみんなのところに戻っていいよ……」

 やはり勘違いだったようだ。
 ホッと吐息を漏らし安心するのもつかの間、押さえられた腕と脚は余計に押さえ付けられてしまう。

「クククッ、なぁ~んて言うと思ってた?」
「女じゃなくても別に問題ないよ。姫乃ちゃん。ああ、違うか……柳瀬菜って呼んだほうがいいかな?」

 呆然としてしまう。
 震える唇でやっとこ声を出す。

「──なんで……知っているんだ……」
「なんでって……なぁ? ずっと俺ら君に目付けていたし。やっとこうやって拉致できたんだ、逃さねぇよ。瀬菜くん」
「そうそう、ほらこれ見たことある? この姿見た瞬間から、色々計画していたんだけど中々近付けなくてさ。文化祭ならひとりになることもあるし、ずっと好機を狙っていたんだよ」

 環樹先輩ではなかった……?
 機会を窺い裏で動いていたこいつらは、用意周到に模索していたってこと?
 もしかして悠斗はなにかを感じ取って、ひとりにならないようにしてくれていた?

 スマホに映る自分の画像。それは以前、悠斗に見せられ、つい先ほど環樹先輩に見せられたものと同じだった。ただ違うのは、ほかにも何枚も俺の画像がそのスマホに収められているということ。そして拡散させた犯人が彼らだということ。
 悠斗の俺への不安という想いが、ひとりになるなという言葉が、今さら重くのし掛かってくる。

 自覚しろ……男でもそういう目で見る人は居るから……。
 遠い場所で悠斗が囁く声がする。

「文化祭で外は大賑わい。みんなこんなところには来ないし、諦めて俺らと楽しもうよ」
「折角可愛く女装してるし、女とやってる気分で犯そうぜ!」
「や、やめ──ッ! いやだ……お願い──イヤッ‼」

 足をバタつかせ逃げようとするが、押さえ付けられ身動きが取れない。腕をバタつかせると、拘束が緩み頭上に居る男の頬を殴りつけてしまう。

「う──ッ! ……痛えなぁ~ッ‼︎」
「ちゃんと押さえてないからだろ? お前血が出てんじゃん」
「あぁ……これだ。痛い訳だぜ」

 殴られると思ったが、頭上の男は俺からブレスレットを取り外した。

「なんだこの変なアクセ。こんな危ないもの着けてんなよ」
「──ッ汚い手で触るな‼︎」
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